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〜明治に憧れ、食に挑むひと〜

調理師学校時代

 調理師学校を経て大型ホテルの厨房から、食に関わる仕事を求めて西郷さんはNTSに来ました。東京渋谷区生まれの彼女は、調理師学校では卒業作品展で学校長賞を獲得するほどの腕前で横浜のホテルに就職。ところが通勤電車が辛くて3年目にして退職、NTSでは食のサイエンス書籍やセミナーも多く、持って生まれた好奇心が更に膨らんだそうです。

――どんな少女時代を過ごしましたか

 絵本が好きで、星新一のショートSFもたくさん読みました。学校は苦手でしたが、文芸部での活動では小冊子を編集したり、印刷するときには大好きな活字の<教科書体>にこだわりました。学校ではイラストを描いたり、物語の創作を夢想しながら過ごしました。学校生活では友達にも恵まれていたと思います。

――進路選択では調理師学校へ進まれたのですね

調理師学校時代に創った料理
卒業制作は校長賞獲得

 食に関心が深まり、素材や調理を習ううちに栄養学まで興味が広がって、2年間で調理を習い、引き続き、更に2年で栄養士の勉強もしました。就職はホテルキッチンを希望して勤め始めたのですが、たった1年間で厨房から仕入れ購買の業務に異動しました。調理は好きでしたが、通勤の大変さと購買の仕事に疲弊してしまい、転職することになりました。

――NTSへの志望動機は何でしたか

 面接してくださった方のお話と書籍目録にたくさんの食に関する本があって、普通の出版社とは違う印象を持ちました。会社を訪問したとき、科学技術館そのものが会社と勘違いしてとてもびっくり。「現代おさかな事典」の内容に圧倒され、今までの食の知識や経験を活かしながら、仕事ができそうだと思いました。NTSの出版物が、とても狭い領域に尖っていたり、幕の内弁当のように何でもすべてが網羅されている大型本だったりと、まるで私の考えている料理にも似ていて楽しくなりました。

――会社ではどのような分野に取り組みたいですか
 
 食はとても奥が深いことを学校で習い、そしてホテルで実感しました。栄養成分としての食事だけでなく、イベントや場面では幸福感や人生の記憶に残る料理もありました。その実、ホテルでも食材廃棄の多さにびっくりしましたし、地球環境を考えるとなんとかしなくてはいけないという問題意識も強く持っています。世界では文化や宗教によって様々な食のバリエーションもあり、日本ではまだまだ知られていないものも多い気がします。きちんと伝える仕事ができたらやりがいがありそうです。

――プライベートの話題を何か

 中学3年のときに日本画家の菱田春草を知りました。その影響で明治時代の文化や芸術にとても関心があります。もっと知りたいと探し出して、愛知県犬山市の明治村博物館に行き着きました。最初は家族旅行で訪ねましたが、今は一人でぶらりと半年ごとに訪ねています。就職にホテルを選んだのも旧帝国ホテルを初めてみて、憧れがあったからです。
 京都に建てられ移転した、聖ザビエル天主堂のステンドグラスの美しさには息が詰まるほどです。人を連れて行くときには必ず訪ねる施設です。

 若い人の就職は職業に期待しながら、その実態は就社になってしまい、想定外の職務を命じられ、意欲が削がれることも多いようです。西郷さんは食の世界に憧れ、その裏にある大きな課題解決にも挑戦しようとしています。   
 入社後にはすぐさま展示会レポートを数点仕上げています。NTSのジャンルで食のテーマは多く深く、まだ未開の分野もあるので西郷さんの企画取り組みに期待が持てますね。

<インタビュー:2024/09/10>