海外ウェブコミック紹介 11 Monster Pulse

例によってHiveworksから、今回はMagnolia Pearl氏のMonster Pulseを紹介する。

これはいいジュヴナイルSFなんですよ旦那…

事の発端は、シェルという秘密の研究機関が作り出した、幽霊のような謎のエネルギー生命。彼らはそのままでは意志も実体も持たないが、人間…特に子供と融合することでその体の一部を独立させ、自分の意志を持ったモンスターとして活動するようになる。この生命体が実験途上で何体も野に放たれ、それに憑依された子供たちは否応なしに大きく変わってしまった自分の運命と向き合うことになっていく…

設定は相当突飛だが、ストーリーと人物描写は緻密であり読み応えがある。

メインキャラクターと、そのパートナーとして活躍するモンスター(とそのモンスターが体のどの部位なのか)をちょっとあげておこう。

ビナ(アヨ:心臓)

主人公、性格的にも強く、少年少女たちのリーダー的存在。時として生真面目な性格のために肩に力が入りすぎてしまうことがある。心臓のモンスターであるアヨはモンスターたちの中でも最もパワフルであり、ビナを支える心強いパートナーだ。

ジュリー(ケラ:髪の毛)

ピンチにあっても皆を勇気づけることを忘れない、剽軽なキャラクター。だが実は常に深く状況を考えており、自分は無理をしてもその場を明るくする努力をしていることが多い。髪の毛のモンスターのケラは変幻自在にサイズや形を変えることができ、機動力に富む。

アベル(リキシス:左目)

このモンスター憑依事件に関連して妹を亡くしており、心に傷を負っている。また家族や周囲を巻き込まないため一人で旅に出て放浪生活をしていた。ビナたちと出会い一緒に自分たちの生活を取り戻すため戦うことになる。目のモンスターであるリキシスは自由に空を飛ぶことができ、斥候として高い能力を持つ。

ウェスト(グージ:胃袋)

のんびりした性格で、冗談を言って場をなごませるのが好きである。一見真剣味が足りないように見えることもあるため、ビナと衝突した事もあった。胃袋のモンスターであるグージを愛しているが、それとともにウェスト本人は物を食べることができない体になった(グージが代わりに食べればウェストは空腹を感じない)ため、グージに対する感情も複雑なものがある。一方でグージはそんなことは一切気にせず無条件にウェストを慕っている。何種類かの違う特性を持った胃液を吐くことができる。

他にも多くの魅力的な少年少女たちとモンスターのコンビが登場するので、能力バトル的な側面もある。しかしこの作品の魅力はなんといっても彼ら登場人物のそれぞれが抱える心の葛藤とそれにどう向き合っていくかにある。普通とは違う体になってしまった戸惑い、元の生活に戻りたいという願望、家族との関係、モンスターとの絆、一人一人がそれぞれ違う感じ方をしつつも、全員で一致してシェルに対抗しなければならない現実。また、シェルの側に属する大人たちの描写も見応えがある。彼らもまたそれぞれがこの事件に関連して大きな代償を払っているのだ。しかしそれでもなお踏みとどまることのできない者たち…その業の深さも読むものを捉える。

作品へのリンク: http://monster-pulse.com/

Hive works: http://www.thehiveworks.com/



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