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電波(周波数)オークションの行方

総務省で、いわゆる電波オークションの導入を検討する有識者会議が開催されいます。

携帯電話を初めとしてテレビ、ラジオなどで利用する電波は国民共有の財産として国が管理しています。

携帯電話が繋がりやすいというのは受信する端末の高度化や基地局など機器の機能向上ももちろん影響はしていますが、どの帯域の電波(帯域によって効率が異なり通信品質に影響します)を使っているかが大きな要因になるとされています。

いかに良い帯域の電波を獲得するかで通信品質を担保出来るか、品質を向上出来るかにダイレクトに関わってきます。

日本では、総務省が電波帯域を整備して、比較審査方式でどの通信会社に電波提供するか決めています。

透明性とまでは言えない審査(だいぶオープンになりましたが)が行われ、ドコモを初めとした通信会社やテレビ局は、総務省から免許を与えられて一旦、無料で使うことが出来ます。通信事業の収益の一部を国に収めるお金の流れです。

(令和2年度の電波利用料負担額)
▼通信会社
ドコモ:183億円
KDDI:131億円(+UQ80億円)
ソフトバンク:156億円
楽天モバイル:12億円

▼地上波放送事業者
NHK:25億円
日テレ:6.7億円
TBS:6.2億円
フジテレビ:6.3億円
テレ朝:6.5億円
テレビ東京:6.2億円

通信キャリア全社が支払う電波使用料金は合計で6~700億円程度、3社が兆単位の売上があることを考慮すると非常に安い。


世界を見てみるとOECD加盟国38ヵ国の中で日本以外は全ての国で電波オークションを導入しています。



一部帯域だけの導入も含めると先進国のほとんどが、ある程度お金を積んだところが落札するという、ある意味透明性の高い方式で帯域を通信会社に提供しています。
(各種制限が設けられるのが一般的なため、単純に最高額を提示したキャリアが全ての周波数を獲得するというわけではない)


過去にはドイツやフランスで入札価格が高騰しすぎて通信会社の収益構造を壊してしまい、結果、利用者の携帯料金に跳ね返ってくるといったことも起きています。


海外では、オークション対象の電波の帯域によって価格レンジは変動しますが、5年間や10年間の免許期間で数千億円~数兆円といったレベルのお金が国庫入ることになります。

日本で導入されている比較審査方式とは大きく性格が異なります。

今まで当然のことながら日本の通信キャリアはオークション方式導入に反対してきた歴史があるのですが、ここにきて、ドコモは導入に前向きになっていて、楽天の三木谷社長は「愚策」だと声明を出されています。


ドコモと楽天では懐事情が大きく異なることもありますが、ドコモは過去数年の比較審査方式で、総務省が審査の基準に組み込んできた条件に「MVNO促進」や「SIMロック解除」「eSIM導入」といった、周波数の有効利用とは直接の関係がなさそうな項目を出して事業戦略を阻害してくることに納得していないことなどが背景にあるのとオークションしてでも勝ち取るべき電波があるのだと想定されます。

今年の夏にはある程度の方向性が示され、数年以内についに実現するかも知れません。

5Gから6Gへの流れの中で通信キャリアにとってより良い電波を確保することは全ての事業の根幹に関わってくることです。


日本の官僚が考えていることなので、オークションが高騰しすぎて我々の利用料が上がることは考えにくいのですが、その分ドコモを初めとしたMNO4社の収益性悪化や通信会社ほど利益率が高くないテレビ局などの放送事業者もこの流れに中長期的には巻き込まれる可能性があるのではないかと想像します。

もし導入されたら我々の生活にどんな影響があるのか。
そして今以上に国庫に入るであろう電波利用料が有益に使われることを願います。

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