海外ウェブコミック紹介 18 Gunnerkrigg Court

イギリス在住のTom Siddell氏によるこの作品は2005年から連載が開始され、今も続いている。主人公の少女 アンチモニー(アニー)・カーヴァーは母親が入院している病院で生まれ育ったが、母の死をきっかけに巨大な学園都市「ガンナークリッグ学園」にやってくる。母の持っていた死人を冥界に導く力を受け継いだ彼女は、転校してきた早々に謎の生きている影「シャドウ」と出会い、彼を学園と深い川を隔てた対岸にある深い「森」へ返してやるために学園の教材ロボットを組み立ててシャドウと共に送り出す。

その後彼女は謎に満ちたこの学園で、図書館の奥の迷宮に住むミノタウロスやドラゴンの姿をした「魔物」レイナード、人を驚かすのが下手な幽霊「モート」、そしてテクノロジーに天才的な才能を持つ同級生カットと出会い親友になる。

さらにアニーの秘めた様々なクリーチャー達と分け隔てなく友人となる能力はやがて彼女を「森」とそれを統治する万能の「コヨーテ」との出会いに導いていく…

単純な見方をすれば「学園」は人間の科学技術を表し、「森」はそれと対峙する自然を表すということになるのだろうが、作者はどちらにも肩入れしないバランスで双方に魅力的な、だが全面的には信頼のならない多くのキャラクターを配置することで多面的な作品としている。

特に面白いのは「森」を率いている全能のコヨーテだが、星を並べ星座を造ったとうそぶき、つかみ所のない笑いとユーモアでアニーを翻弄する。やがて彼女を気に入ったコヨーテは、彼女を「学園」と「森」の仲介者として(しかも「学園」側ではなく「森」側の)指名する。だがそのコヨーテの好奇心がやがて大きな転機を呼ぶことになる…

すでに15年続いている長期作品ということもあり、最初期の筆致は稚拙とも言える面があるが、逆にその作風の変化自体が何年にも渡る主人公とその周囲のキャラクター達の成長そのものをも表しているとさえ思える。

登場するほとんどのキャラクターが多面性を持っており、それぞれの行動原理が必ずしも簡単に理解はできない。そのような複雑な世界の中でアニーがカットや様々な人間以外の協力者やあるいは非協力的な者たちとどう関わり合い、どのように行動していくのか。今後も気になる作品である。

作品ページ https://www.gunnerkrigg.com/archives/






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