Okar Mochi

 昨日の朝、自転車のかごにおかもちを入れて走っている人とすれ違った。Tシャツにチノパンのいたってシンプルな格好で、ママチャリのかごにおかもちを入れていた。朝8時、住宅街の一角。出前にしてはユニフォーム的なものは何も着ていなかったし、そもそも朝8時におかもちで届けるようなものを出前しているとも考えにくい。
 となると、だ。もしかしておかもちをビジネスバッグにしているのではないだろうか。おかもちは基本的に料理や食器を運ぶものだけどビジネス使用は禁止されていない、と思う。いや待てよ、あの人が仕事に向かっているとは限らない。学生だとしたら筆記用具を入れているかもしれない。お出かけだとしたら財布やハンカチ、折りたたみ傘が入っている可能性もある。なかなかの容量だろうから着替えだって入れられるかもしれない。お弁当なんて入れた日には安定感抜群だ。ランチバスケットの代わりにしたら自分で持ってきたのに出前を取ったみたいな不思議な雰囲気出せておもしろいかもしれない。「おかもち」の語源の一つに「岡にある家に持っていくため」というものがあるらしいから、口笛吹きつつ丘を越えるピクニックにもってこいだ。汁物も安定して運べるからピクニックにラーメンなんてこともできるかもしれない。と思ったら形は違えどすでにキャンプでおかもちが使用されているらしい。工具を持ち歩くトレイもおかもちって言うのだとか。おかもちの世界、広い。
 持ち歩かないときは食器の収納やら調味料棚にするやら、下手するとたたんだTシャツをしまうこともできるかもしれない。シルバニアファミリーの家にしたらコンクリート打ちっぱなしのマンションっぽい雰囲気出そう。
 待って、おかもち、無限じゃん。
 あの人はどんな用途でおかもちを持っていたのだろう。楽しそうに自転車を漕いでいたあの人ともう一度すれ違ってみたい。もちろん本人に聞くことはできないけど新たなヒントが得られるかもしれない。