熱性けいれんでの白血球増加はけいれんによるものか, それとも熱源によるものか?


熱性けいれん, 特に単純型では血液検査が行われることは少なくなった.
これは様々な研究から重症感染症などが疑われない症例においては, 血液検査の意義は乏しいことがわかってきているためである.
2015年に出た熱性けいれん診療ガイドラインでも, 血液検査はルーティーンでは行わないことが推奨されている(*1).

ただ, 例えば入院となった場合などで熱性けいれんでも血液検査が行われることはある.
熱性けいれんを起こした症例において血液検査を行うと, 時に白血球数増加がみられることがある.
白血球数は感染症で上昇することはよく知られている一方, ストレスなど様々な要因でも上昇することが知られている.
熱性けいれんでは「けいれんのストレスで白血球が上昇した」と説明されることがある. 一方で熱性けいれんの多くは感染症に伴って引き起こされるため, 熱源となっている感染症が原因で白血球数が増加しているかもしれない.

実際には熱性けいれんでの白血球数増加はどちらの影響を受けているのだろうか.
またけいれんによるストレスで上昇している場合, けいれん時間が長いほど白血球数増加の程度は強くなるのだろうか.

こういった点に着目した研究はあまり多くはない.

熱性けいれんと白血球数増加について分析したvan Stuijvenbergらは白血球数増加(WBC≧15000/μL)とけいれん時間の間に関連性はみられなかったと報告している(*2).
またMohebbiらは熱性けいれんの特徴と白血球数との間で関連性はみられなかったと報告している(*3). またこの研究では, けいれん前の発熱期間と白血球数との間では関連性があったとしている.
これらの報告から熱性けいれんでみられる白血球数増加は, けいれんによるストレスよりもけいれんを引き起こした発熱の原因による影響が強いかもしれない.

ちなみに熱性けいれんとは条件が異なるが, 無熱性けいれんと白血球数についても研究が行われている.
細菌感染症のない無熱性けいれんの小児を対象としたAydoganらの研究では, 全体の8%で白血球数増加(年齢での平均値の2SDを超えるもの)がみられ, けいれん重積を起こした児では41.5%で白血球数増加がみられていた(*4).
熱性けいれんにそのまま当てはめることはできないが, 短時間のけいれんの場合には白血球数増加への影響は小さいかもしれない一方で, けいれん重積ではより影響は大きいかもしれない.

2019年のOgawaらの報告では, 生後3-36か月の小児での熱性けいれん症例において, 白血球数増加(≧15000/μL)と高熱(体温≧39℃)がある場合, 潜在性菌血症があるリスクが高まるかもしれないことが示唆されている(*5).

いずれにせよ, 熱性けいれん症例での血液検査で白血球数増加がみられた場合, 安易にけいれんによるストレスと解釈せず, 熱源には注意を払った方がよいだろう

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<参考文献>
*1 日本小児神経学会監修. 熱性けいれん診療ガイドライン2015.
*2 Van Stuijvenberg M, et al. The duration of febrile seizures and peripheral leukocytosis. J Pediatr 1998; 133(4): 557-558.
*3 Mohhebi MR, et al. Peripheral Leukocytosis in Children With Febrile Seizures. J Child Neurol 2004; 19(1): 47-50.
*4 Aydogan, et al. Transient Peripheral Leukocytosis in Children With Afebrile Seizures. J Child Neurol 2007; 22(1): 77-79.
*5 Ogawa E, et al. Febrile Seizures With Leukocytosis as a Predictor for Occult Bacteremia. Pediatr Int 2019; 61(6): 578-582.


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