【可愛いだけの女の子じゃない】halca「Assortrip」【レビュー】




ソニーグループのアニメ分野担当SACRA MUSIC所属で事務所はミュージックレイン。出身はこてこてのアニソンシンガーの言えますね。アニタイも多いっていうシングルカットはアニタイで占められている。

私は同じ事務所のスフィアのオタクなので(全曲ライブ本当に良かったね)、スフィアの後輩ちゃんかぁくらいの認識でした。CMとかで耳に入る程度。しかも深夜アニメは録画を視聴をしていたので早送りで飛ばす直前の一瞬。

ただ良い意味で耳に残るキャッチーな声に前から気になってはいました。


1. 動機


いま再放送でやってるかぐや様の1期を見ているっていうのが腰をあげるきっかけだと思います。


社畜でいちばん心死んでた時はアニメもロクに見れなかったので、再放送はありがたいことこの上ない。本放送の時に相合傘の回をちらっと見てから気になってはいたものの見る時間も気力もなかったので。

ただいまヤンジャンで連載中、実写で映画化しており4月からは2期が始まるようですね。再放送のCMで知ったよ嬉しいな。
前述の通り録画視聴でCMを飛ばすのはニートになった今でも変わらないんですけど、2期予告CMを見ていてずるずる見てたらアルバムのCMが流れてピンときたって感じでした。

音楽を聴きなおそうっていうのはこの楽しみたい期間のなかでやりたいことの大きな部分をしめています。いやー結構no music no lifeな人間だと思ってたんですけど3年間くらいは生きていけるんだな(そして最終的には死ぬんだな)といういらん実証結果を得てしまったな!

広く浅くではないと信じたい、が、コアな人にはにわかがと罵られてもウッスと頭を下げるくらいの音楽好きだと自覚しております。昔好きだった(もちろん今でも好き)曲を流してはノスタルジーに浸ってどうにか日々をやりすごしてた自分が嫌になるくらいには。

ということで新しいアーティストに触れてみっかということで聞いてみた次第でした。
結論から言うと、マジでよかった。これだから自分のアンテナが大好きなんだよなー(自画自賛)



2.魅力


2-1. ギャップに富んだ歌声

公式のコピー通り透明感溢れる声が彼女のいちばんの武器ですがこのアルバムはきっちり裏切ってくれました。
かわいくて、元気で、無垢で、一生懸命で。1ミリくらいしかかじってない私にとっては嬉しい誤算です。

アニタイ曲である「キミの隣」や「スターティングブルー」は彼女の透き通った声が存分に生かされる正統派なメロディですし、「放課後のリバティ」なんてこれ歌うのめちゃくちゃ難しいやろ、って聞いていてお腹痛くなりそうな曲なのに軽々と歌い上げる実力を見せつけてくる。「センチメンタルクライシス」の瑞々しさを浴びてたらもっかい学生に戻って甘酸っぱい恋したい衝動にかられるわよ、ぐおお。

とか悶えてたら「うそじゃないよ」の必死さにやられるんですよ。歌詞だけ読むと懺悔色が強くて暗めな曲なんですよねこれ。曲調が明るいからわからなくなるのがニクい。でも彼女の息の抜き方でただの明るい曲じゃねーんだぞっつーのを理解させられる。ああ演出がニクい。そういうの好き。
「うそじゃないよ」を三回、「あぁ」を二回繰り返すところがあるんですけど全部息の抜き方止め方が違いますね。ひょうげんちからパっねぇすわ。

「サカナイトデイズ」の強さもまたいい。作曲の藤井亮太さんはAqoursの「スリリング・ワンウェイ」の方ですね。王道やけど王道が故にオタクめっちゃ好きやろって曲を書く方です。よう分かっとるやないかめっちゃ好き。

というのはまた別の機会に話すとして、「サカナイトデイズ」ですよ。
ざっと見た感じ、今までの曲はどちらかというと「いま置かれている状況のなかでどうにかしたい」みたいな、なんていうんだろ、常識とか環境の枠のなかで最良の結果を出そうみたいな歌詞が多い気がするんですけど、この曲は枠を飛び出そうという強さがある。
藤井さんのゴリゴリ王道メロディも相まって、いま(私も含め)世間が持ってるhalca像を壊すターニング曲だなぁ。こういう力強い曲もっと歌ってほしい。「女の子は可愛がられるだけの存在じゃねーんだぞ」というのを彼女の歌声にでもっと聞いてみたいです。

