風に恋う帯無し

風に恋う|第1章|10

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「いくらなんでも酷すぎるだろ、あの朝練」

 弁当を広げる基の前の席に座って、コンビニのメンチカツサンドを囓りながら、堂林は同じことばかりを繰り返していた。

「瑛太郎先生も、昔みたいにガツンとビシッとやればいいんだよ。正直、それを期待してたのにさ」

 不破先生ではなく瑛太郎先生という呼び方を広めたのは、三好先生だ。

「コーチになったばかりだから、いきなりってわけにもいかないんじゃないかな……」

 自分の言葉尻がどんどん弱々しくなっていくのは、堂林と同じことを思っているからだろう。

 瑛太郎がコーチに就任し、一体どんな指導をされるのか、恐れおののきながらも楽しみにしていた。しかし五月に入っても瑛太郎は「今まで通り練習して」と指示を出すだけで、合奏では今年のコンクールの課題曲をひたすらさらっている。あまりにも普通だった。

 基が弁当箱を空にして、堂林がコンビニで買ったパンを食べ終えた頃、クラスメイトの一人が駆け寄ってきて基と堂林を呼んだ。

「なんか、先生みたいな人が呼んでるけど」

 教室の出入り口を確認するより早く、二人は立ち上がって教室を飛び出した。




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小説家。青春小説やスポーツ小説をよく書きます。2015年松本清張賞・小学館文庫小説賞受賞。『タスキメシ』『拝啓、本が売れません』『風に恋う』『競歩王』など。詳しくは公式サイトへ▶http://nukaga-mio.work/

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『風に恋う』試し読み+番外編など
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『風に恋う』(文藝春秋より発売中)の試し読みと番外編+αをまとめたマガジンです。番外編は作者が自由気ままに書いていますが、出版社を通していないので誤字脱字など未校正の部分がありますことをご了承ください。

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