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競争のフェーズへ。(選手編)

はじめに。
令和6年能登半島地震で被災された方々に
お見舞い申し上げます。
被災地の皆様の安全と1日も早く日常が戻る
ことを心よりお祈り致します。

水戸ホーリーホックで取締役GMをしている
西村です。
チーム編成は今季で9回目。
またVONDS市原時代から数えると
12回目の事となる。
チーム編成について、
もっと詳しく書けとか、理由を言えとかたまに言う人がいるが、なかなか書けないことも、
言えないこともあるのが現実。
そのあたりはご理解頂けるとありがたい。
もっと言うと、この場であえて、不特定多数の方に向けて書かずとも、直接当事者に言っている事もたくさんあるし、自分自身に矢印を向けている事ももちろんある。
自分の発信は皮肉を込めて(?)
ポエムと表現されたり、
抽象的と言われたり、色々言ってもらえるが、
その評価自体は実はそれなりに、
気にいっている。
なぜなら、抽象度をあげて書く事で、
自分の頭の中を整理したり、
目線を変えたり、論点をズラして具体で
言えない事をあえて、語れたりするからだ。
これまで書いた強化的な話しも、
もちろん、オブラートに包むんでいたり、
あえてギリギリに書いたりもしたが、
今日は近年で起こっているチーム編成における「選手」の市場の動向に対する現実を自分の
主観になるが語ろうと思う。

ここ数年GMとして(強化部長を兼務)チーム編成に携わっていて感じるのは、市場に選手が「溢れ出した」という感覚。
その傾向は今年になってさらに
加速したと実感している。
チーム編成は、シーズン終了と
同時にスタートするが、
今年はJ2(プレーオフがなかったチームは11/12に終了)と
J1,J3とでは終了には
3週間のタイムラグがあり、
市場の動向のピークは12/10-12/24の
2週間くらいであったという印象。
「溢れ出した」というのは、
「リリースに出てこない契約満了選手」の
時期を外してのエージェントからの
売り込みや、
そのカテゴリーにおいての
「それなりに実績がある選手のレンタル先が
決まらない問題。」
また以前の獲得時の競争原理において
「年俸が市場価格より高騰してしまった
一部選手達の停滞」などなど。
またJ2でも来季は、チームが少なくなり、
かつ降格枠が増えるというレギュレーションと、J3でも降格が昨年から始まったことが、
拍車をかけ、求められるトレンドは、
「走れる選手」「戦える選手」
「所属チームに忠誠を尽くす選手」
が重宝されるようになってきている。
攻撃のクオリティーや、アイデアを武器にする選手が、様々なデータにおいての攻撃ポイントもさることながら、得点、アシストの数値が
伴わないとなかなか「欲しい」と
ならない現実。
少し前の時代には前線のエリアを仕事場にする者には気性の荒さ、破天荒さなど、ある意味においてはゴール前のカオスなエリアの解決をするためには予測不可能性を備えた個性もひとつの価値になっていたのだが、ここ近年はゴール前と言えども、ロジックになってきたということだろうか。
この市場の評価軸というものは、確実に変化をしてきているということを激しく実感する。
とはいえ、俗に言う「天才」が自分は大好きだし、そのような選手も居場所をみつけ既存の評価軸を打ち破り、
その場所をこじ開けてほしいと切に願う。
また背中で見せるベテランも、
今後は厳しくなっていくと思われる。
今時の若い者は、良きものは丁寧に教わるものという価値観があり、
残念ながらその高価な源泉に喰らいつき、
自発的に、真似る、盗むということは、
なかなか起きづらいと考える。
こちらは、若者の価値観の変化が
要因にもあるのだが、
また別の機会にじっくり語ろうと思う。
溢れてきていると言うのは、端的に言うと、
「試合にスタメンで出る」ということと、
「途中出場で出る」ということの間の評価に
おいて、大きな溝が生まれ始めたということ。
例えばだが、J3クラブからは少し前には、
J2で途中出場でも、そこにいるということの
価値というのが確かにあった。
つまりカテゴリーにおけるステータスが存在したのだが、今は下部リーグでも、
「試合に出続ける」ことへの価値が改めて、
高まってきているように感じる。
さらに言えば、J3に行けば、
トレーナーの数は減るし、移動は大変になる。JFLに行けば、人工芝の練習場は当たり前。
地域リーグに行けば、連戦等もあり、
上位リーグにおいて発揮されるクオリティーは
環境の良さという前提条件付きであるという
ことを強化担当は、
頭の中で瞬時に計算するのである。
そのカテゴリーでなかなか出れないからと
いって上から下に降ることも簡単では
なくなってきたということ。
その昔は、代理人と、強化担当の間柄(良くも、悪くも)でチームが決まる選手がいたことも事実であったが、昨今においてはそのようなケースもほとんどなくなったのではないかと思う。
そもそも、チーム数が増えて、強化担当と、
エージェントの関係数が増えた分、逆に関係度は希薄になったと言えるのかもしれない。
唯一無二の第一候補の選手へのオファーを
除いて、候補選手が複数名いるときは、
エージェントからはもちろん、
所属チームの監督、テクニカルスタッフや、
メディカルスタッフ、場合によっては、
経験値のあるチームメイトからの
リファラル的な部分も加味してリストの
順番は作成されることすらあるのだ。
壁に耳あり、障子に目あり。
長く選手を続けてきた者からの「横の評価」を
若い選手はもっと気にした方がよい。
またこれも事実として、水戸ホーリーホックでは近年、移籍金を残して、
上位カテゴリーや同カテゴリー、海外や、
下部のカテゴリーにも移籍する選手が増えてきたが、その前提は、当たり前だが自チーム所属の選手である事だ。
その傾向はJ3においても、拡がりつつあるが、
これは、日本のJリーグという市場の中で、
移籍金を払って選手をとるということが
少しずつ増えたきた証であると思う。
このあたりはなかなか全てを定量的に
語られないが、
先ほどのレンタル先が見つからない問題の
ひとつの要因でもあることは間違いない。
質の高い一部の選手を除いて、
レンタル選手をとるのなら、
新人もしくは、完全移籍でとれるフリーの
選手を狙いにいくという
強化担当が増えてきている。
チーム編成において、レンタル比率を高める
タイミングというのは自分なりに考えがあり、
ここでは明かさないが、いくつかの要素の
バランスを見極めてのことになる。
世の中、一般は人手不足かもしれないが、
優秀な人材の売り買いが行われるJリーグに
おいては買い手市場になっているのが、
ここ近年のJリーグという市場の動向である。
各エージェント会社も、所属選手の行き先を
見つけるために買い叩かれるということも、
少なくないし、所属先をみつけるために、
苦労しているのが現実だ。
選手はチームが見つからない、年俸が上がらないと嘆いてエージェント会社を変えたところで、根本的な問題に目を向けないと、
本質的な解決に繋がらない。
ここで選手側において重要なのが、自己評価(選手)と他者評価(クラブ、エージェント)の乖離についてだ。
選手としては精度の高いメタ認知を備えることが、最重要事項なってくる。
「競争のフェーズ」はエージェント業界にも
当然拡がり、エージェント会社も数が増え、
顧客であるメタ認知のズレた選手は、
はっきりとした物言いをしてもらえず、
自己認知、ならびに自己評価が、
修正できないケースもあるのではないかと
想像する。
(もしくは代理人が抱える選手の比率の問題で)
これは、何も選手だけでなく、スタッフにも
言えることだが、昨今のハラスメントに
敏感問題も相まって、厳しい物言い、
厳しい指摘がしづらくなっていることも、
ズレた人間を作る要因となっている。
ここは、逆を返すとむしろ管理側に求められる必要な能力とも言い換えられる。(反省)