「Ride on music!」もそう。こういう澄んだ声の人がどいつもこいつもって言うの本当に良いです。だってきっとアニタイ曲だったらキミもキミもみーんな、みたいな歌詞になるでしょ。そうしないのがいい。
こういうのがアルバム曲の醍醐味だと思う。テンションに任せちゃってちょっと口が悪くなってもいいじゃないの、ギャップが好きだもの。って調べてみたら前山田さんの作詞作曲で全て腑に落ちました。この人本当に曲で人をマネジメントする天才やな。

いい子ちゃんな女の子の曲は、別に甘酸っぱくもない思い出を引っ張ってきて妄想を混ぜ合わせたものを用意したいと受け止められなくなってるんですけど、そんな心がひねくれてる三十路オタクにやさしいアルバム。

つまり「私は可愛いだけじゃない」という意思表示。それセカンドアルバムくらいでやるやつやん普通。
ファーストアルバムでやりきる勇気と、それを表現できるという彼女がこれまでに培ってきた実力を感じることができる名盤です。

(つーかこういうギャップを作品に落とし込んで表現してくれる、アーティストが胸を張ってステージに立てる業界に醸成してたんだなアニソン……うれぴ……。)



2-2. アルバムのバランス

ギャップの話と繋がるところあるんですが、このアルバムはアーティストの魅力が引き立ついい並びしてると思うんですよ! 

ファーストアルバムってたくさんの人に聞いてもらうために間口広くする必要があると個人的に思っているので、(売りたい側のイメージ戦略も含めて)こういう人間が歌ってますよーって「キミの隣」を持ってくるのは最適解として、その後に「one another」持ってきて2曲目に進むリスナーを迎えるのはわかりみが深い。ここで「be your XXX」きたらギャップすごすぎてびっくりしちゃうもん。下手したら私も驚いていったん聴くの止めてるかもしんない。

緩急のつけかたがうまいというか。いまのhalcaはこんなでーすみたいなのを飽きさせずに伝えてくれた並びだなーって思うし、これを実際の円盤に落とし込むって簡単なようで結構難しいんですよね。

サブスクが広まったいま、好きな曲だけを聴く楽しみ方をする人だって少なくなくて、でもアルバムは1枚でひとつの物語っていう側面もあるから全部聞いてなんぼな考え方も正しいと思うし、飽きさせないアルバムを作るのって本当に大変。
でもやりきっちゃった。歌い手と作り手と売り手のイメージが合致しないと絶対にできない。そんな姿勢も感じることができてとても良いです。

「キミの隣」で間口広げて、「one another」でがっちりつかんで、「うそじゃないよ」であなたが知ってるhalcaじゃないでしょと誘って「放課後のリバティ」でちょっと安心させといて「be your XXX」で秘技ギャップ落とし! みたいな前半戦。
後半戦も基本的に一般に知られているhalca像とそうじゃないよ像が交互に来てジェットコースター感がすごい楽しい。こんな曲歌うんだーっていう新しい発見と実家のような安心感をくれる。

アルバムというかたちを最大限に生かして彼女の魅力を伝えています。もちろん曲単位で見ても痺れる曲ばかりなのでサブスクでお気に入りの曲をエンリピするのも全然オッケーですけど、私はおそらくアルバム渡して「とりあえず聴け。ぜってー楽しいから」って勧め方をします。



3.個人的に好きな曲


ここからはオタク特有の早口でいきます。


3-1. one another

CMでひっかかったからこの曲好きなのは当たり前です。曲がほんと好きで、シンセとピアノでキラキラしている全体のなかにアコギが優しく寄り添ってるおかげでずっと聞いてられる。こんなめっちゃエモい曲ありがとう誰が書いてくださったんだって調べたらkz(livetune)の文字。無条件敗北です。完全に屈服です。「last night, good night」リアルタイム年代からのファンなんですもう本当に好きです。

聞き直したらピアノの使い方とかkzさんの王道ラインですね。kzさんのピアノまーじで好き。kz(livetune)として曲を提供する場合はアーティストの声に合わせて自分の色をうまいことチューンナップされて、今回はEDMを軸にkz色を少し淡くした感じですか。奇跡のマリアージュです。ずっと聞いてられます。
kzさんの曲ってパキッとした声ももちろん綺麗に合うんですけど、いわゆる可愛い声の相性もかなり良いと個人的に思ってます。「と」に入ってる「ファンタジア」とか「Sign」とか。


kzさんはミューレとハニチコさんのつながりかと思ったんですけど以前アニメの挿入歌でタッグ組んでたんですね。「Resonance」はうってかわってksさん色が強くてこちらもめちゃくちゃ好きです。ちょっと民族音楽ぽいのとか。そして音に負けないhalcaの存在感ある声。いっやー好きと好き掛け合わせて好きじゃないはずないんだよなー。今後もこのタッグで曲作ってください。

