#nf3Note SABRの概念を破壊したクローザー!? 武田久をWHIPで振り返る

みんなが良い方向に向かうと良いのですが。

さて、今日こんな記事を見かけました。

この中で武田久は2017年に日本ハムを退団した際にこうコメントしているようです。

「自分でぶち壊した試合が思い出」
「ポジション的に、いい思い出はあまり残らない。打たれた試合を糧に頑張ってきた」

武田久と言えば「劇場型クローザー」としての印象が高いと思います。
毎登板ランナーを出しながらもなんとか抑えるというファンとしては胃薬が手放せない展開が多かったと思います。

その真骨頂(?)となるのが、2013年のシーズンでした。
この年、武田久はリーグ2位タイの31セーブを記録し、防御率も2.28とまずまずの成績を残しています。
しかし、特筆すべきは「WHIP」の異常な値でした。

その前にまずWHIPについておさらいしておきましょう。

WHIP(Walks plus Hits per Inning Pitched)
WHIP=(被安打+与四球)/投球回 
※与死球を入れる考え方もありますがとりあえず本記事ではこれで行きます

要するに「1イニング当たりに自責でどれくらいの走者を背負うか」の値であり、1を切れば優秀であるとみなされるものです。
つまり、単純に考えると値が大きければ大きいほど走者を背負う場面が多い=失点する可能性が高い」と言うことになり、ことクローザーに関しては1点2点のリードを守る場面が主ですから、「WHIPが大きい=セーブ失敗の可能性が高い」と言えます。
実際、年間通して好成績を残しているクローザーはWHIPの値も1以下であることがほとんどです。

ではここで、シーズン30セーブ以上を記録した投手のWHIPベスト10を見てみます。

画像1

2002年の西武・豊田清がWHIP0.61という驚異的な数字を記録しています。
表を見て頂くとわかりますが57 1/3イニングで与四球がわずかに3
抜群の制球力で38セーブ、防御率0.78と文句なしの活躍を見せ優勝に貢献しました。
また、NPB記録の54セーブを記録したサファテも安定したWHIPを記録していますね。
実は武田久も10位にこっそりランクインしていたりします。
なお、シーズン30セーブを記録している投手の平均WHIPは1.06
走者を1人出すか出さないかというレベルの数値になっています。

では、本題に戻ります。
2013年に31セーブを挙げた武田久のWHIPは驚愕の1.69でした。

つまり1イニングに1~2人の走者を毎登板背負っていることになります。
その上で31セーブを挙げるというは驚異的としか言えません。
「WHIPの低い投手が優秀である」といういわばSABRの概念を破壊した結果と言えるかもしれません。

実際、シーズン30セーブ以上を記録した投手のWHIPワースト10ではぶっちぎりのワースト1となっています。

画像2

さらにこの2013年に武田久は「WHIPが防御率より大きくなる」という信じられない現象を記録していました。
WHIPの値が大きいと言うことは失点も多くなることがほとんどであり、当然防御率も悪化すると言うのが常識的な考え方です。
しかしこのシーズンの武田久は、まず10登板目の時点で防御率が0.87に対しWHIP1.84というとんでもない値を記録します。
その後、またWHIPが防御率を下回るのですが、27登板目で16セーブ目を挙げた試合で再びWHIP(1.68)が防御率(1.61)より大きくなる現象が発生しました。
序盤であればあり得そうなのですが、中盤に差し掛かった時期にこのような事態が発生するのは異例と言えます。

ということで、2013年の武田久は我々データ愛好家が首を捻るような数字が並んだシーズンとなりました。
では、なぜこんなにWHIPが大きいにも関わらず31セーブを記録出来たのでしょうか?

画像3

それは上の表を見て頂ければ一目瞭然です。
「ランナーを許した後はめっちゃ強い」
走者無しの場面での被打率が.425、得点圏走者なしの被打率が.408ととても悪いのに対し、得点圏走者ありは被打率がわずか.176まで改善します。
まあ当然と言えば当然なのですが、いくら打たれても得点圏ではきっちり抑えることで好成績を残せたと言えるでしょう。
(同時にファイターズファンの胃薬の使用率も高かったことでしょうね)

SABRの考え方はあくまで統計結果から導き出された傾向と対策であり、当然例外と言うものが出てくるものです。
今回の武田久のように、データから導き出された傾向とは180度違う結果を出す選手に注目してみると、また新しい気付きが得られて楽しいと思います。
無事に今年のプロ野球が開幕した暁には、ぜひそういう選手も探してみてください。

今回はこの辺で。

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