見出し画像

証券会社のユーザインタフェース(Webポータルやアプリの画面)レイアウトと利便性について

皆さんこんにちは
若者に色々役に立つかもしれない情報をたまに呟いているおじさんです。

新NISAへ向けた新しいUI

新NISAに合わせて、証券会社各社のWebUI(Web管理画面)のアップデートが入りましたね。正直、どこの証券会社も分かりにくいUIですね。

昔、シスコシステムズ(最近Splunkを買収したのでも有名ですね)が買収したmerakiというクラウドベースのネットワークスイッチやUTMのUIを見たことがあるのですが、ある程度成熟した製品は、機能面での進化は非常に少なく、ユーザビリティが重要であることから、merakiのエンジニアは、管理者の思考に沿った形でUIをデザインし、そのUIに設定項目を紐づけるという全く新しい発想に従って製品の開発を行っていました。(最新のUIは見ていないので何とも言えませんが、恐らく同じコンセプトの開発が続いていると思われます)

近年、金融業界はネットとの融合の必要性に迫られて、インターネットバンキングやオンライントレードを急速に進めてきたのですが、その反面、ユーザビリティを完全に無視した機能のポータル化の結果、とても操作しにくい(どこに何があるのか直感的に分かりにくい)UIが出来上がってしまいました。

過去色々な証券会社のWebUIを見てきましたが、日本の証券会社はまだ使いやすい方ですが、米国の証券会社のWebUIに至っては正直、異常ともいえる分かりにくさで、それが原因でいまだに電話によるサポートがメインになっており、更には自分の口座からの入出金に至っては、相変わらず電話による申し込みや確認が必要になるという、IT大国のアメリカにおいても証券会社のWebUI問題はあります。

SBI証券の新NISAに関する説明ページです。
この取説からして、使いにくさを表しているのですが、この取説自体もどの層に向けた説明なのかもよく分かりません。
結局のところ、元のUIが複雑すぎるため、新しく機能追加する場合もより複雑になり、その説明もより複雑になってしまう悪循環です。
そろそろ、発想を転換してシステムのデザインを一新させる必要があるのではないでしょうか。

目的から設定へ

これがまさにmerakiがやっていることです。
WebUIを操作するということは、何か目的があってやっています。
「目的を選ぶことで設定項目が表示され設定を行い目的を達成する。」
このシンプルな考え方に沿ったUIを作ると現在の複雑なUI自体は解消されます。しかし、この一見シンプルな開発思想ですが、実はUIデザイナーはオンライン証券のあらゆる取引と、各取引における操作に熟知している必要があります。目的の洗い出しに漏れがあると、欠陥のあるUIになってしまいます。これを無くすために、旧UIはそのまま運用と開発を継続し、新UIも並行稼働させ、将来的に旧UIでしかできない機能が無くなった段階で、新UIへ移行するという非効率なやり方を取らざるを得ません。証券のような直接個人に損得が発生してしまう取引において、機能が足りていない、もしくは以前より機能低下してしまうとユーザからのクレームが増えてしまいます。しかし、このまま複雑なUIを維持していくことで、サポート人員や開発工数なども増加するため、適切なUIデザイナーを呼び、新しいUIを作り出すことに証券会社は取り組んだ方が良いと思います。
発想を変え、「機能1」+「機能2」=「目的1」になるという発想を終わりにし、「目的1」=「機能A」というシンプルなUIの創造を是非実現してもらいたいと思います。

現在AI技術も進んで、サポートを生成AIに置き換えていく動きがありますが、これはきちんとしたデジタイゼーション(アナログからのデジタル化)が行われた上でデジタライゼーション(デジタルからの効率化)を実施する必要があり、そうでないと折角の生成AIが正しく機能しません。現在日本では急速にDX(デジタルトランスフォーメーション)が進んでいますが、多くの人が勘違いしているのは、デジタライゼーションを行えばDX化されると勘違いしていますが、まずはデジタイゼーションにより旧来のオペレーションを完全にデジタル移行した上で、デジタライゼーションを行って業務効率を向上させ、その結果新しいユーザ体験が生まれ、それがDXとなるのです。Digitization>Digitalizationの流れで真のDXが行われるので、一足飛びにDXを成し遂げようとしても必ず失敗します。
証券会社も完全なアナログから脱却しデジタル化へ舵を切ったのですが、法整備などどこかの足かせのせいで、デジタイゼーションがきちんと行われておらず、それが理由でユーザビリティの低いWebUIが出来上がってしまっているのではないでしょうか。法律面などデジタル化に対して抵抗となる部分はありますが、是非その抵抗部分をうまく解消するための法改正や、システム開発を通じて良い方向へデジタル化を行い、最終的にユーザ(利用者)のための使いやすいUIを作成してもらえればと思います。

はるか遠い昔、ガントレットというファイアウォールがありました。

ファイアウォールは企業ネットワークと外部ネットワークの境界線に存在するゲートキーパーになります。必要のある通信は許可し、そうでないものは排除することで社内のセキュリティを保護する機能を持っており、近年はファイアウォールの機能に様々な機能を追加したUTM(ユニファイドスレットマネージメント)機器に変わってきています。

ガントレットは、操作が非常に難しく、熟練したエンジニアでないと設定を行うことも変更することも難しい製品でした。時を同じくFirewall-1という製品が世の中に現れました。僕は当時このFirewall-1を死ぬほど触っていたので、自画自賛にはなりますが恐らく日本で5本の指に数えられるエンジニアスキルを持っていたのではないかと自称しています。このFirewall-1は分かりやすいUIを用いて簡単に設定できるのが売りの製品でした。(簡単に設定ができる反面、トラブルが起こった場合原因特定がとても難しく、設定ファイルをリバースエンジニアリングすることで問題を特定していたので、僕のスキルも異常なレベルになっていたのだと思います)まさにガントレットとは真逆の製品です。結局どうなったかというと、ガントレットは一部のマニアのユーザ以外を除いてFirewall-1に駆逐されてしまいました。
2社の開発コンセプトは以下のようなものでした。(あくまで私がメーカーから聞いた話ですが)

ガントレット
複雑で難しいシステムは外部からの干渉を受けず、高いセキュリティを維持することができる

Firewall-1
簡単な設定により、設定ミスを防ぎ高いセキュリティを維持することができる

結果的には、Firewall-1に軍配が上がりました。両社とも高いセキュリティを目的に掲げていたのですが、そのための手段が両極端で、ガントレットは専門家だけを見て開発を行い、Firewall-1は万人が利用しやすい製品開発を行いました。
これは証券会社でも同じで、昔は証券取引などは専門家だけが行っていたのですが、これから個人投資家がどんどん増えてくる時代です。
現状では、SBIと楽天が手数料無料などの直接のコストメリットが出る競争を頑張っていますが、いずれその辺の差別化が出尽くしたタイミングで、UIの操作性というのも証券口座を作る上での重要なファクターになる時代もやってくると思います。

サムネはAdobeのFireFlyで生成「シンプル 複雑 2つの世界 人 デジタル」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?