グランドナショナル解説&展望

イギリス・アイルランドの障害競走(ナショナルハント)に関する概要を、こちらの記事の前半部分で説明しています。
本記事の前提知識として必要となる部分もありますので、「何のこと?」と思った言葉があった場合はこちらをご参照頂きますと、恐らくは解決すると思います。

グランドナショナル
Randox Grand National Handicap Chase

2024/4/13 16:00(日本時間24:00)
格付け:Premier Handicap
開催地:イギリス・エイントリー競馬場
距離:チェイス・4マイル2ハロン74ヤード(約6907m)条件:7歳以上・ハンデキャップ
出走頭数:フルゲート34頭
総賞金:100万ポンド(約2億円)
障害数:30


レース概要・コース解説

競馬を少しでも知っている人であれば、「グランドナショナル」という単語を一度は聞いたことがあるのではないだろうか。
グランドナショナルとは、近代競馬の発祥地たるイギリスリヴァプールエイントリー競馬場において行われる障害レースのことだ。
レース中継・再放送の視聴率は極めて高く、普段は競馬を見ない人でもグランドナショナルは見る・賭けるというパターンが多々ある。日本で言う有馬記念や、サッカーのワールドカップのようなもので、イギリスの国民的行事と言っても過言ではない。
また、イギリス国内のみならず、全世界で配信・放送が行われ、非常に高い関心を集める。日本ではレースの生配信こそ無いが、後日グリーンチャンネルで放送がある──はずである。去年はやってたよ。
とまあ、こうしたことから、世界で最も人気のある競馬のレースなどと言われる。

第1回のグランドナショナルが行われたのは1836年。
当初は石垣を飛越していたというが、回数を重ねるごとに障害物やコース、出走頭数などレースの条件を様々に変化させながら、今日まで行われてきた。

また、このグランドナショナルを模したレースは世界の各地に存在している。
ブリテン島とアイルランド島の中だけでも、ウェールズのウェルシュグランドナショナルとスコットランドのスコティッシュグランドナショナル、アイルランドのアイリッシュグランドナショナルがある。
フランスのパリ大障害やチェコのヴェルカパルドゥピツカなどもグランドナショナルに範を取るレースであり、
こうしたレースの難易度はまちまちだが、オリジナルのグランドナショナルが世界トップクラスに難しいレースであることは間違いない。

さて、今年のイギリスにおけるグランドナショナルは今週末、4/13に行われる。
世界で最も人気のあるレースであると同時に、世界で最も過酷なレースとも言えるのがグランドナショナルだ。

レース距離は6907メートル、飛越する障害数は30
決着タイムは優に8分を超えるし、出走頭数34頭(昨年までは40頭)に対して、完走頭数が10頭に満たないということもザラにある。
1928年の記録では、完走馬は2頭だけであったという。
と、書くだけでも本レースが日本では考えられないほど過酷なものであるということはお分かり頂けると思う。

落馬や競走中止は必ずと言っていいほど発生し、予後不良も毎年のように起こる
人を選ぶコンテンツであることは間違いないので、筆者は「興味がある人だけどうぞ」というスタンスだ。
その点については、何卒ご留意頂ければと思う。

こんな過酷なレースであるので、出走馬も厳格な基準を以て選定される。
レース慣れしていない馬や能力の足りていない馬が出走した暁には、競走中止待ったなしだからだ。
まあ、レース慣れしてる重賞馬も平然と競走中止になってしまうわけだけど、とりあえず基準としては「7歳以上」「スティープルチェイスで10勝」「3マイル以上のスティープルチェイスで4着以上」というのがある。

そして、本レースはハンデキャップ競走となっている。出走頭数の多さ、競走中止のリスク、ハンデなどを踏まえると、当然ながら予想は極めて難解である。
もう予想するだけ無駄な気もしてくるわけだが、多分もう宝くじを買うみたいな感覚になっているのだろう。
この宝くじ、有馬記念の馬券よりも売れてるんだよね。

このハンデ戦という条件からして、グランドナショナルは「最強チェイサー決定戦」ではない
イギリスにおける最強チェイサー決定戦はあくまでもチェルトナムフェスティバルのゴールドカップだとされており、グランドナショナルは言わば祭りである。
日本のクラシックディスタンスホース最強決定戦はジャパンカップだが、祭りとなるのは有馬記念──それと似たような感じだと言うのが分かりやすいだろうか。
とはいえ、過酷極まるグランドナショナルの勝利が唯一無二の栄光・名誉であることは言うまでもない。

