微生物メタバースの幕開け:Concerto Biosciencesの挑戦

こんにちは、Nucleate Japan広報担当です!

Nucleateはボストンに本部をおく、バイオテック領域でイノベーションをおこしたいと考えている人たちのための世界的なNPO法人です。
アメリカやヨーロッパをはじめとしたバイオテック先進国の最新動向を知ってもらうために、Nucleate本部のリソースを日本語でわかりやすくお伝えします!

第1弾は、Concerto Biosciences co-founder&CEOのCheri Ackermanとの対談(https://signal.nucleate.xyz/beginning-microbe-metaverse-concerto/)から、画期的な取り組みを紹介します!


Cheri Ackerman, PhD 
Concerto Biosciences co-founder&CEO

ゲストであるCheri Ackerman氏に対して、Nucleateのメンバー2名が聞き手としてトークが展開されていきます。
ゲスト:Cheri Ackerman。 Concerto Biosciencesのco-founder兼CEO
聞き手1:Emmanuella Nnuji-John。Nucelate Signal (本対談企画)のDirectorで、Cold Spring Harbor Laboratoryの博士課程の学生。
聞き手2:Jingyi Liu。Nucelate Signalの元メンバー。現在はブリガム・アンド・ウィメンズ病院内科研修医。

では、以下から内容に入っていきます。

はじめに

本日は、Concerto Biosciencesの共同設立者であるCheri Ackermanをお迎えしています。Cheriは、アカデミアからライフサイエンス企業を立ち上げるまでの道のりを語ります。Concertoの革新的技術であるkChipは、微生物相互作用の研究における世界的展望を変えつつあり、医療や農業に応用されています。Cheriは、kChipが生み出す無限の可能性と、この技術がどのようにConcertoという社名に織り込まれているのかを掘り下げながら、科学戦略の世界へと私たちを誘います。

NucleateプログラムとConcertoの誕生

Concerto Biosciencesの共同設立者、Cheri Ackermanをお迎えしています。Cheriは、アカデミアからライフサイエンス企業を立ち上げるまでの道のりを語っています。Concertoの革新的技術であるkChipは、微生物相互作用の研究における世界的展望を変えつつあり、医療や農業に利用されています。Cheriは、kChipが生み出す無数の可能性と、この技術がどのようにConcertoという社名に織り込まれているのかを掘り下げながら、科学戦略の世界へと私たちを誘います。

Ella(聞き手):Concertoの原点にはNucleate(旧Activate)があるとのことでしたので、今日お話を伺えることをとても楽しみにしていました。バイオテクノロジーに情熱を注ぐ若手は、科学的なアイデアの事業化をどのように始めるかについて、多くの疑問を抱いています。Nucleateやその他の関連プログラムは、あなたのようなバイオテクノロジー分野の起業家や経営者としての人生において、どのような役割を果たしたのでしょうか?

Cheri:NucleateはConcertoの原点において重要な役割を果たしているため、今回このポッドキャストSignalの初回に参加できたことは本当に特別な意味があります。私たちのストーリーをコミュニティに還元し、バイオテクノロジーに携わる他の起業家に良い影響を与えられたら嬉しく思います。
私たちがNucleateにて活動を始めた頃を振り返ると、おそらくそれよりも2ヶ月ほど前に、共同設立者の一人が私に「kChipを商品化してみないか」と尋ねてきました。kChipは、私たちが発明したConcertoの基礎となるプラットフォーム技術の名前です。それで私は賛同しました。その時それがどのようなものなのか、どのようにして会社になるのか、などについては全く考えていませんでした。
Nucleateでは主に2つのことを学びました。1つ目は基本的な用語です。私たちは「顧客発見」のような言葉や、取締役会の役割、知的財産の概念などを知りませんでした。2つ目はネットワークです。プログラムを通じて素晴らしいメンターと出会い、今日に至るまでConcertoに様々なアドバイスをいただいています。彼らのネットワークを通じて、私たちが解決しようとしている問題に関連する人々とお話しする機会を得ることができ、顧客発見の方法、技術評価の仕方など、多岐にわたって手助けしてくれました。

