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虎に翼 第5話

泣いた。
泣いたよ。感想としては、正直これに尽きる。しかし自分の涙の理由を、言葉にしてみよう。

第4話の感想で予想したように、やはり、はるさん(石田ゆり子)はトラコ(伊藤沙莉)を理解していないから進学に反対し、結婚させようとしているわけではないのだ。優秀だと知っている、努力することもわかっている。でもこの世の中では、頭がよいことは女の幸せに直結しない。

「頭の良い女が確実に幸せになるためには、頭の悪いふりをするしかないの」

ああ。紫式部が日記に「漢字の一という文字さえ書けないふりをする、学識を他人には見せない」と決意してから900年以上経っても、女は難しいことはわかりませんと、スンとしていねばならない。ここでまず、長年女が置かれてきた立場が情けなくて泣いた。その立場をひっくり返そうとしなかったわけではない、恐らく多くの女が戦ってきて、そして返り討ちに遭い、無数の屍が折り重なってここに至っている。その戦いを思い、また泣く。

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「お母さんみたいになりたくないってこと?私のこと、そんな風に見てたの?」
使い古された台詞は、15分間の中で鮮やかにひっくり返される。
トラコの「私の母はとても優秀ですが……?」という台詞によって。
母であるはるさんが娘の優秀さを認めていたのと同様、娘のトラコも母を認めている。ただ、お互いの求める人生のかたちが違うだけ。

「女の可能性の芽を摘んできたのはどこの誰、男たちでしょう!?」
「自分にその責任はないと?それならそうやって無責任に、娘の可能性を潰さないでちょうだい」
桂場(松山ケンイチ)への、はるさんの啖呵に泣いた。そうだそうだ、したり顔で言わないでくれ。時期尚早とはなんだ、その時期とは一体いつ巡ってくるのだ。トラコがじっと待っていれば、誰かが扉を開けてくれるとでもいうのか。
矢面に立たされた桂場には気の毒だが、言わせてくれ。邪魔をするなと。

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胸を熱くする展開の中に、餡団子を食べたいが我慢せざるをえない桂場や、怒りのあまり良妻賢母の仮面をかなぐり捨てて「若造がっ!」と口走るはるさんなど、笑いを差し挟んで軽やかさを加えてくれている。
本当に巧い。

六法全書は地獄への切符。どれだけ血を流そうと進むのだというトラコの強い眼差しに拍手し泣いた。あの場面で橋の上にいた女性たちは、今週各話のあちらこちらに存在した女の人たちだ。描かれずとも、彼女たちの人生も拓かれますように。
素晴らしいスタートの一週間だった。トラコ。あなたと共に行くよ。

(つづく)




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