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LiSAが"ヒロイン"になった日

LiSAのアジアツアー『LiVE is Smile Always~ASiA TOUR 2018~[eN]』の日本公演(東京・大阪)が終わりました。ベストアルバム『LiSA BEST -Day-』と『LiSA BEST -Way-』を引っ提げてのライブ。
私が行ったのは6月14,15日の武道館2日。LiSAのワンマンに初めて行ったのは去年の6月さいたまスーパーアリーナ。この2つは1年の間しかなかったもののその意味合い・観せたい(魅せたい)ものは大きく異なっていた。

初めて行ったワンマン『LiVE is Smile Always~LiTTLE DEViL PARADE~』のさいたまスーパーアリーナ。それは衝撃だった。
それまでフェスや対バンでは何度も観たはずだった。しかしそれはどれもフェス向けな、ロックヒロインのロックの部分が強調された側面でしかなかったのだ。このライブが「LiTTLE DEViL PARADE」というコンセプチャルなアルバムを提げてのツアーであったことを差し引いても、LiSAはその身ひとつで一体となった空間を創り上げており、始まりから終演まで会場中の空気をたった1人で掌握し続けていた。彼女はライブを「デート」と称するが、この時の感覚は会場の3万人を対象にした1対1の密室デートと言えただろう。まさにアルバム最後の曲「そしてパレードは続く」でキミキミキミ…と連呼しているように。

加えて、LiSAのライブで特徴的なのがアニメ主題歌の存在感だった。彼女はデビューからずっと多くのアニメ主題歌を歌っていて、その作品もFate、ソードアートオンライン、魔法科高校の劣等生etc...と作品愛が重篤化してしまう(私見)作品が多く、作品の世界観・ストーリーとも強く密接している。例えば、魔法科高校の劣等生OPの「Rising Hope」の「この願い例え魔法が無くたって叶えなきゃ 誓った」のエモみは作品を観ていくことで重層的に紡がれている。

毎週毎週作品と連れ添った楽曲は、その曲自体が描くストーリーだけでなく、作品と視聴者の作品愛をも巻き込みながら絡みあった帯となる。彼女がその曲を歌えば、観客の愛の記憶をも呼び起こし、彼女が作る世界とクロッシングしていく。単に「作品を思い出して泣く」だけではない、言語を超えた愛の重奏の感覚が脳の奥に引き起こされるのだ。

▲この時のライブは単品で映像商品になっておらず、ベストアルバムの初回盤で観ることができる


この感覚に衝撃を受け、僕はファンクラブに入りその後も各ライブに足を運ぶようになった。

そして今年6月、武道館。アジアツアーのスタート。
アジアツアーを銘打ち、最初に日本公演を行うことからも今回のツアーは外に向けたもの、彼女の魅力をより多くの人に届けようとしていることがわかる。そして、ライブ自体の雰囲気も変わっていた。
1曲目に「Rising Hope」を打ち付け、その後も序盤はアニメ主題歌を次々に放っているのに、作品世界の呼び起こしよりも強くLiSA彼女自身のパワーが観客を貫いていく。しかも作品世界の重奏をかき消すのでなく、その世界をも包括して「LiSAの世界」として魅力を発しているのだ。昨年はまだ可分であったLiSAの世界と作品世界の溶け合い。作品によって彼女が作られてきたように、彼女もまた作品を作りあげてきた。アニソンを歌うシンガーではなく、まさにヒロインとなったのである。

それぐらい、今回のツアー[eN]はLiSAの全てを詰め込み「これがLiSAだ」と世界に発信するライブになっていた。これは彼女とレーベル全体の覚悟とも言える。メモリアルなイベントでありつつも特段派手な演出や凝ったギミックは無い。ただまっすぐに魅力を世界へ伝えるツアー。日本公演はその出立式であった。


自身の歴史を包括したベストアルバムを発売し、魅力と世界を全てを詰め込んだライブが完成したLiSA。確信を持って「観るべきは今」と断言できる。秋にホールツアーを控えていて、ファンクラブでも結構な争奪戦になっているがチャンスがあれば是非。
http://eplus.jp/lisa/

夏フェスでもROCK IN JAPAN(8月4日)、TREASURE05X@蒲郡(9月8日)、氣志團万博(9月16日)に出演が決まっているので、ぜひその目でその身で味わって欲しい。

アニメを知らなくてもいい。ライブに行ったことがなくてもいい。彼女の力はそんな壁軽く撃ち抜いてくれるから。


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