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楽器市場についての考察と、これからやりたいこと

みなさんは、日本の楽器の市場規模や楽器演奏者の人口についてご存知でしょうか。

たぶん、「そもそも興味がない」というかたのほうが多いと思いますが、私はこれまでの自分の仕事の関係上、何度か調べたことがあるので、今後の仕事のためにも再度おさらいしてみたいと思います。

まずはこちらのグラフをご覧ください。総務省統計局のデータを元にグラフを作成してみました。

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楽器演奏者の年齢別推移

簡単にグラフの見方を説明いたします。

まず、1986年と1991年は10歳~14歳のデータがなく、全体が少なく見えています。単位は下記のとおりです。

・縦軸:人口(千人) → 一番下の線で200万人ということになります。
・横軸:西暦(1986年から5年間隔)

また、小中学校の授業での楽器演奏は含まれていない想定です。部活動での楽器演奏は含まれているかもしれません(すみません、きちんと調べられていませんが、総務省のHPには趣味として楽器を演奏している人、というようなことが書いてあるのでこんな感じかなと)。

棒グラフの色(下から順)
10~14歳
15~19歳
20~24歳
25~29歳
30~39歳
40~49歳
50~59歳
60~64歳
65~69歳
70歳以上

1986年と1991年の10~14歳でも実際は他の年と同程度の楽器演奏者がいると想定すると、多少の凸凹はあるものの1986年から2016年までで、日本で楽器を演奏する人の数は1100万人~1200万人程度の範囲でそれほど変化していないことが分かります。

また、20~30歳くらいまでと、50歳以上の年齢層は他の年齢層と比べ、少し少なく見えます。勝手な推測ですが、20~30歳は仕事をはじめたばかりで、あまり生活に余裕がないのかもしれません。

20歳以下は習い事などで楽器を演奏する人の割合が多いため、少子化でありながらも楽器演奏者の人数が多いものと思われます。近年では、子ども1人あたりにかけるお金が増えていることも要因のひとつかもしれません。

また、30歳から49歳までの年齢層でも人数が多いのが興味深いです。少しお金に余裕がてきて、若いころに熱中していた楽器をもう一度演奏してみたい、というようなかたが多いのでしょうか。

参考資料として、2016年の年齢層ごとの楽器を演奏する人の割合も記載しておきます(年齢層ごとの総人口が100%で、そのうちの楽器演奏者の割合です)。

10~14歳:32.60%
15~19歳:24.20%
25~29歳:14%
30~39歳:12.80%
40~49歳:9.60%
50~59歳:8.50%
60~64歳:7.50%
65~69歳:6.40%
70歳以上:4%

このデータも1986年から2016年までのデータがあるのですが(ここに掲載するには量が多いので省きます)、特徴としては10から19歳の若年層で若干減少の傾向が見られるが、その他の年齢層では概ね増加の傾向が見られる、というような内容です。

日本の人口が減少しつつあるなか、楽器演奏者の総数があまり変わらないことからも、日本の人口に対する楽器演奏者の比率は増加していると考えていいかと思います。

近年、手軽に買える金額の楽器や、電子楽器の普及で楽器を始めるハードルが下がってきていることや、ワークライフバランスなどの考えかたが普及しつつあることなども要因のひとつかもしれません。

2016年では、それ以前の年と比べて70歳以上の数が増えているのもおもしろいですね。リタイア後の楽しみとして楽器をはじめる人もいるかもしれません。

楽器演奏者の男女比

続いて、こちらのグラフは、年齢層ごとの日本の楽器演奏者の男女比です。
縦軸は同様に人口(千人)で、横軸は各年齢層です。

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個人的な感想ですが、男女比でこんなに女性の方が多いとは思っていませんでした。

確かに中学校、高校などの吹奏楽部では圧倒的に女性の数が多かったので、その年齢層では何となく理解できる気がします。

ただ、20歳以降の年齢では、これは私の勝手な想像でしたが、バンド系の楽器や電子楽器などを演奏する男性が多く、全体の比率も男性のほうが多いのではないかと思っていました。

ここまでのデータで客観的に分かることは、日本で楽器を演奏する人は、どの年齢層にも幅広く存在しており、また女性の比率がかなり高い、ということです。

楽器の市場規模

ここで少し視点を変えて、日本で実際にどのような楽器がどのくらい買われているのかについても考察したいと思います。

帝国データバンクのデータによると、楽器販売に関わる主要企業52社の2014年の売上高は1627億8800万円(楽器教室等の売上含む)とのことで、楽器演奏者の人口が大きく変動していないことから、おそらく2019年の楽器に関わる売上金額もそれほど大きな増減はないと思われます。

もうひとつ、楽器の種類ごとの売上比率を見てみたいと思います。

楽器の種類ごとのデータは公のものを見つけられなかったので、比較的オールマイティな商品ラインナップを持っているヤマハ(楽器)の決算資料を参考に考えてみたいと思います。

まず、ヤマハでは事業を大きく楽器、音響機器、その他の3つに分けています。

先の帝国データバンクのデータでは、主要な楽器販売店の売上としており、それら販売店では楽器、音楽教室のほかに、PA機器も販売しているところが多いと思います。

そのため、ヤマハの売上も楽器(音楽教室含む)と、音響機器の中のPA機器も含めて参照してみます。

楽器の売上

これらの売上金額は、2018年のヤマハのグローバルの売上です。
参考資料 (PDF)

ピアノ 529億円
電子楽器(ソフト含む) 913億円
管楽器 424億円
弦打楽器 293億円
PA機器 480億円

円グラフで表すとこのような感じです。

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圧倒的に電子機器が多いですね。ここにはソフトの売上も含まれているとのことで、何となく理解できる気がします。

もちろんヤマハというブランドの得意なカテゴリーとそうでないカテゴリーがあったりするなど、世界の売上金額の割合がそのまま日本に置き換わるということはないと思いますが、ここはあくまで大まかな傾向を知るための考えかたとして読み進めていただけたら幸いです。

2018年のヤマハの日本だけの売上が770億円なので、単純計算の推測ですが日本での各楽器の売上は下記となります。

ピアノ 154億円
電子楽器(ソフト含む) 266億円
管楽器 123億円
弦打楽器 85億円
PA機器 140億円

合計:約770億円

日本全体の楽器の売上金額は1627億8800万円なので、およそ1628億円として計算すると、下記のようになります。
(ていうか、この推論があっているとすると、ヤマハだけで日本の楽器市場の約半分の売上を持っていることになりますね。すごいです。。)

ピアノ 326億円
電子楽器(ソフト含む) 563億円
管楽器 261億円
弦打楽器 180億円
PA機器 296億円

日本でより多く楽器を買っているのは誰か

また男女比の話しに戻りますが、2016年のすべての年齢層を合計した際の楽器演奏者の男女比は、女性が約770万人、男性が490万人(約6:4)でした。

女性のほうが男性の1.5倍ほど多いのです。

楽器の種類ごとの購入者の男女比データは存在していないのでまったく断言はできませんが、これも単純に計算すれば1628億円の約60%の977億円が日本の女性が1年間に楽器に費やすお金ということになります(帝国データバンクのデータには楽器教室の売上が含まれているとのことなので、実際にはもう少し少ない金額だとは思いますが)。

金額の不確実性はありますが、それでもたくさんの女性がたくさんの楽器を購入して演奏している、ということは事実だと思います。

楽器を演奏する人を応援

細々とですが、Free MusicというWebサイトを運営しています。

まだかなり中途半端な状況ですが、少しずつ改善して、楽器を演奏する方の役に立てるような情報を発信することができたらと思います。

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