パーフェクトブルー

夜更けにパーフェクトブルーのオンラインチケットを購入した.今敏の作品は国語の授業でパプリカを観て以来だろうか.
この授業を取り仕切った先生は若くして博士を取った新進気鋭な偉い哲学者で私の最も好いていた教師だった.
随分と変わった方で授業は大変楽しく,期末試験の自由作文で満点を頂いたのは良い思い出だ.

さて私に意識が確立する前に今敏は亡くなってしまい夢みる機械の制作の引き継ぎも虚しく終ぞ映画館で作品を観ることは叶わないと思っていたところの吉報であり一目散に観ようと思ったのだがいかんせん時間が合わずに一週間ほど機を伺った末にやっとチケットを購入できたわけだ.
いやはや楽しみで仕方がなく平沢進の曲でも聴きながら待とうかと思うがそういえば平沢進は今敏を知る前から知っていたなと記憶を辿るも何も浮かばずけれどもニコニコに延々と齧り付く少年期を送っていたのだからどこかで触れたのだろう.
こういう事が多々あり学校にも行かずにパソコンばかりをみていたあの頃を肯定しているわけだがこれは今がなんとかなっているからであり浪人やらと躓いていれば過去を責めていたのだろうと思うと結果論の都合の良さと専ら運だけは良い私を好んでならないがそれは社会的な失敗を人生の失敗にいれているあたりは嫌いでどうにも難しいなと感じる.

そんなことを思っていると早々に当日となり映画館に至る.
客層としては中高年男性2割若年男性3割若年女性5割というところだろうか.
地雷系からパンク系まで様々な服装の女性客が目立ちにゃるらの台頭(NEEDY GIRL OVERDOSEの成功)以降のサブカルという感覚がしたのだが実態はわからない.
このような機に於いては以前なら色々と言うところだがウがライターとして一歩を踏み出したり
あにもにが誠実さで受け入れられている現状を以て私が色々と言っても仕方がないのであるから口を噤もうと思う(当初はこれに絡む初鹿野ことなに送られたマシュマロにまで触れる気でいたが最近は専ら上記のような具合でそういった気概もあらないわけだ).

さて肝心の映画であるがテンポが良く内容も納得しやすかった.
特にテンポについての寄与は全くシーンチェンジが最たるものでシーンの長さが何よりも上手で呼吸のタイミングや集中力の起伏をきれいに管理しているのだろうなと観ていて驚いた.
君の名は。以後のアニメ映画は興行収入の面で目立ちインターネットに於いても話題になるわけで私も色々と観ていたがここまで適当なシーンチェンジは無いと言えよう.
また最終的には納得させるエンドを用意しており内容を把握して帰る事ができるのは大層親切で(今なら15+では済まないような描写を除けば)広く受け入れられる可能性のある作品だなと思う.
一方で理解するのは難しくそもそも精神の異常を理解でき(てから十分な時間が経過し)たら刑法には責任能力なんて概念は存在し得ないのだろうから難しくて当然であり何らかの答えを出すことに意味を感じないわけ.
また理解から遠ざかる近因でもあるが現実描写を曖昧にするにつれオタクへの信頼(卯月コウが由比ヶ浜結衣が自動販売機にてドリンクを選ぶ際に温度で迷うシーンより拝借し説明描写の細かさの逆数に近い概念だろう)が高まるというのは観ていてかなりワクワクした.
先ず魚の死亡に際し涙するわけだがそこで撮影における後悔を口にするのを観て正直かなり残念に思えたがその後はどんどん説明描写を削り最後にガラス越しにマネージャーを映すという構成は納得と不理解の両立に大きく寄与していると気付き当初の落胆も自らの無知蒙昧さを引き立てる.
序盤のモブオタクの説明とかも微妙だなとか思いつつえーっ!今来たばっかり!!で口角が上がったり(すると同時に90年代には存在していたのかと感心したり)と総合点がなんだかんだ高かったように思い出す.
アニメーション的には幻覚の霧越未麻の恐怖を引き立てる軽やかな足取り特に街灯スキップが相当に好きでGIFのミームに成り得るポテンシャルがあるようにさえ思える.

それと幻覚の霧越未麻が最初(だったかな)に現れるシーンにて雨森小夜の配信で聞き馴染んだ台詞が飛び出してきて笑いそうになってしまった.好きな配信者の発言というのは脳裏にこびりついているものなのだろう.

映画を見終え(来場者特典が終わっており落胆しつつも)外に出ると空腹を覚えてスマートフォンの地図アプリに頼れば木場公園があるというのだからコンビニでサンドウィッチとおにぎりを頂き足を伸ばす.
公園では芝生に座りラップトップへ向かう女性,ボールを蹴り合う男子大学生,ハンドボールで遊ぶ子供ら,散歩をする老人,ジョギングをする中年,犬の散歩をする女性と相当に私の好みの様相で何とも出来すぎているななんて思いサンドウィッチの封を切れば人工的な公園にて工場で作られたサンドウィッチを自然を感じながら食べるというのはなんとも冒涜的だなと思うわけだ.
それでもそこで感じた秋風は頭上を飛び交う鳩たちは向こうのビルを隠すように立つ木は確かであるのだから気分も上々に昼食を摂り満足して帰宅する.

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