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TSP 映画講座【番外編】

DJユニットTop Secret Philia's スピンオフ企画映画講座の番外編

第6回では『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』をお届けしましたが、鑑賞後には、DJ智智(C)🦓とDJ智智(T)🐘の間で最後の場面についてこんなやり取りも・・。
🐘:息子のパーシーがショートムービーをまとめた動画シーンは、『ニューシネマパラダイス』のラストシーンを思い出させてくれるので、是非『ニューシネマパラダイス』を見てみてください。
🦓:Tには兼ねてよりおすすめいただいていますからね。学生の頃DVDで観たもののほとんど忘れているので、これを機にもう一度観てみようかな~。

・・・ということで、今回の映画は
監督 ジュゼッペ・トルナトーレ
『ニュー・シネマ・パラダイス』

番外編なのでいつもと立場が逆転、T(🐘)のおすすめ映画をC(🦓)が鑑賞してレポートします。
T(🐘)は聞くに徹するスタイルなのであまり登場しません。

※ 以下 ネタばれあり ご注意ください ※

🦓:たしか初めて見たのは7~8年前だと思うのですが、驚くほど憶えていないものですね~。超・有名作品ですが、当時の私にはあまり刺さらなかったみたい(笑)
でも、作中で何度も映される映画館のある広場の風景や、視力を失ったアルフレードがトトの顔に手を当てて撫でるシーンを見て、少しずつ記憶が蘇りました!そして言わずもがな、音楽はエンニオ・モリコーネ。この映画のサントラはブラスバンドでは定番なので、高校時代の吹奏楽部を思い出してしみじみしてしまいました。
(しばし青春時代の思い出に耽る)

🦓:さて、まず前半のおもしろさを引き立てているのは子役のトトとアルフレードの絡みですね。トトは、頭の回転が速く口も達者で、ちょっとくらい悪いことなら平気でやってのけるやんちゃ坊主。そんなトトが機転を利かせて映写室に入り込めるように企んだり、小学校の卒業試験に苦戦するアルフレードと駆け引きしたりするシーンは微笑ましくて好きですね~。アルフレードも、トトに翻弄されてはいるけれど彼のずる賢いところを含めて楽しんでいるのが伝わってくるのがとても良いです。

🦓:そして、作中でも重要な映画館が火災に遭うシーン。
可燃性フィルムが原因で映画館が火の海になるストーリーは、T(🐘)が5th映画講座の『イングロリアス・バスターズ』の感想で触れていた通り!タランティーノは、十中八九このシーンからインスピレーションを受けているでしょうね~。
🐘:最も、タラちゃんの場合は映写係が観客もろとも丸焼きにしてしまいますが・・・恐ろしい発想力。
🦓:映画館の火災は悲劇ですが、この一件があったからこそトトとアルフレードの絆は確固たるものになったと感じましたね。

🦓:その後、サッカーくじを引き当ててリッチになった村人がなぜか新オーナーになり、晴れてニューシネマパラダイス誕生!(笑)
再び映画館に活気が戻ったこのシーンにもお気に入りポイントが2つあります。まず一つ目は、客席の様子が『天井桟敷の人々』(1945年/フランス)の劇場とよく似ているということ。
映画の展開にみんなで一喜一憂したり、大声で怒号をとばしたり爆笑したり。今の映画館じゃ考えられない状況だけど、感じたことを素直に表現して共有できる文化というか、それが一つの大衆娯楽になっているっておもしろいなーと思いました。
もうひとつは、時代の流れに沿って上映されている映画のジャンルも変化していき、その中で細かい人間模様が描かれていることですね。
ホラー映画ではみんなが怖がって顔を覆う中、全く怖がらない男女二人が目を合わせて恋に落ちたり、規制が緩んでちょっぴりアダルトなシーンが上映されるようになると上映中にもかかわらず・・
🐘:(無言の制止)
🦓:ずん・・・失礼、続きはお察しくださいませ。
えーと、私が特に好きな名も無きお客は、お気に入りの映画のセリフを全て覚えていて、先走って声に出しちゃうアテレコおじさんですね。
🐘:昔は二本立て上映といって一日に同じ映画を繰り返し上映するのが普通だったから、このおじさんも、一日中館内に入り浸って何度もセリフを聞いていたら覚えてしまったということかもしれませんね。
🦓:手に取るように気持ちはわかるけど、隣には座りたくないなぁ(笑)
さて、全編を通して一番印象に残っているのは、トトの成長とアルフレードの遺した形見です。
青年になったトトに向って、アルフレードは「目の見えないわたしより、お前の方が盲目だ。」と話し、村から出たら戻ってくるなと言い放ちます。私がトトの年頃であれば、同じ地で共に過ごしてきたアルフレードから突然村のことを全て忘れろなんて言われたらショックを受けてしまう。でもトトは、彼の言葉をじっと受け止めてその奥に潜む意味を感じ取ったのでしょう。自分のためを想っているからこそ、あえて厳しい言い方をしていると瞬時に理解したのだとわかりました。
そしてアルフレードの言いつけ通り30年間村に帰らなかったトト。ラストのアルフレードの遺したフィルムを流すシーンでは、切り取ったフィルムをトトにあげると交わした昔の約束を、ひっそりと守り続けてきたことが明かされるところにぐっときました・・!トトが涙を浮かべながらはにかんだ表情で思い出しているのは、切り取られたフィルムで遊んだ幼い日の記憶か、映写室と映画を愛してやまなかった少年時代か。
🐘:私はアルフレードが残してくれたあのフィルムこそ究極の映画なんだと思っているところがあります。映画監督になってそのフィルムを観ているトトの最後の表情には「やられた」というような感情があるような気もします。
🦓:なるほど。あのニヤリ顔はそうとも捉えられますね。
アルフレードは、世の中には変わりゆくものと何も変わらないものがあるけれど、大切なものを見失わないでとトトに伝えているような気がしました。
🐘:私も、ちょっと観直したくなりました。
🦓:最後に・・・アルフレードのセリフには映画の引用がたくさん出てきますが、恋愛でくすぶっているトトに対して「現実は映画のようにはいかない」というシーンが印象に残っています。たしかに映画は作り手の想像上の世界でしかありません。『シェフ』のパーシーが創ったショートムービーも、単なる思い出の継ぎはぎではなくて、父親への感謝や尊敬に加えて、喜んでもらいたいという意図や二人の未来に期待する思いが込められているはず。
リアルではなくなるけれど、現実から想像して別の何かを創ることが人間にはできます。そしてそれが、時に人の心を動かしてしまうことがある!これって凄いパワー!
だから私は映画が好きなんだ~と、ニューシネマパラダイスを観て再認識したのでございました。


おわり


今回の映画
『ニュー・シネマ・パラダイス』

監督 ジュゼッペ・トルナトーレ
脚本 ジュゼッペ・トルナトーレ
製作 フランコ・クリスタルディ
製作総指揮 ミーノ・バルベラ
出演者 フィリップ・ノワレ
    ジャック・ペラン
    サルヴァトーレ・カシオ
    マルコ・レオナルディ
    アニェーゼ・ナーノ
音楽 エンニオ・モリコーネ
   アンドレア・モリコーネ
撮影 ブラスコ・ジュラート
編集 マリオ・モッラ
製作会社
クリスタルディフィルム(イタリア語版)
レ・フィルム・アリアーヌ(フランス語版)
TFIフィルム・プロダクション(フランス語版)
公開 イタリア 1988年11月17日
  フランス 1989年5月19日(CIFF)
  日本 1989年12月16日

#映画 #ニューシネマ  #tsp   #天井桟敷

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