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伊達巻と雑煮が食べたくなった

 いい年してお正月の食べ物を自分で用意したことがなかった。実家にいるときは親が用意してくれるものを食べ、帰省しないときは年越しそばと餅を食べるくらいでおせち料理はいっさい食べなかった。今年もそのつもりだったのに、年末、きゅうに伊達巻と雑煮が食べたくなった。

 12月29日、スーパーでお正月の食べ物が並ぶ売り場を見て、初めてそれらの金額を知った。おめでたいものだしそこそこの値段は覚悟していたけどなかなかの衝撃だった。自分で用意しないからそんなことも知らなかった。お目当ての伊達巻と雑煮用のかまぼこ(普段よりもだいぶ高かった。そういえばツイッターでそんな情報を見かけた気がする。次からはお正月価格になる前に入手しよう)を買って帰り、冷蔵庫にしまいながら、伊達巻食べたい欲に襲われた。お正月以外伊達巻のことなんて考えもしないのに、目の前にあるとあの独特の甘みを思い出して無性に食べたくなる。そうか、食べたくなるのか。知らなかった。どうせ一人なんだし、と思ったりもしつつギリギリのところで耐えて冷蔵庫のドアを閉めた。耐える必要があったのかは知らん。

 年明けのことばかり考えてたら年越しそばのことを忘れていて、大みそかにはうどんを食べた。ジャニーズカウントダウンで年を越して、4時ごろまでバラエティ番組を堪能して、寝て、昼ごろにのそのそとベッドから出てキッチンに向かった。事前にブックマークしていた雑煮のつくり方のページを見ながら人生初の雑煮づくり。白だしのおかげでとても簡単につくれた。三つ葉を買い忘れていたので慌ててほうれん草をゆでてそれっぽく添えた。伊達巻を切ってかまぼこと盛り付けて、前日につくっておいた筑前煮をよそって雑煮とともにテーブルに並べたら、なんとなくお正月っぽさが出た気がした。ふだん撮らない食卓の写真を撮って、まっさきに伊達巻に箸をつけた。おいしい! 伊達巻おいしい! ほんのり甘い! わたしが食べたかったのこれだ! 冷蔵庫の前でこらえてよかった! このおいしさを独り占めできる贅沢を噛みしめてから雑煮へ。母の味とは違うけれどこれはこれでおいしい。ほどよくふやけた餅も最高。夜もまったく同じメニューを食べた。最高の元日だった。

 書いてたらまた伊達巻と雑煮が食べたくなってきた。伊達巻ってお正月以外も売ってるのかな。自分でもつくれるのかな。調べよ。そして食べよ。