人生の岐路

人生には幾度となく選択の機会が訪れる。小さなものからその後の人生を左右するような大きなものまで数え切れないだろう。特に大きな選択の機会に直面するとき、誰にどんな言葉をかけられるかということは、自身の経験を踏まえてもとても大きいものだと感じている。


これまでの自分の人生で、おそらく最も大きな選択だったと思えるのは、転職を決断した時だろう。

新卒で就職して1年目の冬、徐々に仕事に慣れ始めていた頃に学生の時から関わりのあった今の職場で働かないかと誘われた。二転三転の後、結局今の職場で働くことを決断したのだが(当時振り回してしまった方々、スミマセン…)、当時の上司にかけられた言葉が自分の背中を押してくれた。

「あなたの人生なんだから、あなた自身が選んで決めなさい」

細かいニュアンスは忘れてしまったが、辞めるか辞めないか悩んでいることを打ち明けた時に、こんな言葉をかけてもらったと記憶している。

諭して辞めないように働きかけるわけでもなく、かといって突き放すわけでもなく、あくまでも自分の意思で決断することを尊重してくれた。

決断に至るまでに上司以外にも色々な人と話をして、自分自身揺れ動いたり、苦しくなったりするときもあった。それでも最後は自分の意思で決断した、と思えることが大事なのだと思う。誰かに言わされた決断だとしたら、決断した先で苦しくなった時に誰かのせいにしてしまう。誰かのせいにしてしまったら後悔しても後悔しきれないのではないか。上司がかける言葉はともすれば自分の決断に大きな影響を与えかねない。それが分かっていたからこそ、決断を自分に委ねられるような言葉をかけてくれたのではないだろうか(怖くて確かめられないので真意は分からないが…)。

「就職して1年目で辞めるなんて何考えてるんだ」「今後を見据えて色々と教えてきたのに無駄になるじゃないか」「来年度の人事の構想が…」等々、自分が辞めることでおそらく多大な迷惑をかけてしまったことだろう。それでも、自分の決断を尊重してくれて、責めるようなこともなく、退職する日まで他の職員と同等に扱ってくれた当時の上司には感謝しきれないし、今でもずっと尊敬している。


とはいえ、転職を決断した後も、実際に転職をした後も、後悔が全く無いなんてことは無い。時が経つにつれて、当時の記憶も徐々に薄れてきて(それが切なくて哀しいところでもある)、後悔の念も薄まってきているけれど、ふとした時に「あの時辞めていなかったら…」と、どうしようもなく考えてしまうことがある。そんな時に自分を奮い立たせる言葉がある。

「どっちの道を選んだとしても、多かれ少なかれ後悔はするんだから、自分が決断した道で一生懸命頑張るしかない」

何かの本で読んだのか、グルグルと考えた末にこの考えに至ったのかは分からない。それでも、自分自身の決断に苦しくなった時に、結局選んだのは自分なんだから、というところに立ち返らせてくれる言葉である。この言葉の大元には自分で決断することを尊重してくれた上司の言葉があるわけで、やっぱり「自分で決める」という行為は大切なことなのだと思う。

誰かのせいにするわけでもなく、自分で選んだ道なのだから、その道を良くするのも悪くするのも自分しかいない。酷い言い方になってしまうが、自分は前の職場で関わってきた人たちを切り捨てて、今の職場の人と関わっていくことを選んだ。そこに罪悪感を感じることもあるけれど、今の自分が前の職場の人に対して出来ることなんて無いに等しい。それでも、この選択で良かったのだろうか、あるいは他の選択肢は無かったのだろうか、という考えがが過ぎることもある。考えてもどうしようもないことだし、今更どうにか出来ることでもない。後悔が無くなることはないのだろうけれど、自分の決断を後押ししてくれた人たちに報いるためにも、自分が決めた道でせっせとやっていくしかないんだな、と思う次第である。

まぁ毎日そんな信念を持ち、粉骨砕身の思いで日々過ごせるわけはなく、しんどい時も多々あるけれど、折に触れて思い出して頑張る原動力にしているのは事実である。


決断に迷う人に、自分の言葉や経験が少しでも後押しになることを願って。

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