もし私たちがこれを本当にやると決めたらどんなことに足を踏み入れることになるのかの実感を得つつ、Nucleateを後にしました。

Jingyi(聞き手2):実際に他の多くの創業者もそのような思いを持っているのではないでしょうか。CEOになる準備は簡単なものではありません。しかし、ConcertoのCEOになるための準備として、どのようにリーダーシップの経験を積んだのか、研究室やこれまでの経験から話していただけますか?自分の会社や他の会社のCEOになりたいと思っている人たちに、どのようなアドバイスができますか?まだ学生で、進むべき方向がはっきりしない中で、どのように経験とリーダーシップを積み上げていけばいいのでしょうか?

Cheri:私が専門的なリーダーシップを身につけたと言える分野はいくつかあると思います。そのひとつが科学的リーダーシップです。研究室にいて、他の大学院生や学部生と一緒に研究しているとき、プロジェクトがどこに向かっているのかビジョンを描き、それぞれの特性やプロジェクトへの役割を見極め、研究室やスキルなどの違いを超えて調整することは、CEOとして活動することにおいても役立つ非常に実践的な管理スキルでした。結局のところ、私がCocertoのCEOになったのは、その役割を担うようになったからです。私たちのチームが形成されたとき、全体像を把握する人、様々な人々の長所を引き出し、調整し、Concertoのビジョンを外部に明確に伝えることができる人物が必要でした。研究チームを率いた過去の経験とは異なり、商業化や社会へインパクトを与えることを目指すとしても、同じようなスキルが必要とされるため、Concertoにてチームを率いることができたと考えています。

もう1つは、ボランティア活動です。バークレー校の化学系大学院生生活委員会に参加し、教授陣や研究者たちとの関係改善、特に対立が起きたときの改善について提言しました。お互いに理解しあい、良い解決に導くために利用できるリソースは何か?また、そのような状況下で大学院生をどのようにサポートすればよいのか?そのような動きを起こし、そのプロセスを学部内で取り仕切るという私の役割は、人々がどのように変化を生み出すのかということを考える上で、非常に有意義な経験だったと思います。実際に変化を起こせるような組織を作るにはどうしたら良いだろう?という風に考えていました。

その他にも、バークレー校時代には助祭として所属していた教会でのボランティア活動も多く行いました。それは、なんというか…感情面でのトレーニングになりました。人々が教会に来るとき、彼らは物理的な解決策以上のもの、例えば精神的、感情的な繋がりを求めています。大きな痛みや葛藤の中にいる人たちをどのようにケアするのか、共感する力などを大きく成長させることができたと感じています。物事が思い通りに進まない瞬間はよくあるもので、その感情の存在を認識し、人々が一人の人間であることを理解する能力を持つことは、私の役割において重要であると考えています。

Ella:Concertoという名前について、由来や活動との繋がりを少し教えてください。

Cheri:Concertoという名前に辿り着くまでに何時間もかかったため、私たちはとても誇らしく思っています。Concerto(コンチェルト、協奏曲)というのは、中心的な楽器をオーケストラがサポートする音楽のことです。ヴァイオリン協奏曲は、ヴァイオリニストが中心的な演奏をし、オーケストラがそのヴァイオリニストを支え、そのヴァイオリニストの能力を際立たせるような素晴らしい音楽を作り上げるものです。似たような発想で、ピアノ協奏曲などもあります。私たちが会社として行っていることは、微生物のグループを作り、ある中心的な機能や微生物を得ることを共有目標として、グループ同士が一緒に働く仕組みを作ることです。Concertoという名前は私たちが世界で成し遂げようとしている科学を良く反映していると思うので、とても気に入っています。当社の最高科学責任者を含め、社内には多数の音楽家がいます。音楽は私たちにとって身近で大切なものなので、私たちの人間性の一部を反映した名前をつける楽しみがありました。

kChip技術とは

Ella:御社はkChipというプラットフォームを使って、対象とする行動に影響を与える微生物の相互作用を測定しています。聴衆のために、一般的な言葉でこの技術について教えてください。

