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ランダムウォークとの対峙(60冊の投資本から得た感想)

私は、この二週間ほどの間に、60冊ほどの投資関係の書籍を読みあさった。Webライターの初収益と貯金を合わせて、日本の個別株を購入したいと考えたからである。何事もまず本から学ぼうとするのは、私の常道である。
もちろん、株式投資は奥が非常に深いから、たとえ千冊を読もうと、完全に理解し尽くしたということにはならない。ただ、まったく読んでいない初心者に比べれば、いくらかの共有するべき知見は生まれている。それを以下において文章にまとめたいと思う。

相場とは何か。それを一言でまとめれば、ランダムウォークとの対峙であると考える。

仮に相場が完全にランダムウォークであれば、およそ相場は予測不可能であり、一切の儲けは上がらないことになる。つまり、バフェットの資産形成はまぐれである。(効率市場仮説)
逆に、完全な法則性が仮にあるならば、その内的な必然性が解析され尽くすのは時間の問題である。つまり、サルでもいずれバフェットになれることになる。(テクニカル分析の聖杯)

しかし、片方の仮説だけでは現実はとうてい説明できないと考えるのが妥当である。バフェットの実力がまぐれであろうか。また、相場に聖杯=唯一無二の正解が存在するだろうか。

したがって、実際の相場はこの両者が渾然一体となっていると考える。だからこそ、相場の局面は日々新しく更新される。つまり、ランダムウォークが優位の局面と、何らかの法則性が優位の局面が、潮の満ち引きのようなサイクルで交代する。言うまでもなく、一般的なテクニカル分析が有効なのは、後者の場合である。

テクニカル分析にせよファンダメンタル分析にせよ、平凡な真理であるが、相場に聖杯は存在しない。(インサイダー取引は別だが、これは犯罪である)ただ、ランダムウォーク対アクティブ派の作業仮説が並び立つのみである。

効率的市場仮説は、肯定も否定もできない仮説である。いわば、真理は一つであるが、それはカントの物自体であり、人間には認識できない。観点の違いにより、真理の近似値がそれぞれ併存するのである。

いわば、ランダムウォークをめぐる論争は、人間は遺伝か育ちか?という問いに似ている。人間は遺伝の乗り物として、すでに人生の軌道のほとんどの部分を決定されていたとしても、一つの無償の行為によって、自由の感覚を大きく甦らせることができる。他方、いくら自由を享受していたとしても、人間が遺伝の操り人形であるという事実は変わりない。

要するに、ランダムウォーク理論は、人間に自由意志がほとんど存在しないとする遺伝的な決定論に似ているのである。これは哲学的な問題であり、この説に対する反論と再反論はこの世の終わりまで続くであろう。

事実は主体によって異なり、視点の差異によって異なる意味や現実が存在する。これは、二元論では捉えられず、相反することが同時に存在・実現する。つまり、渾然一体として一如という形を取っている。
以上に述べたようなことが、私の考える相場の性質である。

相場の攻略(プラス収支)は、頭の良い人がやっても1年はかかるであろう。まして、年収1億のトレーダーレベルになると、いわば、囲碁将棋でアマチュアトップ(または院生)の資質と自己研鑽が求められる。したがって、誰にでもできることではない。また、相場の数字やチャートや企業の決算資料を追うのがどうしても苦痛な人もいる。そういう人は、インデックス投資でOKであろう。

インデックス投資の本を熟読し、米国経済や全世界経済の永続的な繁栄に託すという理屈を納得したら、ひたすら積み立てて放っておくのがよい。難しい勉強をしなくてすむのがインデックス投資の特徴なので、あれこれと思い煩うのは本末転倒である。

いわば、それは修行と念仏の関係に似ている。インデックス投資は念仏であり、易行である。したがって、誰でも簡単に悟りを開くことができる。他方、アクティブ投資は密教や禅に似ている。難しい修行を長年にわたり続けないかぎり、悟りを開くことはできない。

私自身は、相場の勉強をするのが基本的に楽しいので、難しい勉強をやってみたいと思う立場であるが、これを社会全体へと一般化することは到底できないであろう。相場に興味を持ち、またその資質を育てられるのは、あくまでも少数派だからである。

投資家とトレーダーには、売買の手法の差異が存在し、どちらの立場(あるいはその中間)で書かれた本もある。

投資家は、決算書などの資料で企業価値を見極め、将来的に成長し、かつ相場的に安値で売られているなら、購入を決める。売買の時間軸は中長期である。他方、トレーダーは、企業活動の性質や価値は切り捨てて、チャートや板から値動きを読み、その変動から利ざやを抜こうとする。売買の時間軸は短期である。

ただ、相場の世界は、投資家・トレーダーいずれの立場で臨むにせよ、初心者狩りが基本である。理論と情報のそれぞれの面での差別化と優位性を持つのが強者であり、持たないのが弱者である。勝者がすべてを得るのが相場である。したがって、最小の損害で初心者のレベルから脱却するのが必須である。




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