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自粛と成熟

『今、私達に出来ることを
 一人ひとりが考え、動き出しました。

小さな提案ですが、大きな一歩です。
どうぞ心に平和のシンボルを』
 
そうメッセージが刻まれた、
小さなパネルを行きつけの
cafeで見つけた。

「今日は、コーヒーじゃないんですね?」

顔馴染みの店員さんから、
そう声を掛けられる。

「ちょっと疲れている時は、気付け薬
 にエスプレッソを飲みたくなって」

「じゃあ、『フラット・ブラック』を
 試してみませんか?」

このお店オリジナルの黒いカフェラテ。

レシピの秘密が気になりつつ、
テイクアウトのカップを手にする。

万が一を考え、器にも細やかな気配り。

「席は混んでますか?」

「いえ、ウチも席数を減らしたので」

申し訳無さそうに言うスタッフさんに

「いやいや、お店が空いているだけで
 ありがたいですよ」

思わず御礼を伝えてしまう。

席を探す時も、他のお客様と距離を
空ける席を探す癖がいつの間にか
身についてしまった。

ちょうど良い席はあるかな?

店内を見渡すと、小さなパネル
のメッセージに目が留まった。

『カフェは平和のシンボルです』

『日々、お客様が憩い、満たされる景色
 を想像し、カフェを営んでいきたい。

 その想いはスタッフ全員が非常事態
でも変わらずに持っています』

メッセージとともにパネルで紹介された
新しいサービスの数々。

「これだけ自粛の要請に従うのは、
 日本の民度が高い、という証拠
 なんだよ」

zoomを通じて、シンガポールで
会社を経営する先輩から
今のアジア各国の状況を教わった際、
そんな話があった。

確かに、これほど長期間に
自制できる国民性は世界でも
稀かもしれない。

一方で、限られた条件の中でさえ
他者を想い、新たな知恵を出すのも
また、成熟した文化を持つ民族の姿
ではないだろうか?

遅くても、5月7日までには、
自分たちも自らを省みて考えていく
必要があると思う。

ほんの15分程度の滞在。でも、
気疲れた身体がほどよく癒された
ひと時だった。

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