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「色」を音楽で表現するということ

これは、「YOASOBI武道館ライブ公式レポーター認定試験」の解答記事です。詳しくは公式さんのnoteをご覧ください。

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問1.
①[ B ]
②[ C ]
③[ A ]
④[ B ]

問2.
①[ おはようございます。]
②[ D ]
③ 今日の午前中は、自分と組む営業担当者が変更となったことや顧客側の都合などから、あいにく取引先をめぐる必要があるが、その処理が長引かない限り娘の進級テストに間に合うから。
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問3.
-選んだ楽曲タイトル[ 三原色 ]
-その曲とあなたの出会いやその曲に対する思い入れ

※せっかく試験形式なので、小論文ぽく書きます。以前の拙著「SING YOUR WORLD」ライブレポートでは、ゆる~く「三原色」愛を叫んでいるのでなにとぞ。

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Abstract

 The song "RGB" is a work that particularly pursues YOASOBI's concept of "Novel to Music", by expressing the underlying sense of color of the original novel through music and progressing the story through vocals. In addition, it is worth mentioning that Nana Mori, who is a popular Japanese actor and whom I love, is also a fan of YOASOBI, and this song seems to be the first indirect contact between them. These facts shows the preciousness of "RGB".

1. 序 論

 「三原色」は2021年7月2日に配信リリースされた、YOASOBIの10作目となる楽曲である。本稿は、1) 楽曲における色彩感の表現(2.1.項)、2) ボーカルによる物語の進行(2.2.項)、および3) 推しが推しを推している奇跡(2.3.項)という観点から、本楽曲がいかに尊いかを示すことを目的とする。


2. 本 論

2.「R」1. 音楽で表現された「色」

 曲名「三原色」や原作小説のタイトル「RGB」にもあるように、この作品の根底にはやはり色、それも赤・緑・青という原色のイメージがある。パステルカラーではなくて、あくまで原色だ。それぞれの色にたとえられた3人の幼馴染が、自然と疎遠となってそれぞれの道を歩んだのちに、十数年ぶりに出会った奇跡を、原作小説の著者である小御門先生は「Light」(光)と表現している。赤・緑・青というまったく異なる人生がふと重なったときに、美しい白色の光になるというたとえは、なんとも言い得て妙である。

 さて、このようにどうしても色という概念、あるいはカラフルさが原作においては重要なのだが、そもそも色を音楽で表現するというのは至難の業である。音に色はないし、しかも今回は三原色だ。「オレンジを表現したいから温かみのある音楽にしよう」などというレベルの話ではない。

 しかし、楽曲では見事に色彩感が表現されている。はじめてこの曲を聴いたとき、独特のにぎやかさを感じ、思わず心が躍ってしまった。このにぎやかさは、終始リズミカルなメロディーや、多種多様な楽器の音色から来ているのだろうか。ハンド・クラップも多用されていてこちらも手を叩きたくなってくるものの、しかし単なるお祭り騒ぎなわけではないのがなんとも不思議な感覚である。いろいろなリズムや音色を混ぜ込む(=RGB)一方で、あくまでそれらをうまくはめこみまとめあげる(=Light)という構図自体が、まさに原作小説の色彩感を表現しているのかもしれない。Ayase氏によって完璧にコントロールされたお祭りというわけであ[1]

2.「G」2. ボーカルが紡ぐ物語

 先述したとおり、楽曲自体は終始テンポよく進んでいくため、ともすれば原作のエモさが薄れ、単に明るくて元気な作品というイメージが生まれかねない。しかしこれを器用に操っているのが、ikura氏のボーカルだ。楽曲冒頭、いかにも派手に前奏は始まるものの、

どこかで途切れた物語

という一言で、一気に物語の世界に引き込まれる。ikura氏がもつ伸びやかで透明感のある歌声が、この何度聴いても美しい冒頭に完璧にフィットしているのだと思う。

 そしてYOASOBI楽曲初のラップ、通称「ikurapイクラップ」も登場する。ラップ直前に休符はなく、きわめてスムーズに進入するのは聴いていて心地よいが、逆にikura氏からしてみれば、間髪入れずにラップに突入し、終わったあともすぐに、何事もなかったかのように通常モードに戻らなければならないわけだから、相当な技がこの数秒間に詰め込まれているにちがいない(ご本人はラップモードが「(天から)下りてきた」と表現されている)。結局この部分も、ラップだからといってお祭り騒ぎすることなく、非常にスマートに、何食わぬ顔で物語を進行させる狙いがあるのだろう。純粋にかっこよいと感じ[2]

