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強化の仕事2021年夏(第2ウィンドー)


本日をもって2021年の第2ウィンドーが終了した。水戸ホーリーホックの強化担当をして今年で6回目の夏のウィンドーを経験したが、今年の夏はこれまでにないほど活発な動きになった。
完全移籍で
住吉ジェラニレショーンが広島に
柳澤 亘がG大阪に
平野佑一が浦和レッズに
買い取られていった。
その他にも
温井駿斗が藤枝MYFCに
育成型期限付移籍で、
深堀隼平がFC岐阜に
田辺陽太がいわきFCに
平田海斗がラインメール青森に
ブラウンノア賢信が沼津に
活躍の場を求めて移籍していった。
移籍元(水戸ホーリーホック)からの移籍というのは意図する場合もあれば、意図しないものもある。
この時期の上位カテゴリーの強化担当者からの着信というのは時として恐怖である。つまりは引き抜きの話。
逆に選手にとっては上位カテゴリーからのオファーというのはまたとない機会となる。
選手にとってはビジネスチャンスのひとつだ。
もうひとつ付け加えるなら、ビジネスという感覚だけではなく、競技者としての「闘争本能」が刺激されてしまうのだ。
プロアスリートはずっと競い合わされてきた。
例外なく、物心がつく前から、ずっと、ずっと競争にさらされ続け、そこで、上を目指すこと、強い相手に勝つことで、自分の存在を確かめてきた。そのような環境がちっちゃい子供の頃からずっとだったんだ。だから高いレベルからのオファーがきたときには、理屈ではなく、本能が反応してしまう。
移籍していった彼等はみんな、水戸ホーリーホックの事が好きだ。強い想いを本当に持ってくれていた。それは信じてあげて欲しい。
そしてクラブも彼等を引き留める。少しでも長く、少しでも一緒に働きたいと思っている人が大多数なんだ。
夏の移籍の話はだいたいは3日以内で決まる。
本当に突然くる。そして瞬時に判断しないとその機会はなくなってしまう。
最終的には選手の意思、クラブの意思を踏まえ、条件面と照らし合わせながら、結論を出すことになる。
もちろん時として、オファーを壊すことは不可能ではない。しかしそれによって失う「信用」、クレジットの損失は計り知れない。別れの阻止にいくつかの矛盾を駆使しするよりも、惜しみながらも送り出し、いつかの再会の可能性を信じる事を今は選択している。
試合の出場機会の少ない選手の育成型期限付移籍、期限付移籍、完全移籍なども「闘争本能」のメカニズムに似た作用が働く。
プロになるような選手の大半はこれまで1週間に1度、「試合」という「儀式」を定期的に行ってきた。今のプロ選手が育成年代の時にはだいたいの選手が、試合に出続けてきたから、1週間に1度の「儀式」を10年から20年近く続けてきた人がほとんどなんだ。だからその「儀式」をするために、出場機会を探し求めていく。(一部のGKを除く)
水戸ホーリーホックでは今年の夏はその動きが、非常に活発だった。
別れもあれば、出会いもある。前半部分で話していた移籍していった選手とは対照的に、この出場機会を探し求めて、来てくれた選手も大勢いる。
藤尾翔太
伊藤涼太郎
中里崇宏
今掛航貴
古宿理久
黒石貴哉
岡本將成
「育成型クラブ」
歴代の監督、コーチングスタッフ、メディカルスタッフ、主務、エキップメントマネージャー、フロントスタッフの努力の結晶で、
いつからかそのように呼ばれるようになっていった。ここ近年はその印象はさらに加速している。今季は57クラブの中でも、出場平均年齢はかなり若い方のようだ。
若くて試合に出ている選手は当然価値がある。
この競技者が集結する市場の中では、『若さ」というのは大きな「魅力」のひとつとなる。
もちろん若さだけがすべてではない。
水戸ホーリーホックには、Jリーグが誇る、偉大なベテランや、このクラブの風土を築き、体現し、浸透させてくれる素晴らしいベテランが複数人いる。
しかしながらこの街の(ファン、サポーター)
人達の視点からはここ近年の水戸ホーリーホックはどのように見えているのだろう…。
きっと何とも言えない、気持ちだろう。
移り変わりが激しい世の中になっているのはサッカーの世界だけではないと思うが、それにしても、ここ近年の水戸ホーリーホックの「速さ」は「異常」だとある人に言われた。
「好きになった選手がすぐにいなくなってしまう」
「あの選手を残してくれ」
「じっくり選手を応援したい」
なかなか実現ができなくて、申し訳なくも思う…。
いつしか、願わくば、数年以内にそんな状態を作りたい。

