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プラモデルのワンダーって何だろう

 先月誕生した、モケイの楽しさを伝えるメディア「nippper」。

 ネットに転がるプラモデルについてのテキストが「自分がどう作ったかの完成品」と「可動や付属するオプションを紹介するレビュー」だらけの中で、何故プラモデルは楽しいのか、プラモデルに触れていると何が楽しいのかを教えてくれるメディアだと思って楽しく観て・読んでおります。

 立ち上げた人の1人であるからぱたさんがよく使う言葉に「ワンダー」というものがあります。プラモデルのワンダー。プラモデルに触れて何にワンダーを感じるか。それを様々な視点、超高頻度で発信するのが「nippper」。テクニックではなくワンダーを紹介するからこそ、プラモデルを趣味としていない人にも伝わるものだと思います。
(からぱたさんを初めて知った(一方的認知)のはDJとしてで、好きなプレイをするなーとフォローしていたら、模型誌→模型メーカーという自分の昔からの趣味の方にガン刺さるお仕事をされてる方でたまげました)


 今回は自分なりに、この「プラモデルのワンダー」が自分にとって何だろう、と考えてみました。

 僕にとってのプラモデルのワンダー、つまり「プラモデルを組むことでしか味わえない感覚と楽しさ」には組み味のワンダー形状認識のワンダーの2つがあると考えます。

 組み味のワンダーとは、プラモデルを組んだり接着したりする時に、自分の手で今までそこになかった形状が1パーツずつ組み合わさり出現することに感じる楽しさと驚きだと思います。薄く複雑な形と起伏のある板を組み合わせると全く別のソリッドな形状へ変化するグルーヴ。もしくは、複雑な形状同士がピタっと隙間なく組み合うカタルシス。プラモデルを組み立てる、まさにその瞬間に味わえるワンダーです。

 もう1つあるな、と思ったのが形状認識のワンダー。
 プラモデルは、飛行機であれば飛行機の、戦車であれば戦車の元のモチーフをパーツ単位に分割しているもの。1つ1つのパーツは、モチーフの一部分を再現するための形状を取っています。そのパーツを手に持ち、向きを変え、他のパーツと組み合わせる。そして出来上がった時、その完成品の形状は細部に到るまで指が覚えている。その飛行機の写真を何枚も眺めるよりもずっと細部まで。すると元のモチーフを見た際には形状が細部まで認識できていることに気づく。作ったことのある車が街を走っていた時、作ったことのある戦闘機がトム・クルーズの映画に出てきた時。「あ、この形知ってる」「この裏はこうなっているんだよな」と頭に詳細なイメージが浮かぶ。自分で組むことにより、ディテールが指からインプットされているのです。この形状のインプットと、それを別の場面で思い出した時の感覚こそが、プラモデルを組むことにおける形状認識のワンダーだと思うのです。

 これはモチーフが実在しないキャラクターモデルであっても、出てくるアニメのように、そのモチーフ自体へのイメージさえあれば同様に感じられるワンダーでしょう。知らないキャラクターであれば箱絵だけでもいい。2次元でしか得られなかった情報が、3次元形状で物理的にインプットされる。そこに発見がある限り、ワンダーは感じられると思うのです。

 形状認識のワンダーは組み味のワンダーと異なり、そのピークは組む瞬間ではありません。組んだ時から始まり、その後もずっと続いて形状を思い出した時にピークが発生する類のもの。あと引くワンダー。いろんなプラモデルを組めば組むほどこのワンダーは積み上がり、さらに差を楽しむ相乗効果も増えていく。

 この2つのワンダーはきっと、プラモデルだけでしか、プラモデルを楽しんで作り続けることでしか感じられないもの。
 ここまで読んでくれた方にはぜひ、プラモデル売り場に行ってください。そこで気になる形の、気になる箱の、気になるモチーフのプラモデルがあれば作ってみて欲しいのです。先述のnippperは毎日3本以上のペースで記事更新を続けていますが、その記事はどれも「読んだ人が作ってみたくなる・使ってみたくなる」ことを念頭に書かれているように見えます。映画を観たらそこに出てくるもののプラモデルが作りたくなるような世界、読む・買う・試すのサイクルを誘発しようとする意図が感じられます。たぶんみんな、ただ作って欲しいのです。
 プラモデルの中には多少は根気が必要なものもありますが、そこは広く流通している商品。作ること自体が難しいプラモデルはほとんどないので。

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