漢方私見1
葛根湯
効能・効果
体力中等度以上のものの次の諸症:感冒の初期(汗をかいていないもの)、鼻かぜ、鼻炎、頭痛、肩こり、筋肉痛、手や肩の痛み
日々新型コロナウイルスに思いを寄せておられる方も多いのではないでしょうか。
そもそもパンデミック(世界的大流行)は10年ほどの間隔で起こると言われています。日本漢方の基本である「傷寒論」という本の序文にも、「一族のうち約半分が病で亡くなった。」「このために古くから伝わる処方をまとめて記した」という記述があります。もしかしたらパンデミックだったのかもしれません。(ちなみにこの時は有名な「三国志」の時期であり、戦乱や凶作の為に8割人口が減ったという研究もあります)。
では葛根湯の話に参ります。落語「葛根湯医者」にもあるように、多くの症状に使われているお薬です。構成生薬は鎮痙・解熱のカッコン、利尿や腰痛のタイソウ、鎮咳・発汗等にマオウ、止痛・消炎のカンゾウ、発汗・解熱鎮痛のケイヒ、鎮痙・鎮痛のシャクヤク、健胃の為のショウキョウの7種です。風邪の初期症状のみならず、様々な炎症性疾患(結膜炎、角膜炎、扁桃腺炎、乳腺炎等)、神経痛、じんましんにも使われています。
さて、新型コロナウイルスには現在薬はありません。そしてもちろん今までの風邪のウイルスにも薬はありません。風邪をひいたらしっかり栄養・休養をとり、自身の免疫力でウイルスに対抗していくしかありません。
ところが葛根湯の副作用には「不眠」という項目があります。これはマオウに含まれる成分のためと思われます。その為、ここに関しては「眠たくなる」副作用がある、病院や市販の風邪薬の方が優れた処方であるといえるでしょう。
「風邪をひいても働かなければならない」時代は終わろうとしています。己れが治る為だけではなく、周りに拡げない為の処置が必要な時代がやってくるのです。葛根湯はいつか、風邪薬の第一選択薬の座から降りていくのではないでしょうか。
上海リーズ
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