いま自分にとって最も必要な能力と必要な仕事とは?

 為替相場には明確な運動原理があるからこそ、トレーダーはオーダーをパターン化して損益を追求することができる。
 とはいえ天気予報がいつも完璧な精度で天候を的中させるわけではないのと似たようなもので、想定する値動きと現実に見るチャートでは結構なズレが生じる。
 もちろんその精度の低さは天気予報どころではないし、しかも生半可な個人投資家の裁量能力と情報処理能力のレベルでは、チャート上のごくごくわずかな部分すらも完璧に予測するのは困難だ。
 したがって、高精度の相場予測という分野はふつうの個人投資家の領分ではないと考える。自身のエントリートリガーとイグジットトリガーを規定する手法を構築し、構築した手法を運用してオーダーを試行することのみが個人投資家の正しい生業であると考える。
 私はオシレーターや平均線を元にした手法を用いず、ロウソクのプライスアクションと水平線と値幅の複合観測からトリガーを入れているため、チャートの動向次第で非常に多くのオーダーチャンスが生まれてしまうがゆえに、期待と共にチャートに張り付いてしまう心理に陥りやすい。
 自分の裁量能力と情報処理能力が市場の注文状況と噛み合う部分を細かく抽出していけばコツコツと利益が重なっていくが、噛み合わない部分では大きな逆行に対してナンピンを繰り返した挙句シバかれまくり、ドカンと大損害を生んでしまう。
 一日の相場全体と噛み合わないのではなくて、部分的に噛み合い、部分的に噛み合わないからこそ、次こそは次こそはと成果を追求して撤退タイミングを失ってしまうことになる。
 プレイヤーは自分の環境適応力や状況対応力に自信があればあるほどますます、撤退を選ばずに戦い続けてしまう。
 時間の余裕があればあるだけ長く多くチャート観測をしてしまい、時間の余裕がないと衝動的にオーダーを入れてしまう。
 ドーパミンやアドレナリンを代表とする興奮系の脳内物質が脳を闘争状態に変容させ、成功体験や資金増大という報酬に向かって衝き動かしてしまう。
 このような蛮行を行う前にも、行っている最中にも、自己観察によって現在自己内部に起こっている現象と湧き出ている行動原理を把握し、精神状態が興奮化しているのなら鎮静化し、疲労感やパフォーマンスの低下を察すれば休憩し、自分が身を任せると決めたルールとそのロジックを再確認し、「本当に今するべきことが何か」を単独で正確に判断するのが個人投資家にとって最も必要な能力であり、最も必要な仕事である。
 

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