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「監督」という職業

監督とは難しい職業である。

思ったような結果が出なければ、5試合で未来が変わることもある。5試合と言えば、今年のレギュレーションだと2週間だ。もちろん置かれている立場、期待されていること、その内容、プロセス、一概に結果だけではないのは言うまでもないが、それでも非常に厳しく、難しい職業であることは間違いない。
監督という職業を
「就任したときから、解任か、移籍かのどちらかに向かっている」という言葉で表現されることもある。
3年先すらなかなか見えないのが、監督を生業にしている人達の本音ではないだろうか。

その監督を人事する立場である自分が目指す On the pitchの中におけるサッカーの世界観としては、老若男女、素人も、玄人も、水戸ホーリーホックのファン、サポーターがスタジアムに来て、またはDAZN中継を見て「私の、僕の、我々のサッカーだ」と思ってもらうこと。そして共に喜ぶこと、共に悔しがること、共に悲しむこと、また共に感動すること。
これに尽きる。
そのためにはクラブは意思を持たないといけないし、サッカー面においては特色、特徴がわかり、想い入れを持っている人達に共感してもらうべき「人格」をプレーの中に染みこませていく必要がある。
なかなかの気の遠い作業だが、その分やりがいもある。
そのサッカーに人格を染みこませていくためには、「監督」の役割は絶対であり、言うまでもなく、最重要人物と言える。「俺たち、私たち」というある種、不特定多数である対象の想いを加味し、またサッカーのトレンドという非常に移ろいやすい要素のかけ算、足し算をしながら、難解な方程式を解いて答えにたどり着かないとならない。変数はさらにあって、それぞれ特徴が違い、背景が違い、自分とは違う指導者に教えられてきた30名近い選手達に、クラブのサッカーと自分の目指すサッカーを編集し、クラブ、自分の価値観を織り成し、評価基準を設定し短期間で伝えることが求められる。またその時の順位、調子、選手個々の体調などをかけ合わせ、また対戦相手というさらなる変数を想定しながら、日々戦い続けるのだ。

監督はまさしく、決断の連続だ。決断というのはしてみないとわからないもので、さらには結局、決断したことと、決断しなかったことは比べられないので、検証も中々難しい。だから結果でみることにはなるのだが、近くにいると決断へのプロセスは垣間見える。どんな要素をこのタイミングでは足したのか、引いたのか、はたまたかけたのか。結論としては何の要素を重視したのか。自分はなぜそれを重視したのか。周りの選手は、スタッフは、ファン、サポーターからはそれがどう見えるのか、どう感じるのか?様々なことを一瞬で考え、そして、常々頭には多くの判断要素がひしめき、様々なシナリオが浮かんでは消えていく。選ぶときの大事なポイントはやはりバランスなのではないだろうか。自分は「中庸」という言葉が好きだが、まさしく絶妙な中心点はどこかを監督はいつも探している。これがおそらく一番難しいところで、監督から見えている、現場の「形」つまりは選手30名、スタッフ15名の集団、塊はその時々によって形を変えていく。どんな形になっているかを一瞬で見極め、その中心点を探し、決断し、提示をしていく。それが多くの人の納得や、希望や、期待感、新鮮な驚きなどのいずれかであれば、見事に中心を捉え、刺さった提示は瞬く間に、集団を向かうべき方向に進行させていく。そもそもの形が、きれいな円であるなら、中心は見つけやすいが、様々な個性、バックグランド、その時々の感情というものが影響し形はいびつなことがほとんどだ。監督という仕事はなかなか自分が思った通りにはできないというのが、近くで見てみて思うことだ。「中庸」を無視した自分だけの考えを決断したときは大抵うまくいかない。

俯瞰してど真ん中を見極めその時の答えを見つけ決断し続けられるかどうか。
様々な視点から情報を収集し、このケースにはどこが「中心」で何を基準にするのかを見つけ、提示していく。


「中庸」を見つけるにおいて「視点の切り替え」は最重要事項かもしれない。
今までと同じやり方をしても、地域が、クラブが、選手が違えば、その中心の位置はそもそも変わってくる。1年目と2年目もまた違う。
変数の多い1年目が難しいことは言うまでもない。
だから時として、過去の経験、過去の体験が邪魔をする。
いつも自分を革新(維新)していかなけらばならない。

革新するためには混ざり合うことが、重要で同質化した関係、場所には新たなものは生まれづらい。
混ざり合うためには、踏み込むのか、歩み寄るのか、譲れるのか、受け容れるのか、立場によって行為は違うが、いずれかが必要だ。
何もこれは、大きな変化や、
イノベーションだけでなく微妙な方向修正もそこに含まれる。

人は皆認めてほしいし、わかってほしい。その前提があるからすごく難しい。

だから話し合うのだ。感じるのだ。
そして自分を様々な視点(アングル)から疑い抜くことと、
相手の考えや、伝えてくれている意味や、背景を一生懸命想像しながら
その時の答え、決断を出していく。

”この難しい仕事に挑戦している監督を尊敬する”

なかなか伝えるべきタイミングは難しいですが、
この時期には一度強調しておきたいと思う。
こんなにも難しい職業はなかなかないのではないだろうか?
我が水戸ホーリーホック監督、秋葉忠宏が
来季も担うこの重大かつ、偉大な役割を正確に伝えたく今回は書きました。
必ずや、来季も全身全霊でやってくれるだろう!
自分もその役割を全力で支えていきたいと思う。

いつも通りの1年を過ごすのではなく、
特別なシーズン(心の熱くなるシーズン)にしよう。
我々が目指す世界観。
「夢と感動と一体感の共有」
約1年、一緒に過ごしてみて確信している。
どんなことがあろうとも、一直線に
その場所を目指し秋葉忠宏は力強く引っ張っていっていくだろう。
でも1人の力ではこの世界観は実現しない。
水戸ホーリーホックに関わるすべての人がその一員になることで、その世界観に近づいていくのではないだろうか。

ファン、サポーター、スポンサー、株主の皆様、行政関係者、ボランティアをはじめ、運営面を支えてくださった皆様、水戸ホーリーホックに関わるすべての皆様。今シーズンもありがとうございました!
前代未聞の難しい、難しい今シーズンを無事終えることができました。
心からありがとうございました。
来季も引き続きよろしくお願い致します。

水戸ホーリーホック
ゼネラルマネージャー
西村卓朗

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