見出し画像

某掲示板の投稿(2012/11/28)

この記事はトロオドン怪文書アドベントカレンダー Advent Calendar 2023の12/14分に寄稿したものです。
このお話はフィクションです。

トロオドン怪文書アドベントカレンダー Advent Calendar 2023 - ( https://adventar.org/calendars/9036?s=09 )


378 名前 : 匿名がお送りします@転載禁止
2012/11/28 02:47:22.56 ID:*******

これは私が大学生の時に体験した話です。

私は物理学を専攻していた根っからの理系ではあったのですが、それと同時に民俗学のようなものにも興味がありました。その地域の土着の信仰やはたまた妖怪や怪異のような話、広く言えばオカルトに近いのですが、学問としてそういったものを見ているのが好きでした。
例えば「鬼」というと、私たち日本人は真っ赤な体躯の大男で、頭には角、トラ柄の腰布を巻いて、手には金棒を持っている、なんて姿を想像してしまいますが、この姿は比較的近年のものです。鬼門と呼ばれる方角、つまり丑と寅の方角に合わせて牛の角とトラ柄の腰布を巻いているイメージ像が絵にされて広まりました。それ以前は実に様々な鬼が口伝や書物で伝わっています。また、この「鬼」という漢字は元々「死者の魂」を表す言葉だったり、神様として信仰の対象となっている鬼がいたり、奈良の方には鬼の末裔とされている方が実在していたり…と、掘り下げると面白いものです。
世の中の理を数式で表せることと、なんなのか全くわからない妖怪の類のものを当時の風俗から想像して一つの答えを出す、というところに共通点のようなものがあったのかもしれません。

普段は図書館に行ってその地域の史料を読んだり、博物館や史料館に足を運んで楽しんでいました。また、書籍に出てくるお寺や神社、その話の舞台となった場所に実際に行ってみたり、フィールドワークというのでしょうか、そんなこともしていました。


385 名前 : 匿名がお送りします@転載禁止
2012/11/28 02:59:23.08 ID:*******

前々から聞き及んではいたものの、大学生の長期休暇はこんなにも長いんだというのを1年生の頃に身をもって知りました。3年生の先輩から2年までしか遊べないぞなんて聞かされていたので、2年生の夏休みに少し長めのフィールドワークに行くことにしました。翌年の夏に向けて必死にバイトをしてお金を貯め、その間にどこへ遠征に向かうかも決めなければなりませんでした。

この調子だと結構なお金が貯まるなぁなんて考えていた頃、ようやく場所が決まりました。東海地方のある地域の言い伝えが気になって、そこに2週間ほど滞在することに決めました。

その言い伝えというのは、昔、この土地で信仰されていた鬼について。先述の通り「鬼」というのはその扱いが多岐に渡ります。この地域の「鬼」はどうやら同じ鬼を指して時代により神様であったり、妖怪であったり、はたまた化け物であったりと、コロコロ変わってしまうのです。また、名前もあるにはあるのですが、私が見つけたら1冊の文献では名前と思われる個所が全て黒塗りで塗りつぶされていました。
たくさんある話の一つの話をご紹介します。昔その地が日照りによる飢饉に見舞われた際、その「鬼」が助けてくれたというものです。ある村の若い男がなんとか食べ物を探そうと山に入っていくと、やせ細った野犬に遭遇したそうです。背に腹はかえられないと、男はその野犬を手にかけました。血抜きのあと、捌いてみると、腹の中にその「鬼」がうずくまっていました。鬼の見た目は頭に白い布を巻き、髭を蓄えた、小さなおじさんのような見た目だったそうです。鬼は野犬であったものを身の肥えたイノシシへと変え、痩せた大地を肥沃なそれに変えていったそうです。その話では神様とされていました。その他にもその見た目の鬼が出てくる話がいくつもあります。
もう一つ不思議なこととして、この伝承されているいくつかの話は時代がバラバラであるということです。最も古いもので崇神天皇の時代、つまり紀元前140年頃、最も新しい伝承では平安末期の頃があります。ざっくりですが1000年近いのです。1000年もの間、ただの言い伝えの類で同じ見た目の鬼が登場し続けています。それもこの地域でのみです。通常であればその土地の風俗や慣習などで少しずつ変わっていくものですが、全く変わらず同じものが出ているのです。