こんなレースに挑戦する偉大なる出走馬たちについては後述するとして、まずはコースについて見ていこう。
使われるのはエイントリー競馬場のナショナルコース。
年に数回しか使われない特殊なコースで、置かれている障害も他の競馬場とは全く異なるものとなっている。

かつては7200mで行われ、生垣も棘の生えた「ソーンフェンス」と呼ばれる物を使用していたのだが、近年では柔らかい素材に変更されたり、踏切台を取り付けたりして、人馬の安全に配慮するようになった。
現在の障害物はトウヒの枝葉を組み合わせたものを使っており、クッション性があるという。
出走頭数についても、今年からは昨年までの40頭から34頭に削減され、安全を確保されることが期待されている。頭数の問題か?
ちなみに、過去には66頭が出走したこともあったらしいよ。半分にまで減れば確かに安全かもしれねぇ。

グランドナショナルコース

エイントリー競馬場・ナショナルコースのコース図は上の通りである(公式サイト参照)。
今年はスタート地点から1号障害までの距離が60ヤード(約55m)狭められ、飛越時のスピードが下がることにより、安全性が高まったと言われている。ほんまか?

グランドナショナルでは、このナショナルコースを2周する。
障害物は16個設置されており、この内14個の障害は2回飛越することとなる(15号障害・16号障害は1周目でのみ飛越)。
最も低い物で4フィート6インチ(約137cm)、最も高い物になると5フィート2インチ(約157cm)にもなる。
なお、障害の高さや濠の長さは安全性を考慮して年々小さくなっており、難易度自体は昔に比べれば下がっているとされる。

種類としてはフェンス(固定障害)、空壕障害(オープンディッチ)、水濠障害(ウォータージャンプ)の3つ。
しかし、通常の障害コースとは異なる特殊な配置をされている障害物も多く、こうした特殊な障害物の多くには「異名」が名付けられている。
これらはグランドナショナルの名物とも呼べるもので、数多の名馬・名手たちがこれらの障害物に挑み、敗れ去ってきた歴史がある。

まずは6つ目(22番目)の障害物、スタート後最初のコーナーに用意されている「ビーチャーズブルック」が、レース序盤の難関であるとともに、コースの最難関ポイントでもある。
障害の名手であったマーティン・ビーチャー大佐が飛越をミスし、落馬したことから名付けられたこの障害は、飛越を開始する地面と着地する側の地面の高さが異なっている。
ジャンプする側の障害の高さは5フィート(約152cm)、着地する側の障害の高さは6フィート(約182cm)。
着地する側の方の地面が踏み切り地点よりも低くなっているため、バランスを取ることが非常に難しく、毎年落馬が頻発する場所である。
残念ながら、ここで命を落としてしまった馬の数も計り知れない。

7つ目(23番目)の「フォイネイヴォン」は、コーナーの途中に障害が設置されているため、難易度が高いとされている。
1967年、他の全ての馬が落馬する中、この障害までは最下位だったフォイネイヴォン(Foinavon)のみが飛越を成功させて優勝したことから、こう呼ばれるようになったとか。

キャナルターン」、8つ目(24番目)の障害物は飛越後すぐにコーナーを直角にカーブせねばならず、馬が密集しやすく危険度が高い。
名前はエイントリー競馬場近郊のリース・リヴァプール運河に由来するものである。

9つ目(25番目)は「ヴァレンタインズブルック」。
着地側に5フィート6インチ(約168cm)の水濠が用意されており、元々は「セカンドブルック」と呼ばれていたそうだが、1840年にヴァレンタイン(Valentine)という馬が飛越を拒否したことを機に呼び名が変化した。

そして、15番目の「ザ・チェア」。
コース内でも最大の高さを誇る障害物であり、障害の前には5フィート(約152cm)の空壕が掘られていて、着地側の方が高くなっている。
勝ち馬と後続の馬身差を測るために審判委員が座っていた椅子にちなんで名付けられ、そのオリジナルの椅子は今でもエイントリー競馬場内のレッドラムガーデン、表彰台がある場所に置かれているという。

なお、1周目の飛越で落馬事故が発生して障害物の付近に馬が取り残され、2周目までに撤去が間に合わない場合は障害物を横切ってスキップされることもある。

昨年は動物愛護団体のメンバーがレース当日にコースに侵入して複数人が拘束されるなどして、発走時間の遅延など様々な弊害があったが、今年はこうした活動を行うと表明している団体は存在していない。
これほどまでに過酷なレースであるので、全人馬無事に──とは言い難いところもあるが、無事にレースが終わることを祈りたい。

さて、ここからは過酷な戦いに挑む偉大なる今年の出走馬の一覧を見ていくとともに、有力馬をご紹介しよう。

出走予定馬

※4/11現在
※斤量はヤード・ポンドをキログラムに変換し、小数点第2位以下の値を四捨五入したもの
ノーブルイェーツ(Noble Yeats)/H.コブデン(74.8kg)
ナッサラーム(Nassalam)/C.クイン(73.0kg)
ココビーチ(Coko Beach)/J.ゲインフォード(73.0kg)
カポダンノ(Capodanno)/K.ドノヒュー(73.0kg)
アイアムマキシマズ(I Am Maximus)/P.タウンエンド(72.1kg)
ミネラインド(Minella Indo)/R.ブラックモア(72.1kg)
コーラックランブラー(Corach Rambler)/D.フォックス(72.1kg)
ジャニディル(Janidil)/J.マクガヴェイ(72.1kg)
スタットラー(Stattler)/P.マリンズ(71.7kg)
マーラーミッション(Mahler Mission)/B.ハーヴェイ(71.7kg)
デルタワーク(Delta Work)/J.ケネディ(71.2kg)
フォクシージャックス(Foxy Jacks)/G.ブルーダー(71.2kg)
ガルヴィン(Galvin)/S.ユーイング(70.3kg)
ファルークダーレーン(Farouk D'Arene)/D.メイラー(69.9kg)
エルドラドアレン(Eldorado Allen)/B.パウエル(69.4kg)
エイントザットアシェイム(Ain't That A Shame)/D.マックスウェル(68.9kg)
ヴァニリエ(Vanillier)/S.フラナガン(68.5kg)
ミスターインクレディブル(Mr.Incredible)/B.ヘイズ(68.0kg)
ランワイルドフレッド(Run Wild Fred)/T.ハミルトン(67.6kg)
レイトナイトパス(Latenightpass)/G.アンドリューズ(67.6kg)
ミネラクルーナー(Minella Crooner)/K.セクストン(67.6kg)
アダマントリーチョーズン(Adamantly Chosen)/S.オキーフ(67.1kg)
マックトッティ(Mac Tottie)/J.ボーウェン(67.1kg)
ケミカルエネルギー(Chemical Energy)/D.ギリガン(67.1kg)
リムリックレース(Limerick Lace)/M.ウェルシュ(66.7kg)
ミーティングオブザウォーターズ(Meetingofthewaters)/D.マリンズ(66.7kg)
ザゴッファー(The Goffer)/S.ボーウェン(66.7kg)
ロイメイジ(Roi Mage)/J.レヴェリー(66.7kg)
グレングリー(Grengouly)/M.オサリバン(66.2kg)
ガリアデリトー(Galia Des Liteaux)/H.スケルトン(66.2kg)
パンダボーイ(Panda Boy)/J.スレヴィン(66.2kg)
エクラドライアー(Eklat De Rire)/D.オキーフ(66.2kg)
シャンバール(Chambard)/L.ターナー(66.2kg)
キティズライト(Kitty's Light)/J.テューダー(66.2kg)

人気順・オッズ

※4/11現在
⑦コーラックランブラー      11-2(6.5)
⑤アイアムマキシマズ       7-1(8.0)
㉖ミーティングオブザウォーターズ 8-1(9.0)
⑰ヴァニリエ           9-1(10.0)
㉞キティズライト         12-1(13.0)
⑱ミスターインクレディブル    12-1(13.0)
㉛パンダボーイ          12-1(13.0)
⑩マーラーミッション       14-1(15.0)
㉕リムリックレース        16-1(17.0)
⑥ミネラインド          18-1(19.0)
⑪デルタワーク          20-1(21.0)
②ナッサラーム          20-1(21.0)
①ノーブルイェーツ        20-1(21.0)
㉚ガリアデリトー         25-1(26.0)
⑳レイトナイトパス        25-1(26.0)
④カポダンノ           28-1(29.0)
㉔ケミカルエネルギー       33-1(34.0)
③ココビーチ           33-1(34.0)
⑬ガルヴィン           33-1(34.0)
⑨スタットラー          33-1(34.0)
㉒アダマントリーチョーズン    40-1(41.0)
㉘ロイメイジ           40-1(41.0)
⑯エイントザットアシェイム    50-1(51.0)
⑫フォクシージャックス      50-1(51.0)
㉙グレングリー          50-1(51.0)
㉗ザゴッファー          50-1(51.0)
㉝シャンバール          66-1(67.0)
⑮エルドラドアレン        66-1(67.0)
⑭ファルークダーレーン      66-1(67.0)
⑧ジャニディル          66-1(67.0)
㉓マックトッティ         66-1(67.0)
㉑ミネラクルーナー        66-1(67.0)
⑲ランワイルドフレッド      66-1(67.0)
㉜エクラドライアー        100-1(101.0)

有力馬解説

今年も地元イギリスの馬よりも、アイルランドの馬の方が多く参戦することとなった。

余談となるが、1ヶ月前のチェルトナムフェスティバルではイギリスの名門ニッキー・ヘンダーソン厩舎の不調も相まって、アイルランド調教馬とイギリス調教馬の優勝の割合はおおよそ2:1という結果になり、BHA(英国競馬統括機構)はたまらずお気持ち表明。
生産国としては既にイギリスはアイルランドに完全敗北を喫しているが、調教国としても近年はアイルランドが優勢の傾向にあり、こうした開催からはイギリス競馬の凋落が見て取れてしまったりするのである。
障害競馬のみならず、平地競馬においてもイギリスはアイルランドに押されており、既に何度もアイルランドのエイダン・オブライエン調教師にイギリスリーディングトレーナーの座を奪取されている。
昨年はジョン&シェイディ・ゴスデン厩舎がリーディングステーブルとなり、何とか面目を保つことができたが、2位のA.オブライエン厩舎とは平地競馬シーズン最終週まで競っていた。
英愛両国の平地競馬シーズンも既に開幕しており、今年のリーディングトレーナー争いの行く末にも注目が集まることだろう。

話を戻して、グランドナショナルの有力馬を何頭かピックアップしていこう。
ご覧頂いた通り、多頭数の長距離障害競走のハンデ戦で有力馬が集うレースとあって、オッズは割れに割れている。

この中で1番人気に支持されているのはコーラックランブラー(Corach Rambler)だ。
コーラックランブラーはジェレミー(Jeremy)産駒の10歳セン馬であり、昨年のグランドナショナル勝ち馬
今年は連覇をかけての出走、言わばディフェンディングチャンピオンである。

今シーズンの中で注目すべきは前走、3月中旬のチェルトナムフェスティバルのGⅠ・チェルトナムゴールドカップチェイス(チェルトナム5300m)での走り。
結果は3着だったが、これにより定量のチェイス路線・最高峰レースでも善戦するだけの能力を有していることを示した。能力面の衰えは全くないと見るべきだろう。
昨年よりも斤量が13ポンド(約5.9kg)重いことが不安要素として挙げられるが、昨年の実績と近走の走りを見る限り、最有力馬と考えられるのも納得である。

アイルランドの名門ウィリー・マリンズ厩舎が送り込む2番人気のアイアムマキシマズ(I Am Maximus)は、オーソライズド(Authorized)産駒の8歳セン馬。
今シーズンはアイルランドで12/3に行われたGⅠ・ドリンモアノーヴィスチェイス(フェアリーハウス4000m)において初の重賞制覇を成し遂げ、続くGⅠ・サヴィルズチェイス(レパーズタウン4900m)は4着、2月初頭のGⅠ・アイリッシュゴールドカップチェイス(レパーズタウン4900m)を3着としている。
そして前走、GⅢ・ボヒージョチェイス(フェアリーハウス5100m)を優勝しての参戦となる。
左にヨレる癖があり、飛越技術の不安があるとされるが、W.マリンズ厩舎の主戦であるポール・タウンエンド騎手が複数いるマリンズ厩舎からの出走馬の中でもこの馬に騎乗するという点も踏まえ、期待値が高い1頭であると言えるだろう。

3番人気はミーティングオブザウォーターズ(Meetingofthewaters)
こちらもW.マリンズ厩舎の管理馬であり、コートケイブ(Court Cave)産駒の7歳セン馬。
重賞未勝利馬ではあるが、前走はチェルトナムフェスティバルのPrH・アルティマハンデキャップチェイス(チェルトナム5000m)で3着に好走している。
実績面では劣るものの、その分ハンデが2番目に軽い。

4番人気ヴァニリエ(Vanillier)はマータライン(Martaline)産駒の9歳セン馬で、昨年のグランドナショナルの2着馬である。
実績としては3シーズン前にチェルトナムフェスティバルのGⅠ・アルバートバートレットノーヴィスハードル(チェルトナム4800m)を優勝している他、前々シーズンのGⅡ・フロリダパールノーヴィスチェイス(パンチェスタウン4500m)でチェイスの重賞も制覇している。
今シーズンはしばらくブービー争いとなってしまっていたが、前走のボヒージョチェイス(GⅢ)でアイアムマキシマズの2着と久々に好走、復調気配がある。

と、この4頭が今のところ、オッズ10倍を切る人気を集めている。
この他、実績馬を何頭か紹介しておこう。ただ、実績があるということはハンデが重くなってしまうということでもあるが……。

トップハンデを背負うノーブルイェーツ(Noble Yeats)は、その名の通りイェーツ(Yeats)産駒で、セン馬の9歳。
一昨年のグランドナショナルの優勝馬で、昨年のグランドナショナルでは4着に敗れてしまったが、今シーズンも1月のGⅡ・クリーヴハードル(チェルトナム4800m)を優勝している。
まだまだ一線級の能力は残しているが、昨年覇者以上のハンデを背負わされるのは流石に厳しすぎるのではないかとも感じられる。

ナッサラーム(Nassalam)はライアン・ムーア騎手の父、ゲイリー・ムーア調教師が管理するドリームウェル(Dream Well)産駒の7歳セン馬。
昨シーズンはGⅢ・ウェルシュグランドナショナル(チェプストウ6100m)を制したが、今シーズンに入ってからは競走中止となったチェルトナムゴールドカップ(GⅠ)の一戦しか走っていない。
厳しいハンデを背負わされるが、ウェールズのグランドナショナルの覇者としてはここで巻き返したいところだろう。

ココビーチ(Coko Beach)同一レースでの管理馬最多出走世界記録保持者ゴードン・エリオット厩舎所属の9歳セン馬で、グランドナショナルは3年連続の出走。
一昨年のグランドナショナルでは8着に終わり、昨年は前半から果敢にハナを切ったものの後半バテて失速、競走中止となってしまった。
とはいえ、今シーズンは11月のGⅢ・トロイタウンハンデキャップチェイス(ナヴァン4800m)で初の重賞制覇を成し遂げ、続くGⅡ・ビーチャーハンデキャップチェイス(エイントリー5200m)は2着、前走のクロスカントリー戦でも勝利を収めている。
9歳となって一味違う競馬を見せている本馬が、2番目に重いハンデを背負い、どんな競馬を展開してくるか。個人的には注目したい馬である。芦毛で目立つしね。

W.マリンズ厩舎の8歳セン馬カポダンノ(Capodanno)は今シーズン、1月末のGⅡ・コッツウォルドチェイス(チェルトナム5100m)を優勝。
遡ればGⅠ・チャンピオンノーヴィスチェイス(パンチェスタウン4900m)を制した実績もある。
昨年のグランドナショナルは競走中止となってしまっており、今年もハンデは軽くないが、どんな走りを見せてくれるのか。
名前的には団野大成騎手を乗せてほしいところである(?)。サウジダービーに出てたブックンダンノ(Book'em Danno)と言い、ダンノの名を持つ馬が世界各地にいるのはどういう現象なの?

11歳セン馬のミネラインド(Minella Indo)は、2021年のチェルトナムゴールドカップ(GⅠ)の勝ち馬である。
今シーズンにもGⅢ・カヴァレッジチェイス(パンチェスタウン3700m)を制し、重賞通算8勝目を挙げている。
近走は着順を落としているが、グランドナショナルでは過去3年連続で11歳馬が優勝した歴史もある。
高齢馬であっても、チャンスは十分にあるのがグランドナショナル。ハンデは厳しいものの、もう一花咲かせたいのではないだろうか。

34頭の出走馬全てを紹介することは難しい(というか、そんなことやろうとしたらこの記事がレース本番までに上がらなくなる)ので、今回は人気馬とハンデ上位馬をピックアップしてご紹介した。
しかし、ハンデ戦である以上は出走馬全頭にチャンスがあることは間違いなく、ここで紹介しなかった馬が頭に来ることも十分に考えられる。

日本では残念ながら、中継映像を見る手段がない。
Racing TVを契約すれば見ることができるが、月に4桁の料金を払わなければならないため、よほどの海外競馬ファンでない限りは敷居は高い。

レース映像自体は後日YouTubeに挙げられるだろうし、グリーンチャンネルにおいても4/21に放送される「ALL IN LINE〜世界の競馬〜『世界の障害競走特集』」の中でご覧頂くことが可能である。

全世界の競馬ファンが熱視線を送るイギリス障害競走の祭典、グランドナショナル。
世界で最も人気のある障害競走に、よろしければご注目頂きたい。

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