歌詞もまた良いですよね。

昨日は左でも今日が右になるかも
コロコロ変わるのもわかるよ変じゃないよ
いつかに当てはまる 届けてくよもっと
このペース見失わないでしょ

<one another 歌詞より>

変化を受け入れながら自分らしさを失わない。いつか、が私にとって今だったんだな。届いてよかった。
コロコロ推しが変わってたくさんの現場をふらふらする現場オタクを牽制する歌詞も好感度高い(余韻ぶち壊し)。



3-2. キミの隣

これだけ言いたい。
この曲好きな人はやなぎなぎさん絶対好きでしょ。断言できる。
なんならryo(supercell)の「Today Is A Beautiful Day」内「ヒーロー」好きでしょ。だから好きなんだよなきっと。



3-3. be your XXX

アルバムだからこそ生まれた曲って感じ。アーティストのポテンシャルを引き出す曲。「放課後のリバティ」の後にこの曲持ってくるの、上手いしずるいなー。

作詞曲の神谷さんは歌い手さんを中心に楽曲提供されていた方で、これもハニチコ繋がりなんかな。
「独白」好きです。温もりに満ちた儚さというんですかね、救いを求める自分を自覚する悲しみと赦しというんですか、そんな現実的な感情が根底に流れるガラスの破片のような鋭さとないまぜになって。独特な世界観がクセになる。

そんなイマドキの叫びを内包する世界をhalcaがきちんと汲み取って声に乗せている。意図的に掠れさせて曲とのシンクロを図っている。少し自棄っぽい歌い方。冷たさすら感じられる声。ギャップっていうのは落差があればいいってもんじゃなくて、そこに色とストーリーがないとただ無理しているだけに聞こえる。

このアルバム全般にいえることなんですけど曲に合わせて良い意味で歌い方を変えてきてますよね。それがしっかりとこなせる実力。安心して聞いてられる。好きです。



3-3. あの頃の僕たちを

バラードでそのアーティストの実力がわかるっていうのが私の持論なんですが、おかげさまでhalcaはこの曲で決定的でした。つーかこの曲のすごいね、普通に邦画のEDとかに使われてそうですよね。スタッフロール一緒に流してもなんの違和感ない。そのくらい王道。

この曲は他にあげた曲とは違って彼女の「いつもの」声で歌い上げられていて、散々ギャップがとか強さがどうこう書き散らしてきてこう言うのもなんですが安心ししてしまいました。しかし、この側面の彼女もまた魅力のひとつなんですよね。再確認できます。

おかげさまで別に失恋したわけでもないのに隣にいない誰かを思ってしんみりしてしまうムーブかましてしまう。何をやってるんだ私は。いやだって素朴でどこか懐かしいメロディにhalcaの柔らかい声で包まれちゃうんだもん、違う世界線の私を呼び出して感じ入ってしまうのも無理ないわ。

アコースティックで聞いてみたいです。意味もなく泣いてそう。アコースティックライブとかしてくれないかなぁ。



3-4. Ride on Music!

いやぁ……これは好きというか……ライブでやったら私はちゃめちゃ楽しいんだろうなっていうオタク丸出しの選出……。

いまライブに行ったと仮定して私の感覚の脳味噌とお口直結で話してます。後ろの人間も跳ねろ言われても……あ、ちょっと跳ねにくいリズムだけどコーレスで跳ばせてくれる! 縦乗りオタクに優しい! コーレス楽しい曲はどんな曲調でも楽しいって相場が決まってるんだよ!

ただ騒げ!言われた直後に落ちサビくるのめっちゃ笑いました。本当にこれだけが言いたかった。急にオタクの自制心が問われる構成。一瞬だけ騒げっつーことか。わかったよオタク一瞬を彩る花火になるよ。前山田さんなのできっとわかって作ってるんでしょうけどね。

会場暗転 私明転
どいつもこいつも 声聞かせて
(Yeah!)もっと!(Yeah!)はしゃぎたいの!(Hoo!)

<Ride on Music! 歌詞より>

「会場暗転(anen) 私明転(eien)」「声聞かせて(iaee)」のライム刻むのずっるい。その後の「ここはどこ?」も歌い方で韻踏みにいってるよね? 
ベースの動きと合わせてきてるのが耳に良いし、これはライブ行ってあの声で煽られて気持ちよくなりたい。早くこのアルバムひっさげてツアーしてくれミューレなにやってんだスフィアで何を学んできたんだきみならできる。



4.まとめ


曲にうるさいオタクはhalcaの「Assortrip」を聴け。ぜってー楽しいから。







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