[Marvel SNAP]セラコントロールデッキを自作シミュレータを使って分析

Marvel SNAPの最近の環境は、新シーズン「いざ、量子世界へ」の開始による、新カード「モードック」の追加や、これまで環境を席巻してきた「ザブー」、「シルバーサーファー」の調整により、メタが大きく変動している。メタの中心は、カード入手が容易になったシュリ系のデッキ、新カード「モードック」を採用した廃棄シナジーのデッキあたりだろうか。一方で、これらの押し付ける動きの強いデッキへのカウンターとして、シャンチーやエンチャントレスなどのテックカードを多く採用したセラコントロールが存在感を増してきている。今回は自作シミュレータを使ってセラコントロールの分析を行ってみたい。

使用デッキ

ダークホークセットをセラコントロールに持ち込んでみた

今回の分析に用いるのは、上のデッキ。最近自分が調整しているデッキで、一般的なセラコントロールにコーグ・ザブー・ロックスライド・ダークホークのダークホーク4点セットを持ち込んでみた。他の採用カードも、比較的自由枠が多いので好みが出ている。カウンターカードの採用が多く、パワー不足に陥りがちなため、コスト比パワーの高いリザード・ミステリオ・アンジェラ・ポラリス・グルートを組み込んだ。前記事の検証の通り、スコーピオンを2コストのどれかと差し替えた方が、相対的に強くなるかもしれない。3コストは、マキシマスが入れたいのだけど、ダークホークとアンチシナジーなので抜けて代わりにグルートを採用。ビショップの方が一般的だと思うが、後半引いた場合に弱いので、いつでも使いやすいグルートにしてみた。

シミュレータの分析条件

シミュレータの詳細については、本稿には記載しないので、興味のある方は前記事を遡って欲しい。今回のシミュレータのアルゴリズムや、カードの挙動の実装は以下の通り。

  • リザードの永続効果は考慮しない

  • アンジェラは、カード能力をそのまま実装するのが面倒だったので、3ターン目までにプレイした場合パワー6、4ターン・5ターンの場合パワー4、6ターン目の場合パワー2のカードとして取り扱う。

  • ダークホークは4コストパワー7のカードとして取り扱い、コーグ・ロックスライドを出すと、それぞれパワー+2、+4の効果を与える。

  • グルートは、1/2の確率でパワー6にする。

  • ロケーションは全て廃墟

  • シミュレータのアルゴリズムは、2ターン目はザブーを最優先プレイ、5ターン目はセラを最優先プレイ。それ以外の場合は、そのターンにプレイできるパワーの合計値が最大となるように、空いているロケーションにプレイする。

シミュレーション結果

例によって1万回プレイした結果の、全ロケ―ションの合計パワーの頻度分布を示す。


最頻値が真ん中あたりにくるキレイな山形になっている。パワーの面でダークホークにやや依存している面はあるが、特定カードへの依存度の低い安定したデッキと言える。参考までに前回分析したセラサーファーデッキの頻度分布も示す。

セラサーファーデッキは、シルバーサーファーへの依存度が極端に高いため、頻度分布の山が2つに分かれている。セラコントロールの場合には、シルバーサーファーほど依存しているカードがないため、より安定感があると言える。ちなみに2つのデッキの平均合計パワーで比べると、セラコントロールが36.3に対して、セラサーファーがナーフ後でも38.1ほどあるので、回ったときのパワーでは劣る。

もちろん、これはセラコントロールの方が弱いという意味ではなく、デッキの性質の違いによるものだ。セラサーファーは、3コストカードを並べて、シルバーサーファーで一気にバフする押し付ける動きが強いデッキだが、セラコントロールは、シャンチーかエンチャントレスで相手のカードをカウンターして有利を取るのが大きな勝ち筋のカウンターデッキなので、単に平均パワーで比べるとセラコントロールの方が低い結果となっている。

考察

もう少しデータを深く見てみよう。セラコントロールの頻度分布をセラ・ザブーがプレイできたとき、できないときで分けて内訳を示したのが下図だ。

ここから面白い事実が読み取れる。カードのコストを下げるキーカードであるはずのセラとザブーであるが、これらのカードがプレイできているかどうかは、合計パワーを押し上げる効果はほとんど見られないということだ。

これはどういうことだろうか?答えはデッキの理想的な動きを考えると見えてくる。↓はセラとザブーをプレイできたときの理想的な動きだ。

ザブーとセラの両方が出たことで4コストカードが2コスト下がり、6ターン目に4コストカード3枚をプレイできるが、シャンチー・エンチャントレスはカウンターカードであるためパワーが低く、グルートをプレイした方が合計パワーを高くできる。では、セラとザブーが出せないときの理想的な動きはどうだろうか?

ザブーが出せない代わりにアンジェラが早いターンに着地するので、最大パワーまで育成が可能であり、合計パワーはセラ・ザブーが出た場合と変わらない出力が出ている。

では、パワーを押し上げる恩恵がないなら、セラ・ザブーは何のために採用されるのか?セラコントロールデッキにおいて、これらのコスト削減カードの恩恵は、自分の強い動きをゲーム後半ターンに遅らせ、最終ターンに柔軟な動きを可能にすることだ。このデッキのフィニッシャーのダークホーク、カウンターカードのシャンチー、エンチャントレスは全て4コスト。ザブー・セラがなくてもターンをまたいで場に出すことはできる。しかし、シャンチーやエンチャントレスのカウンターを決めたいのは6ターン目であることが多い。またフィニッシャーのダークホークを早いターンに場に出した場合逆にカウンターを食らうリスクが高まり、後半に出せるほどロケーション確保できる可能性が高まる。ザブーかセラが場に出ていれば、6ターン目にカウンターとフィニッシャを同時に場に出すことができる。この柔軟さこそが、セラコントロールの真骨頂だ。

まとめ

本稿では、セラコントロールデッキの強さを自作シミュレータを使って分析した。わかったことは以下の通り

  • セラコントロールは特定カードへの依存度が低いため、出せるパワーの出力は低いが安定している。

  • セラコントロールではパワーの低いカウンターカードの採用が多いため、ザブー・セラによるコスト削減は、パワー出力を底上げする効果はほとんどない。

  • セラコントロールにおけるザブー・セラのコスト削減の恩恵は、後半ターン(特に6ターン目)における動きを柔軟にすることにあり、フィニッシャーとカウンターやカウンター2枚を同ターンにプレイできることで、2ロケーション確保の可能性を高められる。

最終ターンのシャン・チー+ダークホークの動きは本当に強い

コスト削減効果はザブー・セラ両方が場に出ていることは必須ではなく、むしろやや過剰ですらある(手札リソースが尽きる場合がある)。そのため、ザブー・セラどちらか単体の採用でもデッキとしては成立するが、2枚採用により場に出せる確率が高められるので安定性はこの構成の方がより高い。ザブー・セラ両方が場に出た場合により出力が出せるように、4コストを増やしたり手札リソースを生み出すカード採用なども検討余地はあり、チューニングはまだ楽しめそうだ。また似たようなコスト削減効果を持つクインジェットをセラの代わりに採用し、センチネルやムーンガールなど手札生成系のカードセットを採用したデッキも強い。こうしたアーキタイプとの比較もデッキ構築の研究としては面白いかもしれない。



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