換気における「小児パターン」とは何か?

「小児は小さな大人ではない」という言葉は小児科医なら誰しも知っているであろう重要な言葉である.
成人で行われた研究結果が小児ではあてはまらない, ということは少なくなく, そのため「成人のみ」もしくは「小児のみ」を対象と研究が行われていることも多い.

成人と小児で異なる点は数多くあるが, その中でも「側臥位での左右の換気パターンが異なる」というのは代表例の1つである.

成人におけるパターンの特徴については, 側臥位となった時には下側の肺で優位に換気を行っていることがよく知られている(*1)
一方で, 以前から小児は成人とは逆で側臥位となった時には上側の肺で優位に換気を行なっていることを示唆する結果が報告されており(Pediatric pattern), 10代の終わり頃に成人パターンに移行すると考えられている(*2)

この「小児パターン」から, 小児においては側臥位で患側を下側にした方が換気が有利なのではと推定されていた.

ところが生後3-6か月の小児を対象としたPhamらの研究では, 前述の成人とパターンと似たパターンを示す結果が報告されている(*3).
他の研究結果などから, 生後6か月頃までは小児パターンには当てはまらないだろうと考えられている. 

また生後6か月から9歳までの小児を対象とした Lupton-Smithらの研究ではより複雑ではあることが示唆された(*4).
結果としては上側の肺が優位な児もいれば下側の肺が優位な児もいたほか, 約半数は左右をそれぞれ下にした側臥位で異なる特徴を示していた.
ただしこの研究でも全体的には上側の肺で優位に換気されていることが多い結果ではあった.

従って小児における側臥位では
・上側の肺で優位に換気されるパターンが多いが, 異なる場合もある
・生後6か月未満では小児パターンは当てはまらないかもしれない
と考えられる.

小児は小さな大人ではない, ということと同時に小児といっても一律には考えられず年齢や個々人によって違うのだということを改めて示した具体例の1つであろう.



<参考文献>
*1  Riedel T, et al. The value of electrical impedance tomography in assessing the effect of body position and positive airway pressures on regional lung ventilation in spontaneously breathing subject. Intensive Care Med 2005; 31(11): 1522-1528.
*2 Davies H, Helms P, Gordon I. Effect of posture on regional ventilation in children. Pediatr Pulmonol 1992; 12(4): 227–232.
*3  Pham T, et al. Regional Ventilation Distribution in the First 6 Months of Life. Eur Respir J 2011; 37(4); 919-924. 
*4  Lupton-Smith AR, et al. Challenging a Paradigm: Positional Changes in Ventilation Distribution Are Highly Variable in Healthy Infants and Children. Pediatr Pulmonol 2014; 49(8): 764-771.

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