終末夢

…崩壊した世界が目の前に広がっている。私たちは自由になった。生活の労苦は消失し、私たちは物資の豊富なショッピングモールに解き放たれた。やがて奪い合いと殺し合いのサバイバルが始まるのだ。その前に誰も知らない場所まで逃げよう。持てる物は全部持って。静かな湖のほとり、新たなる約束の土地、そこで息をひそめるようにして暮らすのだ。誰にも邪魔されることなく、まるで余生を楽しむ釣り人のように。だがまだ、ショッピングモールでは、仕事をしている店員がそこここにいる。日常生活がここではしばらくら続いているようだ。誰もやって来ないだろうと見当をつけたフロアーまで来たが、考えることは皆同じのようで、やがてそこも人で溢れてきた。その中には顔知りが多く見られた。彼らともやがて敵同士になるだろう…ふと、私は、何十年も変わらぬ生活を日々繰り返すことしか知らない両親を思い出した。それから家族の一人ひとりの顔を。彼らをこの野蛮な世界に放っていくわけにはいかない…

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