423 名前 : 匿名がお送りします@転載禁止
2012/11/28 03:14:12.11 ID:*******

迎えた2年生の夏休み、期待に胸を膨らませ、私はその地域へやってきました。早速、近くの民俗博物館や歴史史料館、果ては近くの図書館などを回り、史料を読み漁りました。
しかし、1日、2日、3日と時間は過ぎていき、とうとう1週間、まったく何の収穫もなく折り返しのところまで来てしまいました。史料や博物館で見つけたものは私が古本屋で見つけたあの文献に書かれていることばかりで、目新しいものは見つかりませんでした。そしてフィールドワークに移行しようにも時代が古すぎることで地名が現代とかなり異なっており、土地勘がないことも相まって、どこを当たればよいのか見当もつきませんでした。おおよその場所までは来ていたとは思いますが、それでも具体的なランドマークなどが示されておらず、かなり難しいものに手を出してしまったと後悔すら覚えていました。

バイトで思った以上にお金が貯まったこと、そして学生の割引が使えるというので、多少奮発して、老舗の旅館に泊まっていました。その旅館は少しだけ山奥にあって、街には近いものの、周囲を山や森に囲まれていました。温泉に浸かっている時のことでした。何やら山の方から聞こえてきました。女性の低い声のような、子供が騒いでいるかのような、少し高い、でも明らかに人の声でした。その時はその声が何なのかわからず、恐怖心もあり逃げるように部屋に戻りました。部屋に戻ってからも、時折さっきの声が聞こえているような気がしてなりませんでした。
ここで思い出しました。「鬼」は神様でもあり、妖怪でもあり、化け物でもある。もしかしたら。1週間何も手掛かりが掴めていなかった私はおかしくなっていたのかもしれません。その声の正体を探るべく、山の中へ向かうことにしました。


489 名前 : 匿名がお送りします@転載禁止
2012/11/28 03:29:41.23 ID:*******

インターネットでは「ヤマノケ」なんて怖い話がありますが、山というものは本当に怖いところです。山には女性の神様がいて、女の人に強い嫉妬心があるとか、山には霊魂が集まるとか、また、山岳信仰というものが根付いていた地域もあるくらいで、とにかく山というものは恐ろしいところです。そして、それが夜になった途端、昼とは全く違う表情を見せます。
趣味で勝手に調べたものですが、頭の中にはその自分で調べた山に関する逸話や怖い話がグルグルとめぐっていて、今にも吐きそうなほど怖かったのを覚えています。
声のする方へ、恐怖心と息を殺しながら歩を進めました。ゆるやかな坂はいつのまにか未舗装の道に変わっていました。いよいよ引き返せないような気がしました。これを行ったら帰ってこれないようなそんな感覚が襲ってきました。

「なにやっとんねんボケェェイ!!!!」

いきなり背後から両肩をつかまれたと思うと、あの声で叫ばれました。人間、本当に、心の底から驚いたとき、まったく声が出ないものなんだとどうでもいいことを思いながら、ゆっくりと振り返ると、頭に白いキャップをかぶり、チョビ髭を生やした中肉中背の男性が全裸でそこに立っていました。

「おい!!!お前ここでなんしてんねん!!!」

わけもわからず何も返せずにいると、その男性は今は何年だと聞いてきました。2008年だと伝えると嬉々とした顔をして山の方へ走っていきました。彼が何なのか全くわかりませんでしたが、彼を逃してはいけないと思い、気が付いたら後を追っていました。

「うぉぉぉおおおおお!!!なんでや!!!!お前か!!!!お前がやったんか!!!ようやった!!!!!よっしゃぁぁぁぁぁああ!!!!」


601 名前 : 匿名がお送りします@転載禁止
2012/11/28 03:40:00.52 ID:*******

彼によると祠が壊れているとのことでした。昔この地域の人の手によって作られたものだそうです。今から1000年ほど前のことだと言います。頭に白い布、髭を蓄えた男性…もしかしたらと思い、「鬼」の話のことを訊ねました。

