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2020年(令和2年)10月1日からのロタウイルスワクチンの定期接種化で気を付けることなど

2020年(令和2年)10月1日にロタウイルスワクチンは定期接種となりました.

これまでは任意接種でしたがそれでも多くの方に接種が行われていました. ただ定期接種となると接種される方がさらに増えることが予想されます.
ロタウイルスワクチンにおいてはいくつか注意したい点や, 今回の定期接種化に伴うルール変更などもありいろいろとミスが生じる可能性があると思われます.

本記事では主に

・よくある質問である「2種類のワクチンはどっちがいいの?」ということについて
・ロタウイルスワクチン接種に関して注意すべきこと

について簡単に説明します.

なおロタウイルスワクチンの一般的なことに関しては別記事にしています.



【注意!】2020年7月31日以前に生まれた児は定期接種とならない

2020年(令和2年)10月1日からロタウイルスワクチンが定期接種となります.
ただ注意したいのは, この定期接種の対象となるのは2020年(令和2年)8月1日以降に生まれた児です.
つまり10月1日になっても7月31日以前に生まれた児に関しては任意接種のままです.

特に7月生まれの児がいる場合, 10月1日になるのを待った方が得, と勘違いされる可能性があるのでそこは注意したいところですね.


2種類のワクチンはどっちがいいの?

結論から述べればどちらのワクチンを選んでもほぼ同じと考えてよいです.

ロタウイルスワクチンには
・ロタリックス®
・ロタテック®

の2種類があります.
この2種類について効果や安全性については明らかな違いはないとされています(*1, *2, *3).

ただしこの両者は接種スケジュールにおいては違いがあります.
標準的にはロタリックスは4週おきに2回接種し, ロタテックは4週おきに3回接種することになります.
ただしどちらのスケジュールが良いということはありません.

また, あとでも述べますが, 原則として1回目と2回目, (2回目と3回目)はすべて同じ種類のロタウイルスワクチンを接種することになっています.
こういった理由から, 里帰りや転居により1回目と2回目(もしくは3回目)の接種場所が違う場合には, どちらかの種類を選んだ方がよいかもしれません.
なぜなら里帰り先・転居先では医療機関が少ない場合, ロタリックスかロタテックのいずれかしか接種できない場合があり, 1回目に接種した種類のワクチンが2回目できるところがない, といったケースが生じうるからです.
そのいったケースが考えられる場合には里帰り先・転居先で接種できる方の種類を1回目から接種する方がよいかもしれません.


初回接種までは生後14週6日までに

標準的には生後2か月になったら接種を行います. ただいろいろな都合ですぐには接種が行われない場合も考えられます.
そこで注意してもらいたいのは 「初回接種までは生後14週6日までに行うように推奨されている」ということです.
この点は日本小児科学会も強調しています(*4).

これは安全上の理由で生後15週以降に初回接種を行うと腸重積を起こすリスクが高まることが懸念されているためです.
臨床試験の時点でも生後14週6日までに初回接種を行うようにしていたため, 生後15週以降に接種した場合はデータがないというのが実際のところです.

なお定期接種となった2020年10月1日以降, 初回接種が生後15週をすぎても定期接種として認められる予定ですが, 無料のままだからと安心せずに生後15週以降に初回接種とならないように注意しましょう.

なお「生後14週6日」というのは普段生活している上ではとてもわかりづらいですが, だいたい生後3か月ちょっとです.
よって接種を行う医療機関は生後3か月になっていたら慎重に日数を数えるべきでしょうし, 接種される方はミスが起こりにくくする上でも, 可能な限り生後3か月になるまでに初回接種を行うようにするのがおすすめです.


複数回接種するロタウイルスワクチンはすべて同じ種類で

前述しましたが, 原則として1回目と2回目, (2回目と3回目)はすべて同じ種類のロタウイルスワクチンを接種することになっています.

具体的には以下のような感じです

○: ロタリックス → ロタリックス
○: ロタテック → ロタテック → ロタテック

×: ロタリックス → ロタテック
×: ロタテック → ロタリックス

転居や里帰りなどで, 1回目と2回目以降の接種する場所(医療機関)が異なる場合に注意が必要です.

また2回目以降の接種を行う際に, 自治体に同じ種類が接種できる医療機関がない場合もありえます. そういった場合には自治体にご相談いただければと思います.


吐き出した場合の再接種は勧められていない

少量でも飲み込んでいれば一定の効果があり, またワクチンの複数回接種で十分な効果が期待できることから再接種はしないことが勧められています.
現状ではロタリックス®の直後の吐き戻しでは再接種が認められています.
任意接種で実施されていた(9月30日まで)は, 吐き戻した後の再接種は無料でした.

しかし定期接種となったあとでも再接種は可能ではありますが, 扱いは「任意接種(自費)」となります. この点は任意接種の時とは異なります.
この点は厚生労働省のページでも言及されています(*5).
ここのルールが変更されたことを知らずに勘違いしてトラブルになる可能性はあるため注意は必要でしょう.


<参考文献>
*1 Araki K, Hara M, Tsugawa T, et al. Effectiveness of monovalent and pentavalent rotavirus vaccines in Japanese children. Vaccine 2018; 36(34): 5187-5193.
*2 Burnett E, Parashar UD, Tate JE. Real-world effectiveness of rotavirus vaccines, 2006-19: a literature review and meta-analysis. Lancet Glob Health 2020; 8(9): e1195-e1202.
*3 Lu HL, Ding Y, Goyal H, Xu HG. Association Between Rotavirus Vaccination and Risk of Intussusception Among Neonates and Infants: A Systematic Review and Meta-analysis. JAMA Netw Open 2019; 2(10): e1912458.
*4 日本小児科学会 予防接種・感染症対策委員会. ロタウイルスワクチンの初回接種時期について (第2版).
*5 ロタウイルスワクチンに関するQ&A. 厚生労働省 [https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/index_00001.html](2020年9月4日閲覧)

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