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正欲の感想

水に興奮する
そのような人の世界を、そのような人が存在する可能性を考えたことがあるだろうか。
LGBTQという言葉が浸透し、多様性が尊重される社会へと時代は変容を遂げている。
「自分と違う存在を認めよう」
「幸せの形は人それぞれ」
そんなことを言って、私は理解があります広い価値観を受け入れますという自己満足的な態度で、全てを分かったつもりになっていないだろうか。

この物語は複数の登場人物の視点で描かれている。

息子が不登校の検察官 寺井啓喜。
寝具店に勤める 桐生夏月。
食品営業部に勤める 佐々木佳道。
ダイバーシティフェス実行委員 神戸八重子。
SATORU FUJIWARAの名前を使う 諸橋大也。

人はみな、普通でありたい。
日々の生活での出来事や思ったことを他者と共感したい。
不安だから。
自分がマジョリティに属していて、まともな人間だと確認したいから。

だから、
普通のレールから外れることを嫌うし、
マジョリティ側はマイノリティ側を放っておかないし、
マイノリティ側は秘密がばれないように気を使うし、
マイノリティのなかのマジョリティは他人を理解したいと思う。

価値観が違う人間が同じ世界に生きているから、全員が全員を理解することができないのは当たり前なことかもしれない。
「だけど誰もが、昨日から見た対岸で目覚める可能性がある。まとも側にいた昨日の自分が禁じた項目に、今日の自分が苦しめられる可能性がある。」

自分が想像もできないような世界が確かに存在する。
でも、
「あってはならない感情なんて、この世にない。それはつまり、いてはいけない人なんて、この世にいないということだ。」

私が見る現実は私が見てきた現実でしかなくて、他人の世界なんて想像もできない理解もできない分かろうとするなんてエゴでしかないかもしれない。

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