夢の街

無為に委ねるならば、ぼくらの心は穴ぐらに落ち込んで行くばかりだから、いつも何かに抗うように、一つの街を目指すことに集中している…しかし、たいていは、すぐに街は霞んで見えなくなる…ぼくはいつの間にか夢の世界に迷い込んでいることに気づく…夢の街ではいたるところ工事中だ。新しい校舎、やがてこの辺りにできるという地下鉄の駅、できかけの劇場…何かが始まろうとしている…しかし、おかしなこともたくさん起こっている。ぼくは工事中の建物の隅の方で、かつて罪を埋めた場所を掘り返している。すると薬物中毒の劇団員が刃物を持ってぼくを追いかけてくる。息子に勉強を教えているのは、普段はビジネスマンのような出立ちをしているゾンビである。いつ本性を剥き出しにするかわからない。徐々に顔が変質しかけているようではないか…でもぼくにはどうしようもない…この街では工事はいつまでも終わらない。そして夜が長い。

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