海外ウェブコミック紹介4: Empowered
この作品は、形式的に言えばスーパーヒーローものであり、またエロティックコメディでもある…が、そうざっくり表現するとこの作品の性格がなかなか伝わらないのでもうすこし説明させてほしい。
作者Adam Warrenは、サイトで述べられているところによると、もともと海外定番エロ絵のジャンルに「縛られてピンチな状態の乙女」というのがあり、彼はそれの専門絵師であったという。その経験を生かしてもっと独自な作品を製作したいという思いから試行錯誤を重ねて生み出されてきたのがこのコミックなのだそうだ。
主人公のEmpowered (力を与えられた者、という意味、愛称Emp)は、スーパースーツを身にまとうことで超人的な能力を発揮するヒーローたちの一人である。ところがこのスーツがとにかくやたら破れやすく、戦闘に入るとだいたいすぐに教育上非常によくない感じになり、彼女のパワーも残ったスーツの面積に比例して減っていき、ほとんど常に悪党たちに捕まって、縛られて猿轡をかまされ、人質状態になるのがお約束と化している。つまり基本的にはその一連の流れを楽しむコメディ作品と言っていいだろう。
しかしただのコメディ漫画というだけではなく、作者のキャラクターへの愛情もいくつかの点に感じられる。Empは地元ヒーロー協会に所属しているが、いつも窮地に陥って仲間に救出される自分に不満を抱いているし、ときどき自暴自棄にもなる。自分のお尻が標準よりわずかに大きいような気がするのも彼女の悩みの一つである。だがそういう彼女にもしっかりと支えが存在するのだ。作品の途中から、悪の組織の戦闘員をやっていた男があっさり寝返って彼女のボーイフレンドになるのだが、この男がいいやつである。いや、要はEmpが落ち込んだときにピロートークで慰めているに過ぎないのだが、その慰め方はつねに真剣であり、かつ優しい。世の男がみんなこのくらい自分の彼女に優しければ世の中は多少平和になるだろう。さらに途中から、ニンジャの女の子ニンジェットも登場してEmpの親友になり、しばしば慰め役にまわる。
なお彼女の名誉のために言っておくと、ときどきではあるが、ちゃんと他のヒーローが歯の立たなかった強敵を倒し地球を救ったりしている(その強敵はその後、彼女の家に居候している)。
アートワークのタッチは本人曰く、「アメコミと呼ぶには日本のマンガ風、マンガとよぶにはあまりにアメコミ風でどっちつかず」とのことだがその筆力は確かである。確かすぎる筆力のおかげでエロ要素はいやでも目につくが、きちんと読めばエロは目的ではなく舞台装置であることがわかるはずだ。
作品へのリンク http://www.empoweredcomic.com/
Hive works http://www.thehiveworks.com/
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