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「競争のフェーズへ(クラブ編)」


水戸ホーリーホックで取締役GMをしている西村です。
前回の「競争のフェーズ(選手編)」
から内容を引き取ると、
「競争のフェーズ」はどの立場にも言える事で
我々「クラブ」も例外なく、この市場の中で、
強烈な「競争」にさらされ続けている。
生存戦略のために、
少し前の水戸ホーリーホックの
チーム強化においての
「イシュー」は何か?
その問いを突き詰めていくと、
「顧客は誰か?」
と言うことに行きつき、
ここ近年はそれを意識してきた。
強化サイドから見る顧客と、
事業サイドから見る顧客は当然違う。
正確に言うと時期によって変わってくる。
今回は強化サイドの事を指しているが、
勘の良い人なら、よりリアルにわかるはずだ。
察してもらえる人には説明不要だし
説明がないとわからない人には、
こちらの意図を明かしても誤解して解釈される可能性が高いので、
敢えてボカして書いておく。
また今回の内容は前回とは少し、趣向は変わり、
どちらかというと主観ベースになります。

この数年、私は水戸ホーリーホックの独自性を作るため、
徹底して強化の立場においての
「顧客目線」を大切にしてきた。
それによって、多少、過剰サービスになって
しまったこともあり、今季からはこれまで
作ってきた前提を活かしつつ、
今までとは違うマネジメントに
乗り出そうと思っている。
これまでのやり方は、リクルーティングに
おいては、効果的だったが、時として
その先の「目的地」に向かっていくために
最重要な「現状認識」を歪ますことにも
繋がってしまったり、「目的地」の
環境を鑑みても、また我々の顧客の様子を
見ていても、その方法論をアジェストして
いくことが、必要と痛切に感じることが
あった。

その昔、職人の世界では、
「真似る」「目で盗む」という言葉が
あるくらい、徹底して、研究して、ある一定の水準に達し、その姿勢が認められた者だけが、言葉をかけてもらえる世界がたしかにあった。
「徒弟制度」はその際たるものだが、
スペシャリストが集まる、ここJリーグの
世界では、職人的な世界が広がっているかと
言うと、実はまったくそうではなく、
もうそのような様式、文化は、サッカー界にはないに等しい。
習い事から始められるサッカー界のシステムと質の高いサービス(Jリーグのアカデミークラブ)が行き届いてきたおかげで、
技術や、戦術、体調管理を含めた情報というのは人(コーチ、スタッフ)
から与えられるものになった。
また個人的に行ったとしても動画やSNSでの
表層的、かつ断片的なものの摂取を只々繰り返し、
我流の解釈になってしまう事が多いように感じる。
物事には、文脈、背景、深層構造があり、
それは自分が興味を持って、自らその情報(人の想い、歴史、文化、本質)をとことん取りにいき、一定期間を要しないとやはり真の
理解、会得はできないものである。
【〜おそらく、ここが、突き抜けられる人と、
そうでない人の大きな違いで、ひとつの事を体得するための、継続性や、執着心というのが、とんでもなく情報が増えたこの時代と、
与えられることが、当たり前になった社会の構造からは生まれにくくなっているのではないか?そして、それができている人は確実に成功していっているのも事実〜】
しかしながら、そんなことを嘆いていても、
物事は、「今」の文化レベルで進んでいく。
「今の人」に合わせていかないと
噛み合わず、成果は出ないのである。
選手間においても、このジェネレーションギャップは起こっており、
今の若者達の傾向を見ていても、前回も書いたが、背中で見せるベテランの価値自体をなかなか享受させられないことになっていくだろう。
なぜなら、コンテクスト(文脈)の共有が
受け手側の姿勢を期待する形ではしづらくなっているから。
それは我々にとっても死活問題で、その「熱」を伝える術がなければ、
我々が大切している背景が伝わらないことになる。
今後は送り手側には、血の通った関係を構築しつつ、
論理を踏まえ、熱のこもった
対話ができる人の需要が高まっていくことになるだろう。
彼等の視点の高さを確認して、目線を合わせていくことができるかどうか?
そして、目指す先をリアルに想像させ、必要性や魅力を相手側に感じさせ、
視点を合わすと同時に引き上げるようにして視野を広げ、
視座を高めていくこと。
単純な上位下達のコミュニケーションは
もうほとんどすでに成り立たないのだ。
しかしながら、このようなコミュニケーションは以前よりも
圧倒的にコスト(手間)がかかる。
前述したように送り手側には親密な関係構築とともに、
高度なコミュニケーション技術が必要となる。
あえて受け手側(若手)に必須となる要素にも触れておくと、
一言でいえば、熱を感じる
感度(意味を考察すること)をあげておこう。
物事が、うまく進んでいる時や、
しっかり向かうべき方向へ進行し、かつその歯車の中にいるときは良いが、その外にいる時には、なかなか強く要求はしてもらえない構造の中にいる
ことを知っておかなければ、ならない。
ハラスメントに敏感な昨今においては、
余計なコミュニケーションはリスクとなる。
例えばだが感度が低い者達を前に、パワハラに怯える静的な管理職が増えるのも、致し方ない。
育成年代においては、まさしくクレイジークレイマー、モンスターペアレンツの存在も、余計この構造に拍車をかけることになる。
先程も話したようにコストのかかるコミュニケーションについてだが、その効率化を冷徹に考える組織は、「人」そのものが、
代替可能なパーツとして、
扱われる危険性を孕んでいることも、
受け手側は、理解しておく必要があるだろう。
ということは。
「あまり最近、何も言われないな」
「何かおかしいな」
ってことを自分で顧みれないと、
その危険度は増していくということになる。
感度が低い受け手はあっという間に置いてけぼりになる。
「言われるうちが華」ということを
受け手側は肝に銘じておかなければならない。
と同時に、送り手側の我々にも高い意識を
植え付けるための関係性の構築と高度なコミュニケーションスキルが、求められることになるのだ。
このあたりが、今季のひとつポイントになりそうだ。どのようにして、血の通ったコミュニケーションをとり、「共有レベル」をあげていけるか?
一緒にいる家族ですら、「共有レベル」が低いなんてことは、結構ざらで、それはクラブ、組織、部署とて同じ課題が横たわる。
ここまで書いたが、幸い今の水戸ホーリーホックに属する者達の状況はそこまで、悲観する状態ではないと思っている。
とは言え、送り手も、受け手も、まだまだ改善が必要。
編成が済んだ今、ここからは双方の
「共有レベル」をあげる仕組みを作って
いかなくてはと思っている。

1/25から沖縄キャンプが始まった!
寝食を共にできるこの時間を大切に使っていきたいと思う。

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