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一次産業に学ぶ「間」の重要性

J2水戸ホーリーホックでGMをしている西村です。
タイトルからしたら「なぜに???」と思う方が多いかと思いますが、基本的にはサッカーのお話です!
この7月、8月の2ヶ月間、選手移籍に伴う、
夏の補強、チーム編成の裏側で一次産業の実情について、学ぶ機会が幾度かあった。
詳しくはまた少し先にお伝えしますが、その中で、一次産業における「生産者」と「消費者」の関係性、つまりはその「間」が非常に大事だと言うことを別の分野から改めて気付かされた。「間」を省く構造的な課題が一次産業には存在し、生産者が減っていっていると。そのような話が、多くの講師の方々の講義の中で垣間見えた。
圧巻だったのは「高橋 博之さん」という方の講義でした。下記のyoutubeは講義とは内容は違いますが、高橋さんの映像です。

   出典 ポケットマルシェ 高橋博之氏

詳しくは後日、自分なりに感じたことを改めて紹介したいと思います。
(オンデマンドで視聴したので、今は一方的にしか知りません)
単に「生産」と「消費」という切り口で終わらせるのではなく、この「間」をどのように捉え、距離を縮め、双方をより良い「人間関係」に戻していくか?。
非常に深い問いでした。
この「生産者」と「消費者」の話を聞いたときに様々な関係性が思い浮かびました。
「選手」と「ファン、サポーター」、
「フロント」と「選手」、
「監督」と「選手」、
「人事」と「新入社員」、
「経営者」と「従業員」、
「生徒」と「先生」、
「親」と「子」、
あげれば、キリがないほど世の中、社会には様々な関係において「間」が存在する。一次産業が難しくなっていったひとつの要因に、豊かになっていくために、大量生産、大量消費をより推し進めていく中で、「間」をコストとして捉え、どんどん、機械化、効率化していった背景があるそうです。大量生産をしていくためには、分業化が進む。
極度な分業化は「間」を省くことには効率的だが、そこで失われていくものがある。
それが「熱を帯びた関係性」だ。
サッカー界で選手の獲得を例にとってみる。「GM」「監督」「強化部長」「スカウト部長」「スカウト担当」。
クラブの規模によってもだが、色々な意味で分業化は進んでいる。これは大きくなっていく過程では必然で、ただその分たくさんの「間」が存在することになっていく。
水戸ホーリーホックは今はまだ小さいクラブなので、極度な分業化は進んでいないが、いずれその道を進む。水戸ホーリーホックに来て、6年の中で、多くの期限付移籍選手を他のクラブから獲得してきたが、その中で、他クラブのスカウト担当の「葛藤」と「苦悩」を何度か見てきた。大きくなればなるだけ「間」は広がっていく。
「採用」、「育成」、「起用」の一貫性の難易度はどうしてもあがっていってしまうのだ。
(※大きいクラブがすべてそうだというわけではありません。意図的に下のカテゴリーで選手を育成させることを考えているクラブもいくつも存在する) 
この「間」を埋めるにはシンプルだが「対話」が効果的だ。
高橋さんの言葉を借りると、極度に進んだ分業化、機械化、効率化した世界を「ツルツル」した世界と表現していた。またそれとは対極の世界を「ごにょ、ごにょ」した世界とも表現していた。自分も水戸に来てたくさんの選手を獲得してきたが、「獲ったら、終わり、あとはがんばれよ…」という「ツルツル」した世界にはしたくない。だから「最近どう?」「良いプレーだったね」「うまくいかないのはなぜだろう?」「これを続けていけば、きっとうまくいく」という言葉を選手にかけ、深く、強い関わりを持ち続ける。昨日もあるメンバー外選手に練習後に声をかけたが、自分がそれをしなくなったら、「チーム強化」の機械化だ。「ツルツルし過ぎた世界」は衰退する。一次産業のひとつの課題は「生産者」と「消費者」の「分断」だそうです。その「間」を「ごにょ、ごにょ」していくことで、「健全な人間関係」の中で、熱を発し、温かみ、人間味を「実感」する。それが、「生の実感」だと高橋さんは言っていた。つまらなくなるとき、意味を感じられないとき、やりがいが感じられないときは、たぶんこれ。「熱」を感じられず、「当事者」として「実感」を持てていないときだ。自分の持ち場、職務に集中することは良い。でも時にその「間」を振り返り、その先にいる人達が何を想っているかを確認しに行こう。高いレベルを追求し続けた現役時代では、何かを達成した時の満足感や充実感、高揚感はたしかに、格別だったが、それを感じさせてくれるのはその成果を喜んでくれる人達の存在、一緒に達成した組織、現場の仲間達の存在、近くでサポートをしてくれた人達の存在によって、「特別な実感」へと変わっていく。「関係性」をなしに「実感」はないのだと思う。
Make Value Projectもその一環で作った。
「分断」されがちな関係を「横断」する機会になる。
高橋さんの言葉を引用しまくるが、
「生産者」は「消費者」に対して「買ってくれてありがとう」、「消費者」は「生産者」に対して「作ってくれてありがとう」の「お互い様」の関係なんだと力説していた。 事実、「夢と感動と一体感の共有」を地域に対して提供する側の我々が、サービスを受ける皆様から多くの、元気、やる気、勇気を頂いております。
一方、自分がJリーグに加入したのは2001年。Jリーグが始まって9年目。Jリーグバブルが少し落ち着いていた時期ではあったが、その頃「プレイヤーズファースト」という言葉が、一人歩きをしていた。自分もその当事者として、懺悔するとその言葉の解釈を間違えていた時期もあり、様々な「間」の関係性に「お互い様」という腹落ちがなかったという恥ずかしい過去についても合わせて告白しておきます。
その当時の皆様、本当に「ごめんなさい!」                             

コロナ禍で「リモートマッチ」「入場者数制限」「練習見学の自粛」「イベントの縮小」「ファン、サポーターとの交流機会の減少」。
リアルの場において、このような「間」を感じ合う場が今は少なくっている。
また日常においても食事を含めた「関係性」を構築、確認する場が今は持ちづらい。  
今が踏ん張りどこですね。こんな時だからこそ、今一度、「何が今失われてて、本質的に何が大切で、これからどうしていくべきか」を考え直す良い機会だと思う。
先週の8月26日の選手向けの Make Value Projectでは4年目にして初めて、自分のMVPをショートバージョンで選手に伝えさせてもらいました。その中で話した、自分の選手時代のoff the pitchにおけるファン、サポーターとの「間」の出来事はまたいつか紹介できればと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。

※学びの場を通して、我々が毎日食べる食材を支える「生産者」の皆様への畏敬の念と、それを効率的に流通させる仕組みを機能させるべくJAの方々の存在には改めて感謝を致します。


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