Case11

私のお見合い史上最もインパクトのあるお見合いかもしれない。

どこからどこまで書こうか。

お見合いのメールといえば、事務的でテンプレ的な文面が多い中、なんというか血の通った文面でメールが来たのは強く記憶に残っている。


でも…

数少ない学連時代の友人からは全力で止められた。

退部してから連絡取ってなかった先輩たちからもたくさん連絡がきた。



「この人はパートナーに暴力を振るう人なんだ」と頭の片隅に置きながら踊ることは後にも先にもこの人としかなかった。


メールの文面とは一変して、実際に会って踊ってみると何か殺気を感じる…気がした。

先入観が邪魔をしているのかもしれない。

とにかく怖かった。


けれど、部活を辞めて半年が過ぎているのに一向にリーダーが決まらない状況に嫌気がさして焦っていた。

こんな人とじゃないと落ちぶれの私は組めないのかもしれない。

ほんとに焦っていた。


恐怖を拭うため、味方のいないこの状況で自分の身を最低限守るため、ボクシングの体験へ。

今となってはお酒の席のネタになる笑い話だけど、当時は本当に必死だった。

組むためなら手段を選ばなかった。


やっと掴んだカップルレッスンの機会。

なんとあの王者のレッスンだった。

しかしリーダーに提示されたのは

「レッスン受けるのに恥ずかしくない状態になること」

レッスンを受けさせてもらうための練習が始まった。


プロのすごい先生に見てもらうんだからそういうものなのかなと当時の私は素直に受け止めていた。

今となってはそんなのおかしいとわかる。

課題を見つけるためならともかく、先生によく見せるために練習するなんて…


でも。

怖いものは怖かった。

自分の恐怖と犠牲の上に趣味が成り立つわけがない。


ダンスがつづけられなくなった。


離島に逃げた。

ダンスとは無縁の生活を送ることに決めた。

忘れたかった。

強くなりたかった。


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