Cheri: kChipが克服する科学の主な課題は、微生物群に関する実験データを得ることです。今日、マイクロバイオーム産業の大半は、主に2種類のデータで動いています。ひとつは微生物の分離株です。これは伝統的な微生物学で、微生物の複雑な混合物から1つの微生物を取り出し、シャーレに入れて単体で研究を行います。もう1つは、次世代シーケンサーによるデータを利用する方法です。これはサンプルのDNA配列を決定するもので、健康な人と病気の人に存在するすべての微生物のリストを作成し、それらのリストを比較して微生物と健康や病気を関連付けることが可能になります。これらのデータセットは、微生物が人間の健康にとって重要であることを示す上で、非常に重要です。しかしこれらのデータセットは、微生物がどのように相互作用しているのか、そしてその相互作用がどのようにより大きなコミュニティーレベルの行動や機能に影響を与えているのかについては教えてくれません。

人間の健康にとって重要なのは、マイクロバイオームが全体としてどのように機能しているかということです。実生活における微生物は孤立して生存しているわけではなく、常に相互作用する複雑な生態系の中にいます。問題なのは、実験的に1000個の微生物のライブラリーがあったとして、その1000個の中から可能な限りのペアを測定しようとすると、50万回の測定が必要になることです。さらに、これらのコミュニティを少し大きくすると、さらに爆発的に増え、何十億もの相互作用を測定しなければなりません。そして、現在のテクノロジーでは、最も高速なロボットでさえ1日あたり約20,000の測定しかできません。計算してみると、この巨大な数を既存のテクノロジーを使用して実験的に探索するのは不可能であることがお分かりになると思います。何百万もの微生物の組み合わせを測定し、その相互作用をネットワーク・マップとして作成できる、このような実験データを得られる初の手法として私たちはkChipを発明しました。

物理的にkChipの動作を可能にする主要な原理が2つあります。ひとつは小型化で、キッチンで使う微生物培養液やナノリーダー液滴をすべて小型化することです。つまり、数十万個を並行して操作できるようにするということになります。もう1つはランダム化ですが、その仕組みはロボットとは異なります。ロボットの場合、「 微生物1と微生物2を投入してほしい、次は1と3を投入してほしい」と指示すると、ロボットは決定論的にチップのすべてのウェルをロードしていきますが、これには長い時間がかかります。kChipでは、液滴はマイクロウェルのアレイ上をランダムに流れます。そして、ランダムにロードされるからこそ、すべての液滴を同時並行でロードすることが可能になり、10万ウェルを約5分でロードすることができます。これはロボットでできることに比べれば、膨大な処理能力です。昨年の夏、私たちは研究室でフルタイムのスクリーニングを数週間かけて行い、2週間で500万点のデータを収集しました。微生物の相互作用に関するデータセットとしては、これまでで最大のものとなります。このデータセットが微生物の働きに関する新たな理解を可能にし、これまで誰も特定できていなかった新しい成果物を得られるようになったことは、とても素晴らしいと思っています。

Concertoの製品と応用

Ella:異分野融合や科学の共有の精神に基づき、Concertoは病気の治療と農作物の収穫量向上の両方にソリューションを提供しています。実際、Concertoの最初の製品は、皮膚のマイクロバイオームを回復させ、湿疹を治療する微生物のコミュニティでした。Concertoのリソースをどの製品に向けるか、どのように優先順位をつけているのですか?

Cheri:良い質問ですね。プラットフォーム技術に取り組んでいる人なら誰にでも言えることですが、これは文字通り10億ドルもの価値のある質問です。その技術を何に応用するのか?適切な場所から始めれば、他のことへの急速なスケールアップを可能にできます。難しすぎるところから始めると、挫折します。逆に簡単すぎるところから始めても、投資家にとって面白くありません。人々に利益をもたらすインパクトのある方法で、技術的に非常に扱いやすく、かつ投資コミュニティにとって財務的に魅力的である適度な場所を見つけることが、10億ドルもの価値にもなると言った意味になります。

