2019.09.30 徳島と琴電
この前日、我々は確かに備後落合にいた。19時くらいまではいた。翌日の予定も立てぬまま、途中合流の友人と待ち合わせた場所は倉敷。日付けも変わろうかというタイミングで友人は確かにこう言った……「徳島は良いぞ」。こうして期せずして我々は瀬戸大橋を渡ることになったのである。
朝6時半。気づけば徳島市を見下ろす眉山の展望台に立っていた。ヌケは△だが、徳島の街は逆光の朝日に包まれていた。徳島県庁の脇を通る線路は牟岐線。ほどなく爽やかな四国色のキハ40が通り過ぎた。
私にとってJR四国のメインディッシュはキハ185系である。まずは徳島線の特急剣山を狙うため吉野川の上流へ。手頃な展望台に三脚を据えた。いかにも郊外という光景の中待っていると、青帯の短編成がファインダーに飛び込んできた。
香川・徳島県境の大坂峠。香川方面を見下ろす大パノラマが広がる。高徳線の特急うずしおにも1往復だけキハ185系が充当されている。四国随一のロケーションに役者が揃うならば行かない理由はない。気持ちに応えるかのように空は晴れ、ピカイチのヌケの幸運をもたらしてくれた。
そのまま高松の市街に来た。京急や京王を退いた古老が今なお活躍する琴電を切り取ってみることにした。市内中心部の片原町駅周辺は昔からの商店街。アーケードがどこか懐かしい雰囲気を醸し出し、その中心に踏切がある。関東で親しまれた車両は、高松の生活にも馴染んでいるように感じた。
17時半を過ぎると、夕方ラッシュの時間帯だ。片原町駅は琴平線だけでなく長尾線も乗り入れ、2〜3分に1本のペースで列車が来る高密度区間になる。当然、利用客がいるからこその高密度運転である。ひっきりなしに発着する列車には、家路を急ぐ人が次々と乗り込んでいった。地方都市高松の夕暮れである。