その場で解決しない

ある人と対話をしていた。その人によれば ──── もちろんその内実は、ここでは語り切れないほど深みのあるものだが ──── 端的に言えば、自分がつねに他人から嫌われないことを第一原則として行動しており、それが問題であると感じているとのことであった。

他人から嫌われないよう行動する、そのこと自体は自然なことだと、わたしは思っている。「人は人、自分は自分」ともよく言われるし、「わたしは他人の眼なんか気にしない」と強弁する人もよく見かける。とはいえ社会で生きていくうえで、やはり他人との関係はいつも問題になるし、対人トラブルで消耗することは避けたいものだ。それになにより、自分が多くの人間から憎まれていると実感して嬉しい人は、それほど多くはないだろう(だがこれもまた例外があって、「自分のような者は誰からも憎まれて当然なのだ」ということに安寧を感じる人もいる)。

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