「いやそれ俺やんけ!!誰やねん勝手に言いふらしてんの。え?お前もしかして俺探しに来たん?暇すぎるやろ!!」

興奮しました。もうこれが嘘だと言われても、ドッキリだと言われても、目の前の彼を信じることにしました。どうやら彼は「とろおどん」というそうで、数々の逸話はディティールこそ異なるが、ほぼ全て本当のことなのだそうです。

「どうして犬をイノシシに変えたんですか?」

「そんなもんお前、犬よりイノシシの方が美味いからやんけ。そんなんもわからんのか、お前アホやろ。」

「どうして川が氾濫したとき、橋の橋脚1本1本に麩菓子をくくりつけたんですか?」

「あーあれな。橋が流される思て、ほな箸浮かしたええやんて閃いてん。俺めっちゃ賢いやろ。でもなぁ〜〜〜、あかんかってん。ぜんっっっっぶベッチャベチャなったわ。溶けてんなぁ、たぶん。ペットボトルとかやったらなんとかなってんやろなぁ。大五郎とかの。あるやん、大五郎。」

「どうして祠が壊されたら出てこれたんですか?」

「昔なぁ、村にちょっと歳の離れた姉妹が住んどってん。そこのお姉ちゃんが妹と遊んでくれぇ〜言うから、SPY FAMILYごっこしててんか。その妹がアーニャで、俺がロイドの役でさ、おままごとみたいなんしててん。ほんで、夕飯のくだりで、ご飯の量増やしてほしかって、『父も増してくれ〜』って言うたらさ、ちょうどお姉ちゃん帰ってきて、なんでか知らんめっちゃキレ出して、挙句お役人まで出てきよって、ほんで気が付いたらあそこに放り込まれて閉じ込められててん。そんなんロイドの口調とか知らんやん?できる?なぁ。ロイドフォージャーできる?できひんやん。そんな怒らんでよくない?」


620 名前 : 匿名がお送りします@転載禁止
2012/11/28 03:53:32.06 ID:*******

お姉ちゃんがキレたのは絶対ロイドができなかったからではなく聞き間違いが原因だと思いますが、なんだか可哀想なので黙っていました。
どうして神様であり、妖怪であり、化け物なのか、数時間ではありますが、彼と話してわかりました。彼は別に善意を持って人に施しをしているわけではなく、気まぐれに、言うなれば人として生きているだけでした。なぜそんなに長寿で、そして不思議な力を持ち合わせているのかを訊ねても一言「なんでやろなぁ」とアリさんマークの赤井さんのような返事で返されてしまいました。
ちなみに、その役人の服装を教えてもらいましたが、おそらく陰陽師に封印されたのだと思います。平安の頃、陰陽師は現代で言う国家公務員のような存在で、占いにより国の行く末を決める重要なお役人だったそうです。陰陽師に封印できるということはやはり妖(あやかし)の類であることは間違いなさそうでした。

「俺もうそろそろ行くわ」

一通り話した後、そう言うと彼は山を降りていきました。まるでアニメのような体験をしてしまった、そう思いました。その夜は興奮して寝付けませんでした。
朝食の際にテレビを見ていると全裸の中年男性が捕まるといったニュースが流れてきましたが、その男性が捕まった直後に忽然と姿を消したと報じられていて、きっと何があってもあぁやって逃げていくんだろうなと思いました。今彼がどこで何をしているのかは想像もつきません。

わからないことを数式や一つの答えで表すことが好きだった自分が出会った正解は、思いもしなかった不可解でした。何かに答えを出さない方がファンタジーをファンタジーのままで置いておける幸せってものもあるんだなという勉強になりました。

以上が私が体験したお話です。駄文・長文失礼しました。


623 名前 : 匿名がお送りします@転載禁止
2012/11/28 03:55:28.32 ID:*******

>>620 嘘乙


626 名前 : 匿名がお送りします@転載禁止
2012/11/28 03:56:10.04 ID:*******

>>620 ワクワクした気持ち返せ


631 名前 : 匿名がお送りします@転載禁止
2012/11/28 03:58:41.33 ID:*******

>>620 お前こんな夜中に嘘までついて注目浴びたいんけボケ睡眠時間返せやクソが



〜 fin 〜

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?