その時僕は言ってやったんだ。

空飛ぶ観覧車の内側で。

書き出しというものは非常に難しく、最初の1行から書き始めるのは気恥しいものがある。
気恥しいので最初に特に意味の無い一文を書いているのだが、なんならそちらの方が恥ずかしいことになっている気がしないでもない。
しかしまぁTwitter歴も10年ほどになってくるとポエムなんてものは吐き出してなんぼのものである。心を強く持っていこう。

気恥しいといえば、私はよく過去に起こした若気の至り故の浅はかな言動や、取り返しのつかないような事を思い出してどうしようもなく叫びたくなってしまう事が多々ある。
私が一方的に気にしているような事から、とてつもなく宜しくないような事であったりして毎日反省を繰り返している。
毎日反省を繰り返しているのに日々同じ様な事をしては、こんなコト言うんじゃあなかった!誰か頼む!時間を戻してくれ!と懇願しながら床に就くのだが、悲しいかな、宇宙の真理として全世界に平等に時間は過ぎ去るものであるから、当たり前のように陽は昇り、今日が昨日になり、明日が今日になってしまうのである。

後悔というものはなんとも厄介なものであり、毎日電車で見る全然関わりのない女性に対して「やァ今日は髪を下ろしているんだネ、素敵じゃあないか」なんて声をかけてしまった日には、その時点で怪しいストーカー予備軍として認識され、次の日から彼女は車両を変え同僚や友達に「電車にやばい人がいてサ、なんかニヤニヤしながら話しかけてきたんだよヤバくない?」と話の種にされた挙句、駅で待っていたら後ろから「見て見てあの人」と指をさされながらひそひそ話をされてしまう。
こんな時に人というのは後悔するのである。
毎朝彼女のいない車内を見る度に悲しい気持ちに襲われ、仕事中もなぜあんな事を言ってしまったのかという事で頭がいっぱいになり、仕事が手につかず上司に怒られ減給された挙句同僚には見放されて、次第に居場所がなくなり、上司からクビを宣告される。自分の居場所はどこだとうわ言のように繰り返しながら酒に溺れ貯金は底をつき、また何か口走ってしまうのではないかという恐怖で人と話すのが怖くなり、昼間は寝て夜は寝るまで酒を飲みながら徘徊をして、オヤジ狩りにあった後、満天の星空を見上げていて清々しい気持ちになったと思ったら雨が降ってきて、家に帰ったら水道は止まりいっそ自殺でもしてやろうかとガスの元栓を全開にして酒を浴びるほど飲んで倒れて気がつくと昼間で、二日酔いの最悪な気分のままよく考えたらガスも止まっていた事に気づくのである。

口は災いの元。身に染みているのだが、人の口に戸は立てられぬのである。勢いで人と話すとろくなことがないのだ。しかし頭で言葉を厳選しているうちに会話はどんどん進んでいき、全く別の話題になっていることに気づかず一人素っ頓狂な事を口にしてしまうのだ。
その素っ頓狂な事も考え抜いた結果絞り出した渾身の出来なものだから、口にしないのも憚られてついつい言いたくなってしまうのである。
たまにドンピシャなタイミングで思いつく事があり、しかし大きな声で言うのは流石にちょっとな、と思いボソッと呟いたら近くにいる声のでかい奴に聞かれでかい声で同じことを言われてしまい一同、大爆笑。なんてこともざらにある。
世の中瞬発力と無意味な自信と腕力である。無理矢理、俺ァ面白いことを言ったんだぞ!という空気にしてしまえば、なんだかみんなよくわかんないままノリと勢いで笑ってくれるが、本当によくわかってない人達はなんか笑いながら後々裏の方で、あれ、どういうこと?とヒソヒソ話し始めてしまう。段落の最初と言っていることが変わっているが、どうしても瞬発力と腕力と無意味な自信がある私が想像出来ないためである。
こんな事が頻発する世の中、飲みの席で発言する際は、ヤァヤァ我こそは!陰気な根暗野郎である!これから、渾身の面白ギャグを披露してしんぜよう!皆の者心して聞くが良いィ! などと前置きした方がこの後つまらない事を言ってもなんだか許してくれそうな気がする。
みんなが笑ってくれる未来よりも駄々滑りする未来の方が想像できてしまった。例え笑顔があっても哀れみと憐憫に溢れているであろう。

そうして帰路につき、駄々滑りした事を引き摺りながら枕を濡らし寝るのである。
もう二度とあんな事はしない、と、心に誓い神だか仏だかにやり直させてくれと懇願する。後日、再び似たような状況になったら今度こそ汚名返上名誉挽回と腕まくりしながら同じ様な事をしてしまうのであった。

人間、後悔することよりも学ぶ事の方が重要なのである。

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