私たちが選択をする際に重視した点が2つあります。ひとつは技術応用マトリックスです。この仕組みは、技術のすべての属性を取り込み、一つの表に軸をとりまとめるというものです。例えば、私たちの場合、 自然環境から微生物のバイオバンクを構築できるか?この製品が機能すると予想される場所はどこか?簡単に実現可能か?kChipで動作可能なものを作ることはできるのか?、などを市場規模や競合状況を含んで一つの軸にまとめます。もう一方の軸には、想像しうる様々な応用方法を並べ、関連すると思われる技術的側面と市場的側面の全てにわたって、それぞれの応用方法に点数をつけ得点表を作っていきます。

最終的にはランキングをつけることになるのですが、現在の状況に適合するかどうかを考えるビジネスの世界への入口にもなります。私たちの場合、大きな原動力のひとつは、嫌気性微生物叢にあまり早く手を出したくないということでした。酸素が微生物を殺してしまうようなものを扱うのは、技術的に非常に難しい領域です。そのため私たちは、好気性微生物が初期段階として適切であり、同時にアトピー性皮膚炎や湿疹に関するニーズも非常に大きいと考えました。共同設立者の何人かが湿疹持ちなので、個人的なモチベーションもあります。私たちがその技術応用マトリックスから検討する際に、満たされていないニーズや技術的な適合性、市場規模、投資家からの関心などを組み合わせることは非常に理にかなっていました。このような考え方は、ある選択をする際に私たちが重視することのひとつです。一般的に、プラットフォームを提供する企業のライフサイクルにおいてどの時点に焦点を当てるかは、そのプラットフォームにとって重要なリスクがどこにあると考えているかに大きく関係しています。

当初、私たちがこのプラットフォームを運営できるなどとは誰も思っていませんでした。これらの微生物が何をしようとしているのか見当をつけ、バイオバンクやアッセイを構築し、kChipを使用して、そして[......]目的の微生物群を[......]抽出することができるようになるとは誰も信じていませんでした。そのため、最初から、そのプロセスを実行できることを証明する必要がありました。当初、私たちのシード前の資金調達は、そのプロセスを1回のみ実行できる金額であったため、それにかけていました。結果的に、プラットフォームを一度だけでも稼動させたことは、私たちにとって大きな価値のある転換点になりました。それでもこの課題を乗り越えた次には、また違うリスクがあります。この時点では主に2つ。ひとつは、kChipを使って見つけた微生物群は試験管内では予想通りの働きをしますが、ヒトの皮膚表面に移したときにその機能を維持できるか、試験管内での機能から生体内での機能へと移行することは可能なのか、ということです。これは、現在私たちがリスクを取り除けるよう積極的に取り組んでいることです。もうひとつは、このプラットフォームの汎用性を実証することです。私たちはこのプラットフォームを一度皮膚で使用し、非常に良い結果が得ることができました。驚くべきことは、追求すると、農業や女性の健康など非常に面白い分野で使えるということです。そのため現在、農業や女性の健康分野への応用においても、様々な分野で機能する真のプラットフォームとなるよう、1回のみの結果ではないことを示すことに取り組んでいます。テクノロジーと市場のベストフィットはどこかを探る技術応用マトリックスに加え、投資家が最も懸念していることについても考える必要があります。最大のリスクはどこにあるかと考え、それがリスクではないことをどのように示すことができるか。それが可能となった時、私たちはその課題を乗り越えたことになります。

規制とリスク管理

Jingyi:リスクに関して、規制当局とのやりとりについてもう少しお聞かせいただけますか?微生物郡の概念や定義について議論はありましたか?革新的なことをすることの利点であり、かつリスクでもあるのは、誰もあなたのやっていることをやったことがないということだと思います。つまり、多様な開発段階にある微生物群治療薬があるということになります。糞便移植はC. difficileに対して承認されていると思いますが、御社で取り組まれていることとは少し異なるように思います。規制リスクについての会話にはどのように取り組んでいますか?また、Concertoとして進めていく上で、微生物群治療薬の規制やその他の応用についてどのようにお考えですか?

