#NulNote TTO率≒アダム・ダン率 相手守備をヒマにさせる選手は誰だ?
先日、元MLBプレーヤーであるアダム・ダン氏がレッズの球団殿堂入りすることが発表されました。
アダム・ダン氏がレッズの球団殿堂入りへ 現役時代は462発&2379三振
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20171130-00010004-baseballc-base
アダム・ダンはタイトルにもあるようにMLB通算462本塁打を記録。シーズン40本塁打以上をキャリア14年中6回記録するなど(1回は途中移籍あり)MLBを代表するスラッガーとして活躍しました。
しかし一方で三振も桁違いに多く、通算2379三振はMLB歴代3位、2012年に記録した222三振は歴代2位の記録です。また、通算打率もわずか.237であり、これだけだと「三振か本塁打の宝くじバッター」のように見えます。
しかし、先ほどの記事内にもある通り、アダム・ダンは四球数も多いという特徴があります。通算1317四球で100四球以上を記録したシーズンが8回もあり、三振も多いが四球を選ぶことが出来ると言う珍しいバッターでした。それゆえに通算出塁率が.364と高くなっています。
(※ちなみにイチローのMLBでの通算出塁率は2017年現在.355)
まとめると、アダム・ダンは本塁打・三振・四球が多い打者という事になります。
さて、この「本塁打・三振・四球」の3つにはある共通点があります。
それは「結果がバッテリーと打者間で完結している」という点です。
(※厳密に言えばランニングホームランや振り逃げ等は異なるのですが年間の発生割合から考えて無視して良いレベルであると考えます)
バッテリー-打者間で完結している、ということは相手チームの守備力に影響されない指標、つまりエラー等の運の要素が排除され「打者自身の実力が反映されやすい指標」であると言えます。
この3つの指標のことをTTO(Three True Outcome)と呼び、打席に対するTTOの割合を出したものをTTO率と読んでいます。
TTOについては以下の記事を参照してください。
スラッガーの証「TTO率」の高い打者は誰?
http://www.baseball-lab.jp/columns/entry/290
そう、某所に良く通われている方には「アダム・ダン率」と言った方がわかりやすいかもしれません。
アダム・ダン率
http://wikiwiki.jp/livejupiter/?%A5%A2%A5%C0%A5%E0%A1%A6%A5%C0%A5%F3%CE%A8
TTO率もアダム・ダン率も言ってることはほぼ一緒で、以下の計算式で導かれます。
TTO率(アダム・ダン率)=(本塁打+三振+四球)/打席
※記載される際はパーセンテージ表記であることが多い
ぶっちゃけて言うと、このTTO率で何が分かるかと言われると微妙なのですが、強いて言えばTTO率が高い選手はインフィールドに打球が飛ぶ確率が低い=守備側が暇を持て余すケースが多いという感じでしょうか。
また、本塁打が分母に含まれていますので、長距離タイプの選手が上位に来る指標であり、長距離砲であるかを見る指標とも言えるかもしれません。
もっと拡大解釈すれば、TTO率が高い選手は守備機会が発生する可能性が低いという事ですから、その選手の打席までは守備固めをしなくても良い、という戦術面への反映は可能かもしれません(と言っても高くても50%前後なので有効性はなんともですが)。
さて、前口上が長くなりました。ではこのTTO率の高い選手・低い選手を観ていきましょう。今回は選球眼を示す指標であるBB/K(四球/三振)も併せて記載してあります。
まずは2017年の12球団TTO率・TOP15です(400打席以上を対象)
トップのエルドレッドから始まり、15位まで各球団を代表するスラッガーがズラリと揃っています。また、15人中13人が100三振以上となっています。
BB/Kで見ると、1越えの選手はいませんでしたが0.72のH柳田悠岐、0.81のDB筒香嘉智、0.84のT福留孝介辺りが「三振も四球も多く記録している」タイプの選手と言えそうです。
では逆にインフィールドに飛ぶ確率が高い2017年TTO率ワースト15を見てみましょう。(400打席以上を対象)
400打席以上で最もTTO率が低かったのはBs小谷野栄一でした。以下、やはり巧打者と評されるタイプの選手が並んでいますが、10位に長距離タイプのDBロペスが入っているのが目を引きますね。ワースト15を見ると全体的に本塁打はもちろんですが四球も少ないタイプが並んでいるようですね。三振に関しては100三振以上の選手が3人おり、極端に少ない傾向にはないようです。
余談ですが、今年首位打者を獲得したDB宮﨑敏郎は三振・四球ともに少ない水準のため、TTO率ワースト2位となりました。大振りはしないが四球を選びに行かず積極的に打っていったことがタイトル獲得に繋がったのかもしれません。
では、最後に手元で追える2005~2017年までのTTO率TOP・ワースト15を見てみたいと思います。(シーズン400打席以上が対象)
まずはTOP15です。
名だたるスラッガーが並ぶ中、この期間で1位となったのが2014年のLメヒアでした。この年5月途中から西武に加入すると、106試合で34本塁打を放ち、同僚のL中村剛也とともに本塁打王のタイトルを獲得したのですが、三振も156でワースト1位を記録。結果として半数以上の52.2%の確率でインフィールドに打球が飛ばなかった、という結果となりました。
逆に2位の2007年Dタイロン・ウッズは三振・本塁打もさることながら四球も121を記録。警戒される中で四球もきっちり選んだことで52.1%という高いTTO率となりました。
最後にワースト15。
この期間でのいぶし銀バッターの代表格ともいえるS宮本慎也が1位と3位に入りました。2011年は本塁打・三振の少なさはイメージ通りですが、四球も17と極端に少なく、TTO率はわずか10.8%。彼の打席では90%近くはインフィールドに飛ぶということになり、守備側が気を抜けない展開となっていたということになりますね。それでも打率3割を記録したのだから大したものです。
ということで、今回はアダム・ダン球団殿堂入り記念としてアダム・ダン率ことTTO率を紹介してみました。TTO率が高い・低い選手どちらにおいても色々なパターンがあるので、詳細に紐解いていくと新たな発見があるかもしれませんね。NPBでは一般に公開されるような指標ではありませんが、計算が簡単ですので、来年暇なときにまとめてみると面白いかもしれません。
今日はこの辺りで。
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