本気で弁理士試験に挑んで良かったこと

 私、ぬーみんと申します。今年(2020年)の4月に特許事務所に入所したてほやほやのど新人です。そんな私の略歴は、以下の通りです。
2019年9月:特許事務所の内定を取得、弁理士試験の勉強を開始。
2020年4月:特許事務所に入所(明細書作成を担当)。
2020年9月:短答式試験を受験(合格)。
2020年11月:論文式試験を受験(結果待ち)。

 そんな私が知財系 もっと Advent Calendar 2020に選んだテーマは、こちら。

 本気で弁理士試験に挑んで良かったこと

 弁理士試験の勉強は実務に役に立たないとの声を見かけることもあります。単純な私は、受験することが無意味なのかな…と不安に感じ、憂鬱になることもありました。

 そんなことはない。

 合格していないからこそ、私はそう言いたいです。私は、日々の実務の中でも、それ以外でも、本気で弁理士試験に挑んだ「ご利益」を感じています。それを伝えることで、これから受験を考えている人たち、そして、ライバルであり仲間でもある受験生のお役に立てれば幸いです。

 ただし、これはあくまで私個人の経験に基づくものであり、個人的な主観でしかありません。あくまで参考の一つに留めていただければ幸いです。

1.  言葉に対する意識が変わる。

 弁理士試験は、条文等の公的資料への理解を試す試験です。特に論文試験では、言葉の使い方の間違いが、自身の理解の間違いを試験官に伝えることになりかねないです。言葉の使い方の間違いとして、例えば、以下のものが挙げられます。
・出願に係る発明が公知であるとして、新規性違反の拒絶理由に該当する。(正しくは、出願に係る発明が「公知発明と同一」であるとして…)
・特許は、はじめから存在しなかったものとみなす(正しくは、特許「権」は…)。

 これらは、主語と述語の対応関係の間違いや、使う言葉の単位の間違いによるものです。

 明細書作成では、このような言葉に対する意識が役に立ちます。私のチェック者に聞いたところ、被チェック者の最初の修正のほとんどは、まず文章そのものが日本語として成立していないことが問題らしいです。ただ、私は、主語と述語の対応関係を意識して文章を作ったおかげか、そのような修正はあまり受けていません(ゼロではないですが…)。読書感想文に苦戦していた私がある程度まともな文章を書けているのも、弁理士試験のご利益の一つだと思っています。

2. 実務の専門書を理解する土台ができる。

 一方、弁理士試験の勉強だけで、実務ができるようにはなりません。例えば、弁理士試験では、出願に係る発明と引用発明との具体的な対比なんて、過去問の公開範囲では出題されていません。

 一方、実務について具体的に解説している専門書を読むと、その内容は、条文、審査基準又は判例などの公的資料を土台に議論が進んでいることが多いように思われます。まだそれほど書籍を読んでいないので、断言は避けますが…。

 そして、上述の通り、弁理士試験は、条文等の公的資料への理解を試す試験です。弁理士試験の勉強は、専門書の議論の土台である法律理解の基礎を作り上げます。この法律理解が、専門書と向き合う際に、実務の内容の理解に労力を割くことができていると感じています。

3. 職場の枠を超えた仲間ができる。

 実務とは離れますが、私にとっては最大限の恩恵です。

 弁理士試験はかなり過酷な試験ですが、本気で挑む覚悟を決めれば、同じく覚悟の決まっている人たちとつながりができます。同じ苦しみを分かち合う戦友のような感覚かもしれません。職場の外との繋がりは、自分の環境を客観視する上でもとても貴重な存在だと思います。同じゼミの仲間とは、口述試験対策をしながら仕事やプライベートの話など色々と情報交換をしたりしています。

4. まとめ

 ただ、弁理士試験の勉強をしても、実務ができるようになるとは限らない、というのは正しいと思います。しかし、弁理士試験の勉強が実務に役に立たないかというと、決してそうではなく、実務を学ぶ上での前提知識を自分のものにするということに意義があると思います。

 余談ですが、これまで私は自然科学のみを中心に物事を解釈していました。法律なんて、人が勝手に作った面倒な取り決めだとすら思っていました。そんな私に、弁理士試験の勉強は、法律(特に上4法)が法目的を中心に美しく体系化されていることを教えてくれました。法律という新しいものの見方を知ることができました。それだけでも十分な価値があると、私は思っています。

 本気で頑張る人たちの学びが無駄にならないことを、切に願っております。

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