Cheri:いい質問ですね。私たちは、この分野で「ファスト・フォロワー」と呼ばれる存在であることから、多くの恩恵を受けています。私たちは、虫を薬にしようと思い立ち始めた最初の会社ではありません。私たちは、連邦医薬品局(FDA)が言うところの「治療製品による生還」( “alive by the therapeutic product”)を目指していますが、この分野には、現時点で10年近く取り組んできた企業があります。FDAも、これらの治療法についてまったく知らないわけではありません。例えば、FDAが発表したガイダンスには、治療用製品の化学製造管理(CMC)に関するものがあります。もしバイオテクノロジーに独自の専門用語や略語があるとお考えなら、FDAやバイオテクノロジー業界で働いてみると良いかもしれません。まったく異なるレベルの専門用語であるとお分かりになると思います。これらの専門用語を読むことは、私たちにとっても非常に役に立ちました。そのため、FDAと協力してこれらのパラメーターを定義し始めた先人たちに感謝しています。まだ誰も成功していないのは、FDAの安全性と有効性のチェックをすべて合格し、定義された微生物群を作ることです。第3フェーズを経て、実際に定義された微生物から医薬品が承認されるようになるには、まだ業界の歴史は浅いです。今、最前線の者は、第3相臨床試験に入っているか、あるいは終了している頃ではないかと思います。それは彼らが遅かったからではありません。これは、医薬品開発の平均的な速度なのです。FDAの承認を得るには、本当に長いプロセスが必要です。それをどのように乗り越えてきたかという点では、考えるべきことがいくつかあると思います。ひとつは安全性です。健康なヒトの皮膚や健康なヒトの口などから採取された、編集されていない微生物を使うことの素晴らしい点は、これらの微生物がすでにFDAによって安全であるとみなされていることです。

基本的な試験をして、例えば微生物が抗菌剤耐性遺伝子を持っていないことを確認しなければなりません。もし何か問題が起きて、皮膚にいる微生物をすべて取り除かなければならなくなった場合、市販の抗生物質を塗ればいいのでしょうか。あるいは市販品ではなく、既製品の抗生物質を塗れば、もう大した問題ではないのでしょうか。答えは、これらの微生物に関してはイエスです。FDAはそれを見て、かなり安全だと言います。もう一つの側面は有効性で、この基準は非常に疾患特異的です。つまり、FDAがアトピー性皮膚炎において意味があると考えるエンドポイントは何かということを理解する必要があります。FDAが認めているアトピー性皮膚炎の悪化度合いを示す尺度があり、その尺度で一定の改善レベルを達成する必要があり、FDAはそれを求めています。そして、それはステロイドでも、注射剤でも、治療薬でも同じです。それは、誰もが満たさなければならない支持された基準に過ぎません。どのようなことがモダリティとしてのLBPS(腸内細菌製剤)に特有なのか、そしてどのようなことが単にその分野で達成しなければならない基準なのかを理解することは、FDAと協力する上で大きな意味を持ちます。また、FDAとの協働は単独で行うべきものではありません。もしあなたが若い創業者で、このようなことをやったことがないのであれば、FDAや規制当局に関しては、外部の専門家を招き、経験のある人に任せるべきです。絶対に失敗したくないことであり、臨床保留命令(臨床試験差し止め)は確実に避けるべきです。小さな会社にとっては致命的なことにもなります。

未来展望と起業家へのメッセージ

Jingyi:素晴らしいですね!あなたは素晴らしい仕事をしている、ときっと誰もが言うと思いますし、特にあなたの姿勢はこれからもずっと多くの人の学びの先端に立ち続けると思います。それは、チームの他のメンバーにも学ぶ文化を作っていることにも大いに関係しています。私たちは、Concertoが次に何をするのか、どのように進んでいくのかとても楽しみにしています。Nucleateの卒業生として、会社や技術に関して、数年前のあなたと同じような段階にいる人たちに何かアドバイスはありますか?Nucleateの一員として、起業家としての次のステップにどのように着手しますか?

