夢と妄想

かつて中井久夫は、統合失調症の患者が、あれほどの苦悩を抱えているのになぜ夢を見ないのか、と疑問を呈した。そして同様に、なぜ心身症の症状が現れないのか、と。

さらに中井は、患者が寛解へと至る関門である臨界期において、妄想が「夢に還っていく」と言った。同時に様々な心身症の症状が現れることを見出した。

つまり、患者が抱える深刻な葛藤は、急性期において観念(妄想・幻覚)にその吐け口を見出すのだ、ということができる。そして中井の言う臨界期においてそれは感情(夢)に、そして身体(心身症)に流路を見出すようになる。その関門を過ぎると、やがて休息期へと至る。

抽象度の高い領域に葛藤の吐け口が見いだされる時、症状は重く、抽象度の低い領域に吐け口が移ると、症状は一般的に理解可能なものとなっていく。そんな法則性を抽出することができる。

このように様々な思考を試みていくことで、我々はこの病気にどこまでも接近していく。どの文化においてもどの時代においても100人に1人が罹患するという、この謎の病に。

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