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バルコニーなど

バルコニーはイタリア語、ベランダはヒンディー語、テラスはフランス語。庇の有無、設置フロアの違いなどはあるが、いずれも住居の外出し空間、いわゆる中間領域を指す。

ヨーロッパを旅した時の思い出は、こうした中間領域の豊かさだ。ワインにせよコーヒーにせよ、外での飲食の心地よさが鮮明に記憶に残っている。からっとした日照や空気は、料理と相性が良い。会話がはずみ、安ワインでも美味しく感じる。そもそも下地として、中間領域とそこで過ごす時間を豊かにしようとする意識が高いのだろう。

一方で、日本の住居を見渡せば、ベランダの用途はほとんどが物干しか無利用のどちらかで、たまに見かけるのは家族や知人らとのバーベキューの光景だ。

住宅メーカーやカーメーカー、ユーチューバーらが推奨する「外空間との豊かな付き合い方」は、キャンプとバーベキューばかりだ。他人の趣味をくさすつもりもないが、自分には外で肉を焼く嗜好がない。一種の産業構造をなしているのだろうが、狭い選択肢に無理やり誘導しているように思える。 

用途が少なくなってきたベランダに対して、最近は、不要論を唱える建築関係者も増えてきた。だが、それも極論だ。大切なのは空間であって、建物だけが住居ではない。

日本には元々、縁側という中間領域の文化があった。そこでお茶を飲み、子供と遊び、近所の人と語らう。もう一度、取り戻せないだろうか。あるいは、中間領域との向き合い方を、あらためてヨーロッパから学ぶべきではと。

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