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生き物苦手板に居場所を求めた頃に

昔から、人以外の動物を可愛いと思うことができなかった。動物が「かわいい」とはどんな外見的特徴を指すのか、定量的に示せないのに「かわいいな〜」などと言うのは、なんていうか「かわいさ」に対して無責任だと思った。自分の気持ちには秩序があるべきで、気持ちに基づいて使う言葉には責任を持ちたいから。

明確にかわいいものといえば、二次元美少女だ。目が大きくて少し離れていて、鼻と口が小さい。顎も小さい。このように大雑把ではあるが、私がかわいいと思う二次元美少女の特徴は言葉にすることができる。ほぼほぼベビースキーマ説の通りだ。昔と今では好みが多少変わったが、概ね一貫してこんな感じ。だから、目が小さくて寄っていて口と鼻がでっかい生き物は可愛くないと感じるはずだ。なんとなく想像してみたら不細工な気がするだろう。
「かわいい」の枠に入るための条件が、可愛い大学入学試験の足切りラインが、採点項目が、明確に言語化可能な共通認識として存在するはずだと、私は思っていたのだ。

しかし一方で動物好きな人は、外見的特徴がいかようにも関わらず動物全般をかわいいと言うので、理解に苦しんだ。
犬と猫では見た目がかなり違う。その中でも足が長いの短いの、耳がでかいの小さいの、面長なの鼻潰れなの、毛が長いの短いの、いろんなのがいる。ヒトみたいにブス犬やブス猫って言われる種類がいてもおかしくなさそうだし、ブスの個体は愛玩動物として大切にしてもらえないのではないか。それが、そんなことないらしい。犬好きは基本的に全部の犬がかわいくて、その中でもこの犬種が好きとか。猫好きもそう。特に猫好きは常軌を逸して猫をかわいがる傾向にある気がする。疲れたら猫の画像スレを開いて、癒されて寝るみたいな。
人間だったらこんな愛され方しないじゃないか。
だから、猫ならなんでもかわいがる猫好きの気が知れない。犬も猫も鳥もかわいいなんて言われたらお手上げ。
もしかしたら多元宇宙のどこかに我々の上位存在がいて、人間の画像スレっていうのに貼られる、くつろぐおっさん人間の画像や泣き叫ぶ赤ちゃん人間の画像、睨み合うメス人間の動画にかわいいかわいいって騒いでるかもしれないけど、無いじゃん、そんなの。
だって殆どのおっさんは醜くて、えなこの方が可愛いじゃん。なぜか石原さとみすら「好みが分かれる」とか偉そうに言うやつがいて、どうして猫の世界にはその厳しいジャッジが存在しないのですか?
私は言語化できないものが嫌いですから、マジで悩みました。なにもわからない。人を殺してはいけないくらいの常識、倫理の中に「犬や猫はかわいいもの」とあるのに、自分だけ理解できなくて、自分だけがおかしいのかもしれないと。すごく、こわかったのだ。

悩みに悩んだ末に「たぶん私は生き物が苦手なんだな」と思い、2chの生き物苦手板へ向かった。同胞がいるかもしれない期待を胸に。

彼らの書き込みを見たら「私はぜんぜん生き物苦手じゃないな」と思った。

彼らは生き物が嫌いで憎くて、生活圏内から出て行くか死んでほしいのだ。
隣の家がペット禁止物件でペットを飼っていて臭いし鳴き声うるさいしタヒね。犬や猫みてるとイライラする。頭おかしい飼い主もまとめてヌッコロしたい、みたいな。同情はするけどそりゃ言い過ぎだ。こいつらの方がこわかったのだ。
ちなみにスペイン語で猫を指す“gato”が生き物苦手界隈における最恐のスラングで、gatoスレなどと調べるとそれを虐待する様子が出てくるのでやめましょう。虐待していいのはちい◯わだけです。

インターネットの水底で見てしまった「本物」のあまりの強さに、私はドン引きしすぎて目が覚めた。
猫って、かわいいやん。普通に。
丸っこくて、ニャーとかいうて。
犬さんも鳥さんもカエルさんもゾウさんもカバさんも、がんばって生きててめっちゃ可愛いやん。
あまり言語化にこだわりすぎたり、逆張りに精を出したり、考えるのを頑張りすぎる必要は無いんやなって、ふっと頭の力が抜けた。煮詰まったキチガイになる前に、普通に動物さんたちを愛でる気持ちを育ててみようと急に思った。かの板には害獣被害から動物嫌悪に至った人々からちゃんとした犯罪者もいるみたいだったけど、私に気付きをくれた点については感謝している。

生まれてから25年くらいは生き物全般がマジ理解できなかったので、猫ばっかりリツイートするやつのフォローは返してないし、友達が飼ってるヘビとかウサギに対してもただただ謎でしかなかったので、申し訳ないけど適当に話を合わせて可愛がる感じを出していた。むしろ今は非常に愛をもっているので、飼育なんてして自分の無知やうっかりでペットの命を奪ってしまったらと考えると恐ろしくてとても飼えない。人んちの子に会うのも、慣れない人間がストレスになって早死にしかねないので控えたい。保護猫カフェに行くのは、その子たちの暮らしを支えることにも繋がるので正直、好きである。たまに家に出るクモやゴキブリも好きなので「お友達」と呼んでいる。人間の友達にそれを言ったらすごく悲しそうな顔をして「どうしてそんなこと言うの?」と言われたが、あいつはクモさんやゴキブリさんに失礼じゃないか?
ここまでになったのは生き物観察系のYouTuberにハマったせいだと思うので、みなさんも夕飯のお供に見てみてほしい。かなり真面目に生命の尊さを学べる教材で面白いです。

何の話をしていたんだ。猫とかがかわいい理由については一生考えなくてよろしい、ということでした。

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