日記:ちいさな夜の旅

今日は電話が3回あった。うち2つは事務的なものだったが、あとひとつは友人から前もってその時間に連絡すると言われていた電話だった。仕事を終えた帰り道、公園で電話に出る。しかし近くで工事があって声が聞こえづらかったようなので、どこへともなく歩き出した。

さてどこへ向かったものかと考えるうちに、このまま一駅ぶん歩いてしまおうかと思い立つ。そうして私は夜の道を話しながら歩いていく。電話は途中で終わり、そこからはひとりになった。

歩くのは好きなので、前にも一度だけ、同じように隣駅まで歩いたことがある。そのときは昼だったので、夜はまた違った趣きがあった。静かだ。車通りも少ない。その静寂は、私に万能感のある孤独をもたらすようだった。

駅が近づくと人も灯りも増えて、現実へと回帰する。駅と駅との間の、ほんの少しの闇の中を、私は旅でもしたかのような小さな高揚に包まれて、しかしそのほかに得たものは何もなく、一駅ぶんだけ短い電車に乗るのだった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?