 さて、展開部直後の

ねえここまで歩いてきた道は

の部分も絶妙にクールである。というか、個人的に一番好きな部分がこの「ねえ2文字だ。楽曲も終盤にさしかかり、いよいよさらに盛り上がっていくと思わせた直後に、あえて静かめなゾーンを入れている(これ自体はほかの曲でも比較的多い)のはとてもエモいが、それを「ねえ」という語りかけで始めるのが本当にエモい(語彙力の欠如)。先のYouTubeライブ「SING YOUR WORLD」では、この部分でサッと照明が落ちてAyase・ikura両氏だけが暗闇に浮かび上がる演出がなされていたが、これとikura氏のまさに話しかけるようなやわらかい歌声が最高にマッチしていた。この後転調してクライマックスを迎えるわけで、心の躍動はおさまることなく最後まで続く。

 楽曲自体だけではなく、ボーカルも物語に抑揚をつけているのだ。ボーカルが紡ぐ物語。「小説を音楽にNOVEL INTO MUSIC」というYOASOBIのテーマをここまで忠実に再現されているのには、ただただ感銘を受けるばかりである。

2.「B」3. 推しが推しを推している

 個人的に、俳優の森七菜さんがとても好きなのだが、彼女もまたYOASOBIの大ファンなのは有名だ(たぶん)。Ayase氏が彼女に楽曲提供し(「深海」)、ラジオ番組「YOASOBIのオールナイトニッポンX」に彼女がゲストとして登場したのは記憶に新しいが、おそらくそういった直接的なかかわりがある前に、はじめて間接的に関係があったのがこの曲、「三原色」ではないだろうか。

 「三原色」はNTTドコモさんの新料金プラン「ahamo」のCMに起用されているが、このCMに森七菜さんも登場している(CMは曲名どおり、とてもカラフルで素敵だ)。推しが出ているCMのテーマ曲を推しが歌っているという体験はあまりに新鮮だっ[3]

 本稿は森七菜認定試験ではないため詳細は省くが、推しがつくり推しが歌った曲をバックに推しが登場する様子は最高にみずみずしい。ahamoがわれわれ若年[4]を特にターゲットにしているのもあるのだろうが、それにしても心躍るアップテンポな楽曲に透明感のある歌声、カラフルな映像に今を生きる20歳、というすべてがマッチしすぎている。この絶妙なバランスが、さらに本楽曲の尊さを生んでいると考えられる。


3. 結 論

ひたむ「Light」きに「小説を音楽に」を追求した作品

 楽曲「三原色」は、原作小説の根底にある色彩感を見事に音楽で表現し、かつボーカルによって物語を進行させており、YOASOBIのコンセプトである「小説を音楽にNOVEL INTO MUSIC」をひたむきに追求した作品である。また、「推しである森七菜さんが推しであるYOASOBIを推している」構図は特筆すべきであり、本楽曲はその間接的な接点となったと思われる。以上から、「三原色」の尊さが示された。



[1] ということは、これに心躍っているわれわれはAyase氏の手中で文字通り踊らされているのかもしれない。喜んで踊りますが。
[2] 本楽曲の英語版"RGB"では、さらにかっこよいラップが披露されている。ハマりすぎていて本当によいのでぜひ聴いていただきたい。
[3] 尊さで脳みそがドロドロになり、私は(ずっと興味はあったものの)手続きが面倒で迷っていたahamoに秒速で申し込みをした。チョロいオタクの典型例である。
[4] 筆者も大学4年であり、一応若年層に入るものと信じたい。

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おわりに

 何度聴いても、飽きるどころか心が思わず躍ってしまうこの曲。その不思議なワクワク感は、ライブ直前特有のあの感情(緊張+期待+……)に似ているのではないでしょうか。もう叫びそうなくらい楽しみで胸の鼓動も止まらないのに、なんとか理性が保てていてちょっと冷静を装うあの感覚。来る12月4日・5日にまたそれが味わえると思うと、YOASOBIに出会えて本当によかったと改めて思います。

 前回ライブレポートでも記したとおり、YOASOBIのライブはすでにライブではない、新たな芸術の域に達していると考えています。物語を紡ぐことができる場所を選び(建設途中のビルなり、ユニクロ・シティ・トウキョウなり)、物語と楽曲が最も輝く演出をとことん追求するという姿勢は、間違いなく今回のライブでも発揮されるはずです。

 物語に、音楽や映像、あらゆる舞台芸術・技術を組み合わせた「YOASOBI的、新芸術」。今回もどっぷり浸からせていただきます。

 武道館ライブ両日の成功を心から祈って。

Twitter / @nu__kky

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