あえて、逆側のあまり主張をしない
「バランサー型」の選手達にも一言。
最近の人はSNS社会になったことも要因かも
しれないが、極度に人の目を気にする。
意外に世の中は広く、そのコミュニティーでの
関係性は、一時的であり、限定的とも言える。
あとから考えると、人間関係や評価など
気にしなきゃよかったということは、
よくあること。
一歩を踏み出せない人は、勇気を出して、
自分の考えを発信して、周りを巻き込んで、
リーダーシップを発揮することをお勧めする。
人生は結局1回で、今季もたったの1度きりだ。
今、目の前にある人間関係がこれから一生続く事なんて、あまりないし、
事実、水戸ホーリーホックの選手の
平均在籍期間は2.2年だ。
とはいえ、同僚にも、上司にも、親友にも
疑問符をつけられるようなことがある人は、
自分の考えを疑うこともお勧めしておく。
メタ認知とセットで、自分を貫くことを
できることが、最善と考える。
さらに、自分の思考のフェーズにも、
認識が必要で、昨季の低迷時には
「7つの習慣」
をヒントにチームの立て直しをはかったが、
まさしく、
「パラダイムシフト」と「インサイドアウト」を前提としつつ、自分の段階が、
「私的成功段階」か、「公的成功段階」
かによっても、振る舞いの良し悪しは
変わってくる。

最後に選手の年俸においてだが、
例えば年俸1200万円以上の選手がいたと
して、資金力があるチームから
リストアップされれば、
その獲得競争において、
提示額は当然上がっていく。
そのようにして瞬間的に市場における相場は
崩れるが、その域の中で起こったことという
事を選手自身も自覚しておかないと、
次の取引において数百万円の評価の誤差は
簡単に生まれてしまう。
そこに先程の「試合に出続けている」
という事への価値の変遷が作用し、
1年半、2年の間であっという間に、
市場価値が変わってしまい、
相場とズレた年俸がその後のチーム選びの
ネックになってしまうのだ。

「競争のフェーズ」というのは何も、
「選手」にだけ起きていることではない。
Jリーグでは今季(2024シーズン)から
J1、J2、J3において、20チームずつになり
昇格、降格が数多く行われる。
分配金も含めて、
より上位カテゴリーに行く事が重視される
ような設計になってきているし、
選手、クラブ、業界全体が厳しい「競争」の
中に置かれることになっていく。
今回は「選手目線」からの現状と課題、
ならびにその背景や、構造を書いたが、
どちらかのタイミングでまさしく、
自分に矢印を向けた
「クラブ目線」の現状と課題の話も
できればと思う。

「選手の皆様へ」
※チームが決まらなかった選手や、
 下部リーグにいった選手が全員そうである
 と言っているわけではありません。
 あくまでも大まかな流れとして起きている
 現実を自分の考察も含め、書いたものなので
 ご容赦ください。



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