風に恋う帯無し

風に恋う|プロローグ

指揮棒が構えられる瞬間は、いつも、体がぶるりと震えた。

これから始まる十二分間の幸せな時間を前にした、武者震いなのだと思う。

指揮棒が振り下ろされ、奏者が一斉に息を吸う。
ホールを鋭い風が吹き抜ける。
全身で、音楽の神様から吹く風を受けている。
こういう幸せが、これからの人生の中で何度も感じられたらいい。

十八歳の不破瑛太郎(ふわ・えいたろう)は、そう願っていた。



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小説家。青春小説やスポーツ小説をよく書きます。2015年松本清張賞・小学館文庫小説賞受賞。『タスキメシ』『拝啓、本が売れません』『風に恋う』『競歩王』など。詳しくは公式サイトへ▶http://nukaga-mio.work/