額賀 澪 NUKAGA Mio

小説家。最新刊『風に恋う』発売中。2015年松本清張賞・小学館文庫小説賞受賞。既刊『屋上のウインドノーツ』『ヒトリコ』『タスキメシ』『さよならクリームソーダ』『拝啓、本が売れません』など。詳しくは>>>http://nukaga-mio.work/

競歩王|04|直木賞の日

1|アリア  綺麗なカバーの本になった。寒々しい青空の写真と、本のタイトルと、榛名忍の名前。巻かれた帯はざらついた白色。「新進気鋭の作者が描く、青春の残響」なん...

競歩王|03|新年の願い事

1|初詣  お賽銭を投げてから、何を願おうか悩んでしまった。両手を合わせ、とりあえず「もっと楽しく小説が書きたいです」と願った。 「明治神宮って、おみくじに吉と...

競歩王|02|孤独のウォーカー

1|新聞部  グラウンドなんて大学一年の体育の授業で使って以来だ。単位を落としたわけでもないのに、大学三年の秋学期になって再びここに来ることになるとは。  十月...

競歩王|01|オリンピック号泣男

1|リオ五輪  浸るのとは違う。沈み込むのとも、違う。  強いて言うなら、海に突き落とされたみたいなものだ。懸命に水を搔いて、海面を目指してもがく。助けを求める...

競歩王|プロローグ

酷く矛盾した競技だった。  誰よりも速く、速く前へ進みたい。  一番にゴールテープを切りたい。  でも、走ってはいけない。  肩で風を切って、  日に焼けた細い体...

おいたんの願い事

「五円玉あるか?」  拝殿から歪に伸びる参拝の列に並びながら、おいたんがそう聞いてくる。  私が答えるより早く、おいたんは「ほら」と五円玉を差し出してきた。真新...