水戸ホーリーホックがここ近年選手に対して取り組んできたことを紹介する。
知見の習得、自己認識の向上のために
①集合研修。
②1on1面談。
③目標設定。
個別化プログラムとして
①遺伝子検査
②パーソナリティー診断
③血液アレルギー検査(任意)
④個別インソールの新調
集合研修は年間20回-30回程度。
目的は偏った世界にいるが故に起こる勘違いをなくすためと、視野を広げ、多様な業界の人達との交流を通して様々な価値観、世界観、使命感に触れるため。 
1on1面談ではキャリアコーチが1回1時間の面談を年間3回~4回行い、自分が何のためにサッカー(仕事)をして、何を目的に生きていくのかを考えてもらうきっかけを作っている。
それをもとに個人のミッション、ビジョン、バリューの言語化を行う。
「何のために」という大志を定めたあとは、目標設定で、日々何をするのかというアクションプランを考えてもらう。そんな取り組みをここ近年やり続けている。個別化プログラムでは、細部にわたる自分に合うものを早く見つけ、ホンマルのサッカーに直接影響を与えるパフォーマンスにいち早く繋げて欲しいために、そのような情報を選手に提供し続けている。

手塩にかけて、丹精を込めて、水戸ホーリーホックは選手を育てている。
でもオファーが来るときは突然で、本当にあっという間なんだ…。
離れていった選手を想うと、さまざまな感情が蘇る。どうしても愚痴っぽくなってしまう時もある。
話を戻してこのような取り組みを興味を持って聞いてくる同業者や、強化を司る者からも問合せがくるようになってきた。選手にとって良い環境を提供するクラブが増えていくことは、Jリーグにとって、日本サッカーにとって良いことであると思うので、可能な限り情報は開示していこうと思う。少し脱線しますが、今回のオリンピックのサッカー日本代表の敗戦は本当に悔しかった。ここから何をしていけば、この差を埋めて、頂点に立つことができるのか。自分のこのあと何年続くか分からないサッカー人生後編(引退後)の中で、全速力でその頂きを目指し、日本サッカーの発展の一助になれたらと思う。

話が少し、迂回してしまったが、今進めているチーム強化は、来てくれる選手、そこをサポートする仲介人(代理人)、他のクラブからは少しずつではあるが、良い評価、印象をもってもらえるようになってきた。この少しずつではあるが、積み上げている「信用」を着実に、さらに積み上げ、これまで水戸ホーリーホックに関わって頂いた、多くの方々が作ってきたものを大切に守っていきたい。
とはいえ、ファン、サポーター、スポンサー、地域の皆様が求めているのは週末の勝利だ。
選手のwin,
この街の人のwin,
クラブのwin,
多くの人の合意形成をはかれるように、
その「様々な形」を体現すべきところを
追い求めていきたい。

この地域の皆さんには、大きな視野、視点が備わっている。先祖代々。思想に対して言及することは、今後もあまりないと思うが、1度だけ伝えさせてもらえたらと。
近年「水戸らしさ」を追求する中で、水戸藩の教えを知る機会があった。解釈のしどころで、賛否両論あると思うが、自分が感銘を受けたのは、
①国家的視野
②先見性
③実践性。
高い視座を持ち、これからくる時代を見据え、実行し続ける。
そのようなクラブでありたいと思った。
この街の人が望むクラブの在り方とはなんだろう?それを日々考え続け、感じ続け、表現し続けて行きたいと思う。

この夏のウィンドーでは移籍のたびに、一人一人の選手に想いを馳せながら、じっくり Twitterを更新できなかったので、noteにて報告となりました。
移籍していった選手達は、この街の人達の想いを忘れずに、プレーし続けてほしい。
また新たに加わった選手達には、自分を存分に表現し、この街の人達の感情を多いに揺さぶって欲しいと思う!みんなの 「win 」を体現していこう!


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