Cheri:初めに、これは私が惜しみなくしているアドバイスの一つであり、他の場所で私の話を聞いたことがあればすでに聞いたことがあるかもしれませんが、「自分で自分にノーと言わないこと」です。世界はあなたに何度も何度も何度もノーと言います。たくさんの壁が立ちはだかります。だから、自分で自分にノーと言わないこと。自分に必要なものがあると信じ、世界で何かが起こるのを見たいという情熱があると信じられるのなら、あなたはそれに向かって進み、世界で何を起こせるのか見てみること。それを実現しようとするのです。自分に言い聞かせる(自分自身を説得する)必要はありません。

もう1つは、この職務に就いて成熟するにつれ、ますます重要になってきたことです。それは、自分の感情面でのスキルに投資すること。これは、私が長い間気にかけてきたことで、今もそのスキルの向上に努めています。これは他の人たちとのつながりを作る上で非常に重要なことで、何が彼らの原動力になっているのかを理解しようとすること、そして、さまざまな会話から各個人が何を必要としているのかを理解しようとすることに繋がります。それがパートナー候補であれ、投資家候補であれ、従業員であれ、共同創業者であったとしても同じです。私たちは論理に基づいて決断を下すと言いますが、実際はそうではなく、自分の気持ちに基づいて決断を下しており、後から論理で裏付けを取ります。論理だけで決断している人はめったにいません。会社設立というジェットコースターのような経験をする中で、自分の感情をコントロールし、自分自身をケアする能力を持つこと、チームをケアする能力を持つこと、投資家やパートナーとの関係を構築していくことは、非常に重要です。現実的な観点から言えば、コーチングやカウンセリングを受けることも一つの手だと思います。大変なことを乗り越えながら会社を設立し、自分自身のスキルも高めていくのです。例えば、本を読んだり、トレーニングに参加したりと、自分自身やチームのために自分の能力に投資をする。誰と一緒に起業の旅に出るかという点では、あなたが信頼している人であるべきです。私にとって、それは直感的なレベルでのつながりと大いに関係があります。さらに言えば、その人を突き動かすものが何なのかを理解できること、そして、私たちが人生で最も困難な局面を乗り越え、これから何年も生きていく中で、私たちがどのように協調し、自分たちを生かしていくのかを理解できることです。

Jingyi:その人のモチベーションは何か、どこから来ているのか、何に触発されているのかを理解するというのは、とても興味深い点でした。では、最後にいくつか楽しい質問をしたいと思います。

Ella: Cheri、あなたの好きな微生物とその理由は?

Cheri: この質問は最高科学責任者に聞くべきですね。というのも、私は今ビジネスに携わっているからです。なので、私の好きな微生物は、私たちが親しみを込めて "微生物 "と呼んでいるものになると思います。それが何であるかは言えませんが、私たちが研究しているシステムの中では超強力なもので、それゆえ私のお気に入りになっています。

Ella:とても素敵ですね。微生物コミュニティのほかに、どのようなバイオテクノロジーの発明に期待していますか?

Cheri:世界で収集可能なデータの限界に挑戦している人たち全員だと思います。タンパク質の配列決定や、これまでになかった生物学的な見方のようなことに取り組んでいる人たち。もし私がこの研究をしていなかったら、新たに確立しつつある分野、例えば、空間オミクスや組織や生態系がどのように組織化されているかを理解することに取り組んでいたと思います。

また、女性の健康は、今でも信じられないほど未開拓な分野だと思います。子宮内膜症は、もし今やっていることに取り組んでいなければ、私が取り組んでいた分野です。特定の発明を指して、これは問題を解決する本当に素晴らしいものだと言いたいところですが、(中略)まだ私たちはそれよりもずっと前の、何が起こっているのかを理解しようとしているのです。このような未開拓分野への進出をみることは、私にとって本当にワクワクすることです。

Ella:ポッドキャストへのご出演、ありがとうございました。

Cheri:どういたしまして。

リンク

本記事でCheri Ackerman氏個人や Concerto Biosciences 社、kChip技術に興味を持った方は下記リンクをご確認ください!

なお次回は、NucleateのAI in Biotechプロジェクトより、「Robotics Will Liberate Biotech Creativity」を紹介予定